7/3(水)、海の向こうの米国株式市場では、NYダウが9ヵ月前に記録した過去最高値を更新し、機関投資家の多くが参考にするS&P500も連日で過去最高値更新となっています。同国の景気拡大期間は戦後最長の10年となり、7月で11年目突入となる計算ですが、こうした長期の景気拡大が米国の株価を押し上げる原動力になっています。

米トランプ大統領は「米国ファースト」を主張し、海外の国々と貿易摩擦問題を引き起こしていますが、特に中国との覇権争いでは、関税強化という強硬策をテコにして、攻勢を強めています。貿易摩擦に伴い、景気減速の兆しが出ていますが、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和姿勢を明確にし始めており、それも株価を押し上げる要因になっています。

今回の「日本株投資戦略」では、米国株が過去最高値を更新する中で、それにツレて上昇が期待される日本株はどのような銘柄なのか、分析を試みてみました。

「米国株が過去最高値更新」で上昇期待の日本株はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

表1は以下のすべての条件を満たす東証1部銘柄を、S&P500との相関係数(月足・過去10年間)が大きい順に20銘柄並べたものです。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(3)「その他」(REITなど)に属す銘柄以外であること
(4)過去10年間の株価データが取れる銘柄であること

ここで、相関係数とは、2つの変数の間の関係の強さを示すものです。-1から+1の間の値を取り、+1に近いほど、同じ方向に動きやすいことを、逆に-1に近いほど逆の方向に動きやすいことを示しています。個別銘柄とS&P500の相関係数が大きいということは、米国株が上昇した時にその個別銘柄も同様に上昇しやすいことを示しています。すなわち、過去10年のデータから分析する限り、表1の上位の銘柄は、「米国株が過去最高値更新」の時に、上昇期待の大きい銘柄と言えます。

ただ、脚注にも記載した通り、相関係数はあくまでも過去のデータを分析したもので、将来を示唆するとは限りません。言い換えれば、過去10年における米国株の上昇局面と、今回の上昇局面の間の投資環境の違いに留意する必要があります。

また、表1では、個別銘柄とS&P500にとどまらず、個別銘柄とドル・円相場の相関係数も参考指標として併記しております。個別銘柄とドル・円相場の相関係数が大きい程、その銘柄は円安・ドル高が追い風に、円高・ドル安が逆風になりやすいと考えられます。ちなみに、トヨタ自動車(7203)とドル・円相場の相関係数は0.698で、円安・ドル高になると同社株が上昇しやすいことを示しています。さらに、日経平均株価とドル・円相場の相関係数は0.670で、日本の主力銘柄は全体としては、円安・ドル高の時に上昇しやすいことを示しています。なお、上記(1)~(4)のすべての条件を示す銘柄の平均は0.321です。

今回表1に掲載した銘柄とドル・円相場の相関係数は平均で0.432でした。すなわち、米国株が上昇した時に株価が上昇しやすい銘柄は、総じて円安・ドル高が追い風に、円高・ドル安が逆風になりやすい銘柄といえます。

このため、米国株が上昇し、同時に円安・ドル高が見込まれる投資環境であれば、表1の銘柄について、株価が上昇する確度は高くなると考えられます。反面、米国株が上昇しても、外為市場で円高・ドル安が見込まれる投資環境の時、好材料と悪材料が相殺し合い、株価はもみ合いやすくなると考えられます。ここ数か月間の米国株の上昇は、金融緩和への強い期待を背景としており、外為市場で円高・ドル安が進んでいることから、表1の銘柄のパフォーマンスが良くなっている訳ではないようです。

なお、個別銘柄との相関係数を計算すべき指数・指標は、S&P500やドル・円相場にとどまらず、原油価格や、金相場など数多くあります。したがって、個別銘柄とS&P500の相関係数の強さを分析することは、「米国株が過去最高値更新」の時に上昇が期待される日本株を分析する時の「入り口」であると考える方が良いかもしれません。

「米国株が過去最高値更新」で上昇期待の日本株
(画像=SBI証券)

表1:「米国株が過去最高値更新」で上昇期待の日本株はコチラ!?
コード / 銘柄 / 株価(7/4) / 過去10年間の相関係数S&P500 / 過去10年間の相関係数ドル・円
<6301> / 小松製作所 / 2,595.5 / 0.600 / 0.428
<8002> / 丸紅 / 737.2 / 0.598 / 0.382
<4063> / 信越化学工業 / 10,145 / 0.598 / 0.461
<6481> / THK / 2,628 / 0.594 / 0.365
<6645> / オムロン / 5,610 / 0.571 / 0.430
<6305> / 日立建機 / 2,813 / 0.571 / 0.507
<4185> / JSR / 1,687 / 0.566 / 0.425
<6971> / 京セラ / 7,153 / 0.564 / 0.491
<6762> / TDK / 8,560 / 0.562 / 0.522
<4634> / 東洋インキSCホールディングス / 2,399 / 0.540 / 0.519
<5803> / フジクラ / 424 / 0.540 / 0.382
<8031> / 三井物産 / 1,813.5 / 0.540 / 0.392
<8591> / オリックス / 1,636.0 / 0.540 / 0.343
<4182> / 三菱瓦斯化学 / 1,467 / 0.538 / 0.438
<7267> / 本田技研工業 / 2,807.5 / 0.535 / 0.548
<6954> / ファナック / 19,920 / 0.531 / 0.266
<6103> / オークマ / 5,790 / 0.528 / 0.490
<8053> / 住友商事 / 1,652.5 / 0.525 / 0.426
<6448> / ブラザー工業 / 2,118 / 0.525 / 0.386
<6506> / 安川電機 / 3,625 / 0.524 / 0.438

※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。相関係数は2019/7/3まで10年間の月足データをベースに計算され、数字が大きいほど、2つの指標・指数が同一方向に動きやすいことを示しています。「ドル・円相場」の相関係数は、円安・ドル高が進むほど株価が上昇しやすい銘柄の数字が大きくなります。なお、相関係数はあくまでも過去のデータを分析したもので、将来を示唆するとは限りません。

掲載銘柄の投資ポイント

こでは表1に掲載された銘柄の一部について、投資ポイントをご説明し、今後の展望を探ってみたいと思います。

●小松製作所(6301)

建設機械・鉱山機械の大手で、地域別の売上構成比は世界に分散していますが、北米(24.8%)を含む米州が38.0%と最大で、日本(12.7%)や中国(6.7%)を上回っています。ただ、市場ではいまだ「中国関連株」のイメージが強いように思われ、中国経済への警戒感が逆風になっている可能性があり、2018年以降の株価は低迷してきました。この間、外国人持ち株比率も低下しています。

2020年3月は中国・インドネシアの低迷や円高が懸念され、減益予想になっています。ただ、為替前提は1ドル105円、1ユーロ109円と保守的にみえます。株価も落ち着きを取り戻しつつあり、円高圧力が緩和すれば、出遅れ修正に向かう可能性もありそうです。

なお、同業の日立建機(6305)もS&P500との関係を示したグラフの形状が似ているように見受けられます。

図1:小松製作所(6301)とS&P500(月足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。10年前の株価を100として指数化したものを比較。)

●丸紅(8002)

粗利益の構成比は食料19.0%、生活16.9%、素材31.0%他となっています。他の総合商社同様、原油価格の動向が株価に強く影響するとみられます。足元で米国株の上昇に対して出遅れているのは、昨年10月以降、原油価格が下がり、価格を回復しきれていないことが要因とみられます。

原油価格は中国・世界経済の減速が気になる所ですが、減産継続や地政学的リスクの台頭など下支え要因も多そうです。このため、丸紅株に出遅れ修正をもたらす可能性はありそうです。すなわち同社株は、予想PER5倍台、PBR0.6倍台、予想配当利回り4.7%台と割安感が強くなっています。

なお、総合商社は事業の性質上、有利子負債が大きくなるため、世界的な金利低下は歓迎される要素になりそうです。

図2:丸紅(8002)とS&P500(月足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。10年前の株価を100として指数化したものを比較。)

●信越化学工業(4063)

世界的に競争力の強いシリコンウェハーを生産する半導体シリコン事業や塩ビ・化成品事業、電子・機能材料事業等に展開しています。うち、塩ビ・化成品事業では子会社を米国に展開しており、米国経済の影響を強く受ける傾向にあります。

2018年は世界的に半導体関連株が下げた影響で当社株もツレ安となりました。図3にあるように、当社株は総じて米国株に強く連動していますが、上記のツレ安があった分戻し切れていない感じです。今後は出遅れ修正があっても、不思議ではないと考えられます。

図3:信越化学工業(4063)とS&P500(月足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。10年前の株価を100として指数化したものを比較。)

なお、THK(6481)が生産し、世界シェア50%超を誇る直動案内システムも半導体市場を重要な販売先としているため、株価は他の半導体関連株同様、2018年に下落し、その後は落ち着きを取り戻す展開になっています。

京セラ(6971)、TDK(6762)などの電子部品株、ファナック(6954)、安川電機(6506)などの設備投資関連株も、株価の動きは類似しており、2018年は総じて下落相場で、最近になって落ち着きを取り戻す展開になっています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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