前日の海外時間では、基本的には本日予定されているパウエル議長のジャクソンホールでの会見待ちの姿勢でしたが、米・8月マークイット製造業PMIが市場予想50.5から結果49.9へと悪化し、さらには、景況感の節目である50.0を約10年ぶりに下回ったことから、ドル円は106.50円付近から106.30円付近まで下落する場面が見られました。ただ、その後に発表された米・7月景気先行指数が市場予想+0.3%から+0.5%に改善されたことを受け、ドル円は再び106.50円付近での推移になっています。

欧州時間では、韓国が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄の方針を決定したとの報道により、東アジアの地政学リスクの高まりを受け、ドル円は106.255円まで下押す場面がありました。米国は、韓国政府に対し強い懸念と失望を表明したものの、リスク回避の動きは一時的なものとなり、その後はじりじりと値を戻す展開になっています。

昨日は、FRB高官の発言ラッシュとなり、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁(タカ派であり投票権もあり)が「景気減速を示唆する兆候が無ければ緩和の用意はない」、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁(ややハト派で投票権はなし)は「当面は現状を維持し、状況がどのように展開するか見極めるべきだと考えている」との見解を示し、また、カプラン・ダラス連銀総裁(ややハト派で投票権なし)も「追加措置を余儀なくされる事態は避けたいと考えている。しかし、必要なら少なくとも今後数カ月は行動に関して先入観を持たずにいるつもりだ」と積極的な利下げに慎重な姿勢をとっています。ただ、FOMC議事要旨で50bpの利下げを支持していたメンバーが2名いたことが明らかになっており、FRB内でも見解が分かれていることが確認されています。そういった経緯もあり、本日のパウエルFRB議長の会見の注目は非常に高いものになりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日のパウエルFRB議長の会見だけのための一週間だったことは否めませんが、いよいよ本日の23時に会見が行われます。市場の織り込み度としては、25bpの利下げがメインシナリオとなっており、9月の利下げを100%織り込んでいます。100%利下げを織り込んでいる状況下で、さらにハト派方向に影響を与えるには9月の50bpの利下げ示唆、もしくはトランプ大統領が望む100bpの利下げ示唆しかないですが、ハト派一辺倒でないことを考えると、25bpの利下げ示唆がやっとという状況になるのではないでしょうか。

また、ここにきてFRB高官より、利下げについて慎重な意見が出てきていることも積極的な利下げを控える材料として意識されそうです。市場予想では、2018年の講演で「漸進的利上げ」を主張したタカ派から「予防的利下げ」を主張するハト派への転向が予想されていますが、前回のFOMC後の会見では、「足もとの利下げ決定は利下げ局面開始とは異なる」と発言していることもあり、利下げに対して忍耐強いスタンスで臨むとの表明があるのであれば、ドル円は107円台に乗せてくるのではないでしょうか。

また、FF金利先物市場が織込む年内の利下げ期待は、2.2回程度になっており、年内一度でも据え置きの可能性を示唆すれば、ドル円は107円半ば付近を目指し、「予防的利下げ」を遂行する旨(年内3回の利下げ)を示唆すれば、ドル円は105円半ば付近に下落するのではないでしょうか。

市場が望むほどのハト派寄りのスタンスをパウエルFRB議長はとらない公算

ユーロドルについては、1.1110ドルでのショートポジション、利食い設定値を引き上げた1.1060台での利食い、手仕舞です。本日は、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の会見が重要視されていますが、昨日からのFRB高官の発言を鑑みると、市場が期待するほどハト派寄りのスタンスにならない可能性が高まっているため、ドル円のロング戦略とします。106.40円でのロング、利食いは107.00円を上抜ける107.20円付近、損切りは、106.00円下抜けである105.90円とします。

海外時間からの流れ

メルケル独首相とジョンソン英首相との会談にて、メルケル独首相はアイルランド国境問題に関するバックストップについて30日以内に解決案を示すように要求し、ジョンソン英首相もこの要求を受け入れました。ジョンソン英首相は、30日間の猶予期間だけでなく、解決策を示すのはEUではなく、英国である、という考えも初めて受け入れたことになり、やや譲歩する姿勢を見せています。マクロン仏大統領は、引き続き「EU離脱案の再交渉はない」ときっぱりと明言しているものの、英国のEU離脱協定については、ジョンソン英首相とメルケル独首相が今後のキーマンになりそうです。

今日の予定

本日は、加・6月小売売上高、米・7月新築住宅販売件数、そして、ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。