トップのアポを取り直接ビジョンを聞こう

ただし、ビジョンの話をするためには、お客様企業のトップと商談をする必要があります。担当者レベルでは、業務やオペレーションに関心が向いているので、現場の課題の話になりがちだからです。

トップのアポを取るのは難しいと思っている営業職が多いのですが、実際にやってみれば、そんなことはありません。いくつかコツがあるので、それを踏まえて挑戦してください。

コツの一つ目は、「商品のご提案に先立って、御社の経営についてのご意向をうかがいたい」というように、目的をしっかりと伝えること。

「ご挨拶にうかがいたい」と言う人が多いのですが、これが一番良くありません。忙しい経営者にとって、「ご挨拶」ほど役に立たないものはないからです。

また、現場の担当者を味方につけることも重要です。担当者に提案する内容がトップの意向とズレないよう、先にトップの意向を聞いておいたほうが、担当者にとっても仕事がしやすいはず、というように、メリットを伝えて理解してもらえれば、トップのアポを取るのに協力してくれるはずです。

トップとの商談ができることになったら、その場では何を話せばいいのか。冒頭で「御社のビジョンはなんですか?」と聞くのは唐突かもしれません。

お勧めは、ビジョンについて話してもらえるよう、水を向ける質問をすることです。そこで有効なのが、相手のこれまでのキャリアについて聞くことです。

「経営者は孤独だ」とよく言われるように、経営者がキャリアやビジョンについて話しても、共感しながら聞いてくれる相手は、実はほとんどいません。聞いてくれる人が現れたら、嬉しく感じるものです。

キャリアについて聞いていると、過去から未来へと話が進みますから、話が進むにつれて、徐々に現在の状況や課題がわかってきます。そこで「それなら弊社の商品が……」と言いたくなっても、気持ちをグッと抑えましょう。そして、「今、抱えていらっしゃる課題を解決できた先に、どんな会社を目指されているのですか?」「解決するときに、大事にしたいポイントはなんですか?」というように、できるだけ話の次元を上げる質問をするのです。

そこまで話を聞いたうえであれば、相手にとって、提案に耳を傾けない理由はほとんどなくなっていることでしょう。

高橋 研(たかはし・けん)
〔株〕アルヴァスデザイン代表取締役CVO
1974年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、〔株〕ファンケルに入社し、製品開発およびマーケティング業務に携わる。2004年、〔株〕ア・キューブに入社。06年にエム・アイ・アソシエイツ〔株〕へ移ると、自社の営業活動とともに、研修講師やコンサルティング業務も兼務しながら、約2万名の営業人材開発に関わる。13年、〔株〕アルヴァスデザインを創業。年間約500回の営業研修や営業プロジェクトに携わる。著書に『AIに駆逐されない営業力 実践!インサイトセールス』(プレジデント社)がある。《取材・構成:池口祥司》(『THE21オンライン』2019年6月号より)

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