前週末については、パウエルFRB議長がジャクソンホールにて、「経済は望ましい状況だが、リスクが迫っている」「景気拡大を維持するために、適切に行動する」などと述べており、これまでの姿勢よりもハト派寄りに舵を切ったと判断され、これまでのタカ派色は目先緩和されたと考えられます。焦点の9月FOMCでの金利引き下げ幅ですが、25bpはほぼ織り込み済みではありますが、50bpまで踏み込んだ内容にはなっていないことを考えると、従来の25bp引き下げが引き続き最も可能性の高いシナリオになりそうです。

ただ、本来であれば主役のはずのパウエルFRB議長の講演が、この日は米中貿易摩擦の激化に完全に主役の座を奪われてしまいました。パウエルFRB議長の講演前に、中国政府が、米国による制裁関税「第4弾」への報復として、米国からの輸入品約750億ドル相当に対し、9月1日から5?10%の追加関税を課すと発表しました。また、トランプ大統領が即座にツイッターで、「偉大な米企業に対し、中国の代替先を即時に模索するよう命じる。事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」とし、米企業に対し中国から事業を撤退させ、米国内での生産を拡大するよう要求しました。また、マーケット引け後に、「10月1日から、中国からの2500億ドルの製品に現在25%の関税を30%にする」「更に中国からの3000億ドルの製品に9月1日から、10%の関税を15%にする」とツイートしたことで、本日早朝のマーケットが円高に振れるのではないかとの懸念が残ったままNYクローズを迎えました。

月曜のオープンでは、ドル円は105円の大台を割り込み、その後も下値を模索する動きが強まり、一時104.476円まで下落しました。クロス円も総じてリスク回避の動きとなり、円独歩高の動きとなりました。ただ、一度下値を試した後は、買い戻しの動きが強まり、日経平均が大幅安になる中、ドル円は105円台を回復する動きになっています。プラスの材料としては、第7回日米閣僚級通商協議と日米首脳会談では、米国産牛肉・豚肉などの農産物への関税引き下げは環太平洋連携協定(TPP)水準に抑えられたものの、トランプ大統領が求めていた撤廃は回避され、日本が求めていた自動車関税の撤廃は見送られたことで、日米通商協議に関しては、ドル円、クロス円をサポートする材料になるかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今後は、米中貿易摩擦の激化がどの程度で収束を見せるのかにより、ドル円、クロス円の動きが決まってきそうです。懸念材料としては、やはり米中の報復関税措置でしょうか。一向に鎮静化の動きを見せておらず、日に日に状況が悪化しているような状況下で、積極的なリスク回避の巻き戻しは難しいと考えられます。やはり、このリスク回避の動きを収束させるには、問題の発端である米中貿易摩擦の問題解決が必須になりそうです。

また、香港のデモに対して、トランプ大統領が「米国・香港政策法」を盾に介入を示唆し、中国側は「反テロリズム法」による武力鎮圧を示唆していること、韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を受けた朝鮮半島の地政学リスクへの懸念の高まりが依然として上値を抑える材料になりそうです。ただ、本日早朝に一気に円高に振れたことにより、ある程度の達成感が買い戻しの動きをサポートするかもしれません。

ジョンソン英首相が、メルケル独首相やマクロン仏大統領と会談した後、EU離脱に関する楽観論が強まったものの、この楽観論は一時的な動きとなりました。カーニー・英中銀総裁は、「EU離脱に関する影響を除いたとしても、英国経済の基調はなお抑制的であり、第3四半期には停滞状態に陥る可能性がある」と発言しており、ポンド売りの材料になっています。また、「ドルが世界経済の安定性を失わせているとし、各国の中央銀行がドルに代わる基軸通貨の設定に向けて団結する必要があるかもしれない」とも発言しており、今後の動向に注目が集まります。

ドル大幅安の裏で、ユーロドルが戻り売りポイントに

トランプ大統領の発言が引き金となり、ドル円106.40円のロングは、105.90円にて損切り、手仕舞です。慌ただしいクロス円の動きですが、ユーロドルが戻り売りポイントである1.1160ドル付近に達しているため、再びユーロドルのショート戦略とします。利食いは1.1050ドル付近、損切りは1.1200ドル上抜けとします。

海外時間からの流れ

本日早朝は、ドル円、クロス円が軒並み円高に振れ、特にトルコリラ円がフラッシュクラッシュに近い動きになったことから、一時パニック相場になりました。18円前半からスタートしたトルコリラ円は、16円半ばまで急落したものの、その後は再び18円台に回帰するなど、非常に慌ただしいマーケットになりました。日経平均株価がスタートする東京時間9時付近では、大荒れのマーケットが落ち着きを取り戻してきています。

今日の予定

本日は、独・8月IFO景況指数、米・7月耐久財受注(速報値)、そして、カーニー・英中銀総裁の会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。