前日については、米国債市場で2年債利回りが10年債利回りを上回る長短金利の逆転現象が起きたことで、リセッションの兆候が見えだしてきているとの思惑が強まり、ドル円が下落しました。この逆転現象は、2007年来となることから、リスク回避の動きが強まり、米10年債利回りは一時1.5708%前後まで大幅に低下し、ドル円も105.657円まで下値を拡大しました。また、英国債市場でも2年債と10年債の利回りが逆転しているため、世界的なリスク回避の動きが、引き続き意識されそうです。
この一連の動きは、トランプ大統領が中国に対して追加関税を発動させると公表したことがきっかけですが、昨日も、ツイッターで「FRBの金融政策変更ペースが遅い」と批判し、より迅速な行動を呼び掛け、問題の焦点をずらそうとしていることも、市場心理としてネガティブに映ったと思われます。また、ナバロ米大統領補佐官(通商担当)はFOXニュースとのインタビューで「FRBは一刻も早く50bpの利下げを行うべき。そうすればダウ平均は3万ドルまで値上がりするだろう」と語りましたが、根本的な問題はトランプ政権の政策にあると市場が判断している以上、米中貿易摩擦の問題がクリアになるまでは、上値の重さは常に意識されるかもしれません。
ユーロについては、ユーロ円が117.790円、ユーロドルが1.11310ドルまで下落するなど、ユーロ全面安の動きになりました。ECBの金融緩和観測に加え、イタリア政権問題などは常に意識されていますが、独・8月ZEW景況感調査が市場予想の-28.0から大幅に悪化する-44.1になったように、ドイツ経済の悪化が根底にはあるようです。昨日のユーロ全面安の要因としては、独10年債利回りが一時マイナス0.657%と連日で過去最低を更新したことが背景にあると考えられます。
今後の見通し
米中貿易摩擦の緩和期待で急速に円安に傾きましたが、昨日はNYダウが800ドル超の下落を示現するなど、ドル円、クロス円が急騰したギャップをほぼ埋めた形になっています。ただ、NYダウの急落の動きと円高の動きを比較すると、かなり円買いの動きが穏やかになっています。要因としては、これまでドルショート中心のポジションが一昨日に大きく踏み上げられ、積極的な仕掛けが控えられたのが実情かもしれません。ドル円の上値は引き続き重いですが、以前のように105円割れを狙うような動きには至っていないため、105円半ばから106円前半での動きが中心になる可能性がありそうです。
本日発表された7月の豪雇用統計では、失業率は5.2%と市場予想通りでしたが、新規雇用者数が4.11万人増と市場予想の1.40万人増を上回りました。また常勤雇用者も2.11万人増予想が3.45万人増になりました。ただ、世界的にリスク回避の動きが強まっていることから、ポジティブな経済指標への影響は限定的になりました。昨日の中国指標(7月小売売上高、7月鉱工業生産)の悪化時と比較しても、豪ドルについてはネガティブな材料には敏感に反応しますが、ポジティブな材料には限定的な影響に留まる傾向が強まっています。
ユーロドルは辛抱強く戻り待ちが吉か
ユーロドルについては、戻り待ちに戻りなしの格言通りの動きになってしまいました。ただ、ある程度の反発はありそうですが、短期的にでもロングにするような動きではないため、ここは辛抱強く戻りを待ちたいと思います。1.1250ドルまでの戻りが難しくなってきていることもあり、設定水準を変更し、1.1180ドル付近での戻り売り戦略に変更、利食いは1.1110ドル、損切りは1.1220ドル上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
本日の人民元取引の基準値となる「中間値」は、1ドル=7.0268元となり、前日の基準値(7.0312元前後)からは0.0044元程度の元高・ドル安水準となりました。ただ、ほぼ市場予想に近い水準となったため、値動きは限定的になりました。一時は人民元取引の基準値が重要視されていましたが、徐々に予想値から乖離しない水準になっているため、以前のようにマーケットに影響を与えるイベントではなくなってきています。
今日の予定
本日は、トルコ・5月失業率、英・7月小売売上高指数、米・7月小売売上高、米・8月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数、米・8月NY連銀製造業景気指数、米・7月鉱工業生産、メキシコ中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。