前日については、NY時間にウルスア・メキシコ財務相が辞任を表明したとの報道により、メキシコペソが急落し、メキシコペソ円は、一時5.629円まで下落しました。辞任要因としては、現政権との政策見解不一致などを理由に挙げており、メキシコ株式相場が軟調に推移したことで、ペソ売りが強まりました。ただ、すぐさま後任にはアルトゥロ・エレラ次官が就任するとの報道もあったことから、混乱は回避されるだろうとの見方もあり、5.70円付近まで値を戻しています。
本日、日本時間23時に予定されているパウエルFRB議長の議会証言待ちの状況になっており、マーケットは動きづらい地合いになっていますが、50bpの利下げ観測は大幅に後退していますが、25bpの利下げについては、FEDWATCHの数字を見ても、ほぼ織り込まれていると考えられます。ただ、一部で期待されている利下げの見送りについては、可能性が低いと考えられます。トランプ大統領から度重なる利下げ要求もあり、利下げ見送りとなれば、「為替操作ゲーム」を傍観することは間抜けとしてドル売り介入の可能性を示唆しているためです。
6月のFOMCでは、年内の利下げを予想するメンバーが8名となり、景気拡大を持続させるために「適切に行動する」として予防的利下げを行ってもおかしくありません。ただ、失業率は歴史的な低水準となり、ニューヨーク株式市場が史上最高値を更新する環境下での予防的利下げには、説明がつかないことが多く、本日の議会証言では、この辺りの質問が多く出てくるかもしれません。ただ、利下げ観測維持であれば株高となり、利下げ観測後退となればドル買いとなるため、ドル円の下値は限定的になるのではないでしょうか。
今後の見通し
本日の注目は、パウエルFRB議長の議会証言、そしてFOMC議事要旨に絞られそうです。この二つのイベントがあまりにも注目されているため、ここまではマーケット自体も様子見の展開になりそうです。6月の米非農業部門雇用者数の伸びが予想を大幅に上回ったことで、政策金利引き下げの緊急性は後退したとも考えられますが、メインシナリオとしては、利下げの可能性はしっかりと残すものと思われます。
6/19のFOMC声明文では、景気拡大を持続させるために「適切に行動する」と表明しており、民主党大統領候補でもある、エリザベス・ウォーレン上院議員がパウエルFRB議長に対し、大統領の米金融当局批判や米経済情勢への質問をすることを明言しているため、政策金利について何かしらのシグナルが出てくるのではないかと考えられます。
市場が急速に7月の利下げ観測を織り込みだしたことから、今回の議会証言ではパウエルFRB議長自らが釘を刺すのではないかと考えられていましたが、強い雇用統計の結果を受け、状況が一変しています。ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁が「米国経済が大きく弱まる状況になれば利下げが正当化されるとしたものの、米国経済はそうした状況になっていない」との見解を示しています。ただ、25bpの利下げは既に織り込まれている可能性が高く、あるとすればポジティブサプライズになりそうです。
気になる点としては、トランプ政権は総額22億ドルの武器を台湾に売却することを承認したと発表しました。この点について、中国政府は猛反発しており、状況によっては米中通商協議への足枷となるかもしれません。
損切りからの途転買い
108.50円でのドル円ショート、109.00円上抜けを損切り目途として考えていましたが、パウエルFRB議長の議会証言前の買い戻しが強く、また、状況によっては109円半ば付近までの続伸が見込めるため、108.70円で損切り、その後途転買いに変更します。利食いは109.50円を想定し、損切りは108.30円下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
チェティンカヤ・元トルコ中銀総裁をエルドアン大統領が解任した件について、同大統領がトルコ中銀を「全面的に改める必要がある」との見解を示しました。状況によっては、中銀の独立性が危ぶまれる可能性が高く、リラ売りの材料として意識されるかもしれません。
今日の予定
本日は、英・5月貿易収支/鉱工業生産/GDP月次推計発表、加中銀(BOC)政策金利発表、FOMC議事録公表などの経済指標が予定されています。要人発言では、 テンレイロ・MPC委員、ブラード・セントルイス連銀総裁、そしてパウエル・FRB議長半期議会証言が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。