中小企業オーナーが事業承継をしようと考えたとき、悩むことの代表的な事柄としては「後継者選び」が挙げられます。では具体的に後継者選びのどのような点で悩んでいるのでしょうか。公表されている調査結果をひもときながら、傾向や解決策を探ります。

「後継者難による廃業」は28.5% その理由とは?

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(写真=PIXTA)

現役の中小企業オーナーが抱える後継者問題を、日本政策金融公庫が2016年に公表したインターネット調査の結果から探っていきます。

公表内容によれば、事業承継をせずに自分の代での廃業を予定している中小企業は全体(回答者数4,104名)の50%にも上っています。廃業理由としては「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」が38.2%と最も多く、「後継者難による廃業」が28.5%、「事業に将来性がない」が27.9%と続いています。

この結果から、元々事業承継をする意思が無い場合を除けば、「後継者難による廃業」が事業承継における悩みとして最も大きいことが分かります。ではなぜ後継者難の状態となる中小企業が多いのでしょうか。

その理由についても日本政策金融公庫による調査では調べられており、「子どもに継ぐ意思がない」というケースが最も多く、「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」などと答えた中小企業オーナーも一定数いるという結果となっています。

確かに「親族内承継」にはメリットがあるが……

事業承継には主に「親族内承継」「親族外承継」「M&A」という3つの方法があります。前項で、後継者難の理由で「子どもに継ぐ意思がない」と答えた人が最も多いことを説明しましたが、このケースはあくまで「親族内承継」による事業承継がうまくいかない、ということです。

確かに親族内承継にはさまざまなメリットがあります。例えば、親族内承継のほうが取引先などの関係者から心情的に受け入れられやすいといったことなどが挙げられます。また後継者教育に長い時間をかけやすいことも親族内承継の強みであると言われています。自分の子供の誰を後継者にするか早めに決めることができた場合、長ければ10年以上かけて社内教育や社外教育を受けさせることができます。

ただこうしたメリットが親族内承継にはあるものの、親族内に次期経営者にふさわしい人物がいるとは限りません。経営者には決断力や判断力、そして意欲や根気も求められます。「親族だから」という理由だけで会社を引き継ぐと、会社と後継者本人の両方が将来的に厳しい状況に置かれてしまう事態も起こり得ます。

「親族外承継」という選択肢もある

前項で説明した理由からも分かるように、子供に会社を継がせたい中小企業のオーナーであったとしても、「親族外承継」という方法についても簡単に知識は持っておくと良いでしょう。

親族外承継の場合、後継者は会社の従業員や外部の人材ということになります。そして親族外承継には次期経営者に適した人物を幅広い候補者の中から選ぶことができるという大きなメリットがあります。

ただ親族外承継の場合は、現経営者の株式を取得するための資金を後継者候補が保有していないことが壁となることもあるほか、現経営者の債務保証の引き継ぎなどがうまくいかないこともあります。

金融機関に対する債務保証の引き継ぎに関しては、「経営者保証に関するガイドライン」の活用によって経営者の交替に際し、前経営者の債務保証を解除し、新経営者が債務保証を求めなかったケースもあり、円滑な親族外承継に向けた制度が徐々に整いつつあります。

事業承継は時間がかかるもの、早期からの準備を

事業承継は時間がかかるものです。準備もせずに「来年、事業承継しよう」と思い立ってすぐできるものではありません。そして親族内承継であっても親族外承継であっても乗り越えるべき課題があります。いずれの場合でも早期から準備に取りかかり始めることが肝心です。

事業承継に関する専門的な相談は、金融期間、税理士・弁護士などのほかにも国の支援機関も活用できます。事業承継における留意点やスケジュール、利用できる税制や債務保証の解除など、不安や悩みを解決するためにも早めに専門家に相談することが有効です。(提供:企業オーナーonline

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