前日については、月曜オープン開始早々に、トランプ大統領が週末に公表した「10月1日から、中国からの2500億ドルの製品に現在25%の関税を30%にする」「更に中国からの3000億ドルの製品に9月1日から、10%の関税を15%にする」との内容が意識され、一気にリスク回避の動きが強まりました。ドル円は、一時104.50円を下抜け、クロス円全般もリスク回避の動きが強まり、円独歩高となりました。
ただ、急速に進んだ円買いの反動もあり、その後は105円台を回復し、欧州時間に入ると、トランプ大統領が「中国は貿易合意を非常に望んでいる」「貿易協議次第では米企業は中国に留まる」「中国への追加関税の延期について可能性はある」などと発言し、米中貿易摩擦を巡り協議再開への期待が再び浮上し、時間外のダウ先物が大幅に上昇しました。ナイト・セッションの日経平均先物も300円以上上げたため、ドル円は節目の106円の水準を上抜け、一時106.40円付近まで急騰する動きとなりました。米国側のみならず、中国側からも、劉鶴中国副首相は米国との貿易戦争について「冷静な態度で問題を解決したい」と語り、米国に協議再開を呼びかけたことが、進展期待に拍車をかけたものと考えられます。
経済指標では、米・7月耐久財受注が市場予想+1.2%を大きく上回る+2.1%になったことも、ドル買いをサポートしたものと思われます。
今後の見通し
今後の焦点としては、引き続き米中貿易摩擦がどのように収斂するのかが最大のポイントになりそうです。ひとまず、米中間で歩み寄りに舵を切った形になったため、前週末以上に状況が悪化することはなさそうですが、依然として根本的な解決には至っておらず、9月1日から追加関税が発動される可能性が高いこともあり、本格的なリスク回避の巻き戻しにはなっていないと考えられます。目先はドル円の買い戻し主導の動きになりそうですが、上値のポイントである107円付近が引き続き意識されそうです。107円の大台を上抜ける条件としては、トランプ大統領が、主要7カ国首脳会議(G7サミット)で記者団に対し、「中国との交渉を再開する。とても大きなことが起きるだろう」と発言した内容が本当に大きな事であった時だと思われます。
ユーロについては、前週末からの急速にドル売りが進んだ影響で、1.11ドル半ば付近まで上昇していましたが、8月独Ifo企業景況感指数が94.3と予想の95.1を下回り、2012年11月以来約7年ぶりの低水準を記録したことを受けて、再びユーロ売りが強まり、ユーロドルでは1.11ドルのラインを再び下抜けています。ユーロに関しては、イタリアの政局問題などもあり、ユーロ単体での上昇は難しく、あくまでドル売りの状況下でないと下値を模索する展開になりそうです。
ユーロドル、1.1160ドルはやはり戻り売りポイントだった
前週末のトランプ大統領の発言が引き金となり、ユーロドルが1.11ドル半ば付近まで上昇しましたが、テクニカル的に戻り売りポイントである1.1160ドル付近では上値が抑えられており、再度上値の重さが意識されそうです。1.1160ドルでのユーロドルのショート戦略、利食いは1.1050ドル付近、損切りは1.1200ドル上抜けとします。
海外時間からの流れ
マーケットの状況が、完全にトランプ大統領に振り回される展開になっています。米中通商協議が落ち着くまでは、引き続きトランプ大統領のツイッターで状況が一変する可能性があるため、この点には注意が必要でしょう。また、昨日クラッシュしたトルコ円については、影響は一時的であり、現在は落ち着いた値動きになっています。
今日の予定
本日は、独・第2四半期GDP(季調済)(確報値)、米・8月CB消費者信頼感指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。