ITの普及がシェアの利便性を加速した

シェアの概念がこれだけ普及した背景には、下記のようにいくつかの要素があります。

・人々の「モノの保有」への欲求が弱まり、必要な時にサービスが利用できればいいという意識が広まった。

・社会の持続可能性(サステイナビリティ)を考えた時、稼働率の低いものを保有者のみが用いることは、環境などにとって優しくないという意識が広まった。

・自分の保有するノウハウや時間を、社会的に意義のある活動に用いることで自己実現を図りたいという人々が増えた。特に、引退したビジネスパーソンや、能力があっても労働時間が制約されているビジネスパーソン(育休中の女性など)において、そうした意識が高まった。

・テクノロジーの進化により、物理的な距離を乗り越えることが可能になった(例:オンライン英会話教室など)。

・ITの普及でマッチングそれ自体が容易になった。加えて、レビューやレイティングが可視化されることで、貸し手、借り手双方にとって、利用のリスクが下がった。

特に最後のポイントは、シェアリングエコノミーが発達する上で非常に重要です。なぜなら、特に貸し手が個人の場合、ITの力なしに、不特定多数の中から信用できる借り手を探すことは非常に難しいからです。

仲介業者であるウーバーやエアビーアンドビーが、短期間で企業価値数百億ドルの企業にまで成長した理由も、この最後のポイントにあります。彼らのビジネスが成り立つためには、多くのユーザーのニーズに応えられるだけの「サービス提供者」や「物件」の数があることが前提条件です。それがマッチングの可能性を増し、ユーザーの便益を上げることにつながるのですが、その時に必要なのが、マッチングのための良い仕組み(アプリなど)およびレイティングの仕組みなのです。

彼らは、レイティングについて独自の仕組みも導入しています。たとえばエアビーアンドビーであれば、貸し手と借り手が双方を評価します。したがって、高いレイティングがついていれば、貸し手も借り手も安心してそのサービスを利用できるわけです。

また、このレイティングの仕組みは、サービスの質そのものを上げる効果もあります。中国のライドシェアなどは、当初は愛想の悪い運転手も多くいましたが、レイティングが浸透するにつれ、劇的にサービスのレベルが向上しました。メーカー側からは、新製品が売れなくなって困るという声もありますが、一方で、すでにシェアを前提とした製品・サービスの開発も進んでおり、今後より一層シェアの流れは加速することが見込まれています。