前日については、13日の海外時間の円急落に代表されるように、日本がお盆休みに入り、海外勢も夏季休暇になっていることから、全体的に商いが薄い中、一時的に円安に振れる場面がありました。欧州市場序盤に、特段ニュースなどは確認されませんでしたが、ドル円は106円付近から106.773円まで急騰、その後は106円台前半で落ち着いた動きを継続していたものの、中国政府が米国の対中制裁関税「第4弾」に対する報復措置を取る方針を示すと、米中貿易摩擦への懸念が高まり、一時105.705円を示現するなど、慌ただしい動きとなりました。
NY時間には、米・7月小売売上高を筆頭に総じて米国の経済指標が好調だったこともあり、再びドル円は106.30円台を回復するも、米10年債利回りが1.4732%前後と2016年8月以来の低水準を付けた場面では、105.80円台まで下値を拡大するも、利回りが1.53%台を回復すると、ドル円も106円台前半まで持ち直しています。本日も引き続き、商いの薄いマーケットになりますが、基本的には米金利動向がマーケットを左右しているので、引き続き、米10年債利回りには注意が必要になりそうです。
ユーロに関しては、レーン・フィンランド中銀総裁が「9月にインパクトのある大規模刺激策を実施する必要がある」と述べ、ECBの緩和策にさらなる条件が付与されるのではないかとの懸念が広がり、ユーロドルは1.10918ドルまで下値を拡大しています。引き続き、ECBのシナリオとしては、9月の理事会で国債買い入れの再開に加えて、社債の買い入れも再開、そして、中銀預金金利も0.10%引き下げたうえで、金利の階層化も実施と想定しています。
今後の見通し
今週は、全体的に市場参加者が少ない中、商いの薄い時間にドル円が急伸するなど、動きの荒い展開になったことから、マーケットが大きく傷んだ可能性があります。特に、13日の海外時間の急伸に加え、15日もドル円の急伸が見られたことから、世界的な景気減速が意識されるも、ショートを積極的に積み立てる向きは少ないかもしれません。本日は、余程大きな報道がない限りは、105円台後半から106円台半ば付近での動きになるのではないでしょうか。
本日の早朝には、トランプ大統領が「中国との貿易戦争、かなりの短期で済む見通し」「中国が追加関税に対して報復するとは思わない」と楽観的な姿勢をとっているため、為替市場、株式市場、債券市場、共に落ち着いた動きになっています。ブルームバーグの報道で、「トランプ大統領と中国の習主席が近く貿易問題で電話協議の計画」と報じられていることも、背景にはあるのかもしれません。今回の急速な円高の要因は、米中貿易摩擦の激化が要因ですし、この問題が沈着化すれば、再度焦点はFRBに当たってきそうです。
注目のFOMCの政策会合については、「日本時間23日23時にジャクソンホール会議でパウエル議長が講演」と報じられているため、何かしらのヒントが隠されているかもしれません。これまでもトランプ大統領の必要以上の利下げ圧力にも屈しなかった同議長ですし、今回も同様のスタンスをとるかもしれません。また、昨日発表された米国の小売売上の内容を鑑みると、例え利下げをしたとしても、あくまで「予防的利下げ」の範疇になると考えられます。
ユーロドルは大きな戻りはないと判断、成行にてショート
ユーロドルについては、1.1200ドルで完全にキャップされた形になっており、遂に1.1100ドルの水準も下抜けています。まさに、戻り待ちに戻りなしの状況になってしまいました。ただ、ユーロについては、依然として下値を拡大する動きになりそうなため、1.1110ドルにてショートメイク、利食いは1.1020ドル付近、損切りは1.1150付近上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
メキシコ中銀が、政策金利を現行の8.25%から8.00%に引き下げました。発表直後は一時的に売られましたが、今回は金利据え置き予想と25bpの利下げ予想が拮抗していたこともあり、5年2ヵ月ぶりの利下げではありましたが、それほどサプライズはなかったようです。メキシコ中銀については、追加利下げの思惑もありますが、今回のようにある程度マーケットが織り込んでいれば、影響は一時的なものになりそうです。
今日の予定
本日は、英・7月消費者物価指数/小売物価指数、ユーロ圏・第2四半期GDP(改定値)、米・7月輸入物価指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。