週末最大のイベントであったG20サミットについては、注目の米中首脳会談にて5月に決裂していた通商協議を再開することで合意しました。米国は中国製品3,000億ドル相当に対する追加関税の発動を見送ったほか、これはポジティブサプライズでしたが、禁止としていた華為技術(ファーウェイ)との取引を容認することでも合意しました。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長も、華為技術(ファーウェイ)はの輸出容認は恩赦ではないと発言していることもあり、株価の反発が期待されます。
ただ、米中貿易摩擦がこれで解決したわけではなく、あくまで休戦状態になっただけであり、まだまだ5Gを巡る覇権争いは続くものと思われますが、まずは目の前の問題が先送りされたこともあり、本日に関しては、リスクオンのマーケットになりそうです。また、習近平国家主席がどのような対応策を示したのか不明のままであり、米国側の条件を鑑みると、中国側がかなり譲歩したものと思われますが、対応策の内容が明るみに出たところで、再度この米中首脳会談の内容が精査されそうです。
本当のサプライズとして、トランプ大統領のツイッターでの呼びかけにより板門店での米朝首脳会談が実現しており、国際情勢に対する警戒が相当程度改善すると考えられます。会見内容としては、非核化交渉の再開で合意したほか、トランプ大統領は金正恩委員長をホワイトハウスに招待し、金正恩氏もトランプ大統領を平壌に招待すると伝えられています。どちらかといえば、大統領選を見据えたショー的な会談ではありましたが、リスクオン地合いを増幅させるには十分な内容だったと考えられます。
今後の見通し
英保守党首選の支持率で優位に立っているジョンソン前外相ですが、調査会社サーベイションによると、6/20時点ではジョンソン氏が36%、ハント氏が28%だった支持率が、6月22日の調査では、ハント氏が32%、ジョンソン氏が29%になっており、ハント氏が逆転しています。保守党支持者の中でも、ジョンソン氏のリードは縮み、一時最大で27ポイントのリードから11ポイントに狭まっており、ジョンソン氏のスキャンダルの影響は大きなものになっています。ハードブレグジット一辺倒の動きから、「合意なき離脱」を回避する動きに徐々に移行しつつあり、議会の夏季休会や保守党大会などを考慮すると時間はさほど残っていないことを考えると、スキャンダル案件を除いても初志貫徹であるハント氏に鞍替えする動きが台頭してきているのかもしれません。
今回の米中首脳会談での休戦発表により、好感された通貨として豪ドルが挙げられます。もともと利下げムードが強まっており、早期の追加利下げ観測が出ていたなかで、米中貿易戦争の激化が豪ドル安を牽引していただけに、今回のG20サミットの内容は豪ドル買いに繋がっています。G20サミット以外にも、ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が減産延長に合意したこともあり、豪ドルは一旦反発基調が強くなりそうです。ただ、明日2日にはロウ・RBA総裁の講演が予定されていることもあり、豪ドル反発は長続きはしない公算です。
ドル円108.50円で利食い、その後転売り
107.80円でのドル円ロング、当初の目的通り108.50円にて利食い、手仕舞です。週末のG20サミットへのご祝儀によりまずはドル円が反発しましたが、米中貿易戦争はあくまで休戦であり、合意にはまだまだ道のりは厳しいものがあります。109.00円台は近くて遠い水準でもあることから、108.50円の利食い水準での途転売り、損切りは109.00円上抜け、利食いについては、107.10円に設定したいと思います。
海外時間からの流れ
米・トルコ首脳会談については、期待されていた「S400導入」の回避は実現しませんでしたが、トルコへの制裁は検討するものの米・トルコ協議決裂という最悪の事態は回避された模様です。会談では、エルドアン大統領がトランプ大統領に、「S400導入」については、オバマ政権時代に米国がトルコにパトリオットミサイルを導入させなかったことが原因であると指摘し、トランプ大統領もこの意見に同調する動きがみられました。まだまだ制裁への懸念はあるものの、市場懸念していた状況は回避できたと思われます。
今日の予定
本日は、独・6月失業率、英・6月製造業PMI、ユーロ圏・5月失業率、米・6月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言としてクラリダ・FRB副議長、デギンドス・ECB副総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。