やがて訪れる自らの老後を少しでも安らかなものにするための方法のひとつは、できるだけ早く資産形成を始めることだろう。そこで積極的に活用したいのが、投資効率を高める「iDeCo」「NISA」という2つの制度だ。今回はそれぞれの趣旨やメリット、両者を使い分けた資産運用について考えてみよう。

iDeCoとNISAの違いは?

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(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

iDeCoもNISAも、国が個人の資産運用を応援する目的で作った制度だ。資産運用に関心のある人たちには、よく知られたものであるが、改めて両制度の概要をおさらいしておこう。

iDeCoとは?

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」である。「年金」とある通りに、この制度の趣旨は、従来の年金制度(国民年金や厚生年金)と同様に、毎月の掛け金によって、老後資金を長期的に準備することにある。

従来の年金とiDeCoの違いは2つある。

・掛け金の金額を加入者自身が設定できる(月々5,000円以上、1,000円単位)
・掛け金の運用方法(定期預金、保険商品、投資信託など)を、加入者本人が選ぶ

iDeCoを利用するメリットは、3つの「税制優遇措置」だろう。

・所得税・住民税が安くなる
iDeCoの掛け金は全額が所得控除されるので、所得税と住民税が節税できる。掛け金が高額であるほど、さらに、加入期間が長いほど節税金額は大きくなる。多くの場合、所得控除を受けるには、年末調整や確定申告が必要だ。

・運用益が非課税となる
通常は投資によって得られた利益に対し、20.315%の税金がかかるが、iDeCoの運用で得られた利益(利息や分配金、売却益)は課税されない。この運用益を再投資すると、複利効果でさらに効果的に資産を増やすことができる。

・受取時に控除がある
iDeCoで運用してきたお金を受け取る際、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となり、節税効果が得られる。

一方でiDeCoの大きなデメリットは、60歳まで原則として解約や途中引き出しができないことだ。あくまで年金制度という性質上、やむを得ないだろう。

NISAとは?

NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」。つまり、「少額の投資で得られた利益を非課税とする」という制度である。

iDeCoでも触れたが、金融商品の運用によって得られた利益には、通常20.315%の税金がかかる。しかし、「NISA口座」の中で購入した金融商品については、運用益に対して税金がかからなくなるのだ。逆に言えば、損失が出た場合、このメリットは得られず、他の口座との損益通算もできない。

iDeCoと違って、NISAで積み立てた資金の払い出しは、いつでも可能だ。なお、NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがあり、それぞれ次のような違いがある。NISA口座とつみたてNISA口座では扱うことができる金融商品も異なるため、注意が必要だ。

一般NISA:非課税枠の上限は年間120万円、利用可能な期間は最長5年 つみたてNISA:非課税枠の上限は年間40万円、利用可能な期間は最長20年

iDeCoとNISAの使い分け

両制度の特徴を理解して、それぞれの使い分けを考えてみよう。

iDeCoは上述した通り、税制優遇のメリットが非常に大きい。そして、その適用が長期にわたるほど、節税メリットの恩恵が多く受けられる。また、掛け金が細かく設定できるため、長期的な資金計画が立てやすいのもiDeCoの特徴だ。

その一方で、60歳まで解約や途中引き出しができないため、それ以前のライフイベント(結婚、マイホームなど)のための資金作りには向かない。こうした点から、あくまでiDeCoは長期的な資産運用、しかも、60歳以降に必要な老後資金の準備のために活用したい。

一方、NISAのメリットは「運用益が非課税」という点にある。投資で利益をあげるほど、その恩恵が享受できるが、逆に利益を出せないと、その恩恵は受けられない。一般NISAの期間は、最長5年と比較的短いため、中期的な高配当銘柄の投資でメリットが期待できるだろう。加えて、NISAは自分の望むタイミングで換金ができる。急に資金が必要になった場合でも安心だ。したがって、NISAは60歳以前に待ち受けるライフイベントに備えて、資金作りに活用するのが良いだろう。

iDeCoとNISA、形は違えども通常の投資では得られない税制メリットがある両者は、併用が可能だ。これから投資を始めるという人は、それぞれの特徴を理解した上で、ぜひ積極的に活用してみよう。