前週末については、米国の経済指標にて米・7月住宅着工件数が市場予想125.6万件に対して、結果は119.1万件、米・7月建設許可件数が市場予想127.0万件に対して、結果は133.6万件とまちまちの内容になったことから、住宅関連の経済指標には反応が鈍かったですが、米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)では、市場予想97.0に対して、結果は92.1になったことから、一時ドル売りが強まる場面がありましたが、米10年債利回りが一時1.5927%前後まで上昇したことを受けて、ドル円は106円台前半から半ばで底堅い動きとなりました。
ユーロドルについては、レーン・フィンランド中銀総裁(チーフ・エコノミスト)が「9月にインパクトのある大規模刺激策を実施する必要がある」と発言したことにより、ECBが早期追加緩和を断行するのではないかとの思惑が強まり、一時1.10667ドルまで下値を拡大しました。ただ、その後は、独シュピーゲル誌が「ドイツは景気後退に陥った場合、財政均衡ルールを撤廃し新たな借り入れを行う用意を整える」と報じたことにより、1.1100ドル付近まで反発しています。
ポンドについては、反発基調を強めました。英最大野党・労働党のコービン党首は早期に内閣不信任案を出す方針とのヘッドラインが伝わり、「合意なき離脱」を巡る過度な懸念が後退したことがポンド買いの要因ですが、自民党、そして、保守党残留支持議員がこの案を支持しないと発表しました。しかし、代替案として、自民党は、暫定党首に保守党のクラーク議員、労働党のハーマン議員を推薦してます。この案が実現すれば、「合意なき離脱」を阻止するための暫定政権が誕生する可能性があるため、意識されるトピックスになりそうです。
今後の見通し
今週については、週末にジャクソンホールで行われるパウエルFRB議長の発言が最も注目されるイベントになりそうです。米債券市場でリセッションの警鐘が鳴ってから、初めての同議長発言となるため、どのようなスタンスで政策金利の舵を切るのかに注目が集まります。既に、マーケットは9月の利下げをほぼ織り込んでおり、焦点は25bp以上の利下げがあるのかどうかのヒントをこの会見で示すのかどうかになりそうです。労働市場を含め、米国の経済指標は依然として強い内容を示しており、特に小売売上高の数字を見ると、インフレは上向きであることが示されています。ただ、世界的な景気減速による「予防的利下げ」が25bpで足りのかどうか、米国の10年債利回りが2007年以降で初めて2年債利回りを下回る逆イールドカーブ現象が起きたことは事実です。この点を踏まえ、25bpの利下げなのか、50bpの利下げなのかを見極める必要がありそうです。
また、本日の早朝に、トランプ大統領が「中国と取引する用意がまだできていない」「安全保障上の理由で、華為技術(ファーウェイ)とビジネスを行うことは望んでいない」と発言したことにより、一時ドル売りが強まりましたが、ロイター通信が、米商務省が中国通信機器大手ファーウェイに対する米製品の輸出禁止措置の猶予期間を11月まで90日間延長する方針と報じていることもあり、下値は限定的になっています。
クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、米中両国の担当次官が10日以内に協議を行い、「この次官級協議がうまくいけば、中国側が米国を訪問し、世界経済への潜在的リスクとなっている貿易戦争の解決に向けた交渉をさらに進める計画だ」と明らかにしました。 ナバロ大統領補佐官(通商製造政策局長)も、先週の市場のボラティリティーが何らか警告サインだとする見方を否定しており、基本的には23日のパウエルFRB議長の会見までは、様子見の展開が続く可能性がありそうです。
ユーロドルは大きな戻りはないと判断、成行にてショート
ユーロドルについては、1.1200ドルで完全にキャップされた形になっており、遂に1.1100ドルの水準も下抜けています。まさに、戻り待ちに戻りなしの状況になってしまいました。ただ、ユーロについては、依然として下値を拡大する動きになりそうなため、1.1110ドルにてショートメイク、利食いは1.1020ドル付近、損切りは1.1150付近上抜けを想定します。
海外時間からの流れ
週末の報道として、トランプ大統領が14日に米株式相場が急落したことを受けて、大手米銀3行のトップと電話会議し、米個人消費や景況感についての見方を尋ねていたとの報道がされています。株安に対しては早急に対処をしてきた同大統領であるため、今後の株安への対策が引き続き行われるのではないかとの見方が、下値を限定的にしているのかもしれません。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・6月経常収支、ユーロ圏・7月消費者物価指数・確報値などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。