前日については、週末のG20サミットでの米中首脳会談にて通商協議を再開することで合意し、中国への第4弾の追加関税の発動見送り、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置の部分緩和、中国による米国の農産品輸入の拡大などが決定されたことが好感され、リスクオンの動きが強まりました。ただ、アジア時間では総じて堅調に推移した豪ドルですが、本日予定されているRBA政策決定会合にて利下げが予定されていること、さらには、ロウ・RBA総裁の発言も控えていることもあり、海外時間では上値の重い地合いとなりました。
週末のリスクオン地合いがいきなり崩れる展開は想定しづらいですが、地政学的リスクという観点に絞ると、幾つか懸念材料があります。まず、中国返還22年を迎えた香港では、デモ隊が立法会の建物に突入するなど、一部過激化していることが嫌気されています。また、イランが濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で決められた上限を上回ったと発表し、米国のイランの対立がより激しくなることが予想されます。日本政府は半導体材料の韓国への輸出規制発動を決定(日本の輸出額に占める対韓国の割合は約7%)するなど、ポイントポイントでは、この辺りの地政学的リスクが意識されるかもしれません。
豪ドルを筆頭とした資源国通貨以外にも、上値の重さが確認できるのがユーロです。ECB理事会のメンバーでタカ派として有名なクノット・オランダ中銀総裁は、ユーロ圏の経済が大幅に悪化するようであれば、ECBは断固として行動すると発言しました。また、レーン・ECBチーフ・エコノミストも、ECBは必要に応じて追加緩和を実施できる余地を抱えているほか、物価目標の達成に向けて確実な確約を示すことが重要であるとの見解を示しました。また、本日の東京時間に「米国がEU製品に追加関税を提案した」との一部報道が流れていることもあり、続報次第ではもう一段安へ向かう可能性がありそうです。
今後の見通し
昨日発表された米・6月ISM製造業景況指数については、市場予想51.0に対して51.7になったものの、5月の52.1を下回り、これで三か月連続の低下になります。特に、新規受注指数の落ち込みが最も際立ち、前月の52.7から50.0に悪化しており、2015年12月以来の水準を記録しました。米中首脳会談を乗り越えたことにより、FRBの利下げが7月ではなく年度後半になるのではとの見方もありますが、こと経済指標を見る限りは今月末の0.25%の利下げの可能性が非常に高いと考えられます。そういったこともあり、今週末に予定されている米雇用統計の内容は大事になりそうです。
本日の最重要指標であるRBAの政策金利ですが、Bloombergによると32名のエコノミスト中22名が25bpの利下げを予想しているため、本日の利下げについてはある程度織り込まれているものと思われます。RBAについては、年内に0.75%まで利下げが進むのではないかとの懸念があり、そういった意味でもロウ・RBA総裁の発言が重要になりそうです。米中首脳会談を無事通過したこともあり、一部では1.00%にて利下げは踏みとどまるのではないかとの期待感もあることから、もう一段利下げを示唆するような発言があれば、豪ドルは再び急落リスクがあると考えられます。
リスクオン地合いでも、ドル円は109円到達は難しそうだ
リスクオンの地合いに変わりはないですが、ファンダメンタルズ的には幾つかの地政学的リスクが意識されており、テクニカル的には109.00円ラインがレジスタンスラインとして意識されていることで、ドル円は上値を攻めきれずにいます。週末のG20サミットへのご祝儀相場も一段落したこともあり、下値も限定的になりそうですが、上値の重さを確認すれば、その後はじり安展開になるのではないでしょうか。108.50円でのドル円ショート、損切りは109.00円上抜け、利食いについては、107.10円に設定したいと思います。
海外時間からの流れ
週末に行われた米・トルコ首脳会談を無難に通過したことにより、トルコリラの買い戻し基調が強まっています。エルドアン・トルコ大統領が「ロシア製地対空ミサイル(S400)が10日以内に導入される」「トランプ大統領による、S400導入に対する制裁はない」との発言もあり、トルコリラは19.20円台まで上値を拡大しています。イスタンブール株式市場の主要指数は、3%を超える上げ幅になっており、トランプ大統領から制裁関連の発言が出てこない限りは、トルコリラ円は20円のラインが現実味を帯びてきています。
今日の予定
本日は、豪中銀(RBA)政策金利、独・5月小売売上高、英・6月建設業PMI、ユーロ圏・5月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言としてロウ・豪準備銀行(RBA)総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。