日本企業の後継者不在率は全体の6割以上となっており、深刻な状況が続いています。事業承継をしたくても後継者候補が見つからないとき、果たして中小企業オーナーにはどのような選択肢が残されているのでしょうか。

小規模事業者における後継者不在率は75%

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(写真=PIXTA)

民間調査会社の帝国データバンクが2018年10月に公表した「全国『後継者不在企業』動向調査(2018年)」によれば、後継者が不在の状況となっている日本企業は66.4%に上っています。

後継者不在率は、従業員数や売上高、資本金額などが少なければ少ないほど高くなっています。例えば従業員数が100人以上の企業においては48.4%ですが、従業員数が5人以下の企業においては75.0%となっています。つまり、大企業より中小企業のほうが後継者不足は深刻な状況なのです。

経営者に残された4つの選択肢

事業承継を考えているものの、適当な後継者が見つからない場合、現経営者にはどのような選択肢が残されているのでしょうか。ここでは主な4つの方法を取り上げ、それぞれの選択肢のメリットやデメリット、留意点などについて説明していきます。

①後継者を改めて探す
もし親族の中だけで後継者を探していたのであれば、従業員などの中からも候補者を探してみるという選択肢があります。

自分の子供ではなくても、長年勤めてくれている従業員であれば経営の一体性も保ちやすく、円滑に承継が進めば、ほかの従業員からの支援も得られやすいなどのメリットもあります。

ただ従業員などへの承継の場合は、現経営者からの株式の買い取りに必要な資金が無いことや現社長の個人債務保証の引き継ぎなどが問題となり、結果的に承継を断念せざるを得ないケースもあります。

②M&A
後継者がいない場合の選択肢の一つがM&Aで、マッチングなどによって事業譲渡先を選定することで事業承継を実現させるという方法です。広く承継先を探せることが何よりの利点であるといえます。経営者が会社の売却利益を獲得するためにM&Aを選ぶ場合もあります。

ただ従業員の継続雇用や売却の希望価格などの条件を満たす買い手を見つけることには手間が掛かり、最終的には妥協もしくは最悪のケースでは買い手が見つからないことも考えられます。また現経営者が経営理念などの一体性をM&Aの後も保ってもらいたいと考えている場合、M&Aでは困難さが伴います。

③新規株式公開(IPO)
新規株式公開(IPO)によって上場することでただちに事業承継が実現するわけではありませんが、上場は会社の信頼度や透明性を高めるため、M&Aのマッチング相手が見つかりやすくなるという利点があります。

ただ上場は中小企業にとって決して簡単なものではありません。例えば東京証券取引所の場合、1部・2部の上場審査基準の一つとして、「最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること」もしくは「時価総額が500億円以上」のどちらかに適合することが求められています。この条件をクリアしたとしても、企業経営の健全性やコーポレート・ガバナンスの有効性なども厳しく審査されます。

ただし近年は上場の門戸も広がり、東京証券取引上の場合でも東京プロマーケットのように売上高数億円でも上場できる場合があります。もしIPOを実現できた場合は、多額の資金調達を実現でき、優秀な人材も獲得しやすくなるなどのメリットも多いことから、事業規模が一定規模の企業の場合には視野に入れても良いでしょう。

④廃業
親族の中にも従業員の中にも後継者候補が見つからず、M&Aによる買い手企業も見つからない場合は、廃業という選択肢が現実味を帯びてきます。

帝国データバンクが2018年1月に発表した「第10回:全国『休廃業・解散』動向調査」によると、2017年における企業の休廃業・解散件数は2万4,400件に上っています。これは倒産件数の約三倍です。中でも70代以上の経営者が40%を占めており、経営者の高齢化とそれに伴う後継者不足によって、余儀なく休廃業・解散に追い込まれている企業も増えています。

変わる事業承継の潮流

かつての日本では親族への承継が全体の9割以上という時代もありましたが、長期的な傾向として、日本企業の事業承継においては社外の第三者への承継の割合が年々増え続けています。こうしたことから、いまの時代の経営者にはM&Aなどの選択肢についても最低限の知識を持っておくことが求められているといえるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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