前日の海外時間では、一部報道により「中国は自動車購入制限の緩和や撤廃を検討」とのヘッドラインが流れたことにより、リスク選好の動きが強まり、東京時間に利食い主導で下落したドル円が買い戻される動きとなりました。また、米・8月CB消費者信頼感指数が市場予想129.0に対して135.1になったことが好感され、ドル円は一時106円台を回復する展開になりましたが、その後はNYダウが失速したこともあり、ドル円は106円台を維持できず、105.60-80円付近での動きに終始しました。

まだまだ先行き不透明感は拭えないものの、米中貿易摩擦に関しては、前週金曜ほど状況が悪化することはないだろうとの思惑から一定の底堅さが確認できますが、ユーロについては、デギンドス・ECB副総裁が「長期的に低金利が続くだろう」との見解を示すと、再度上値の重さが意識され、ユーロドルでは1.11ドルを割り込む動きになっています。イタリアでは、与党左派の「五つ星運動」と野党・中道左派の「民主党(PD)」が連立合意に向けた協議で最終の詰めに入っている模様ですが、党首会談の時期が決まっておらず、28日に延期されています。場合によっては、連立崩壊の危機を招きかねないため、早期の総選挙のリスクが懸念される以上、ユーロの買い戻しは難しいと考えられます。

ポンドについては、野党連合が「英国の合意なきEU離脱を阻止するために協調行動を取る」との報道を受けて、買い戻しの動きが強まっています。労働党のコービン党首は、交渉期間を延長し、そのあとに解散総選挙を実施、国民の考えを聞くことが、合意なき離脱を阻止するために最も民主的な解決方法との見解を示しており、どれほどの議員がこの考えに賛同するかは不透明ですが、「合意なき離脱」一辺倒の流れに一石を投じる動きは、ポンドにとって買い戻しの材料になったようです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

焦点としては、やや沈静化が見られる米中貿易摩擦ですが、トランプ大統領は、中国から通商交渉再開の申し入れがあったと述べていたものの、中国外務省の報道官はそうした話は聞いていないと表明したことに代表されるように、双方の見解に相違があり、引き続き警戒感が高まっている点です。また、米10年債利回りが米2年債利回りを下回る「逆イールド」が進行していることも、市場心理を悪化させている要因だと思われます。一時のパニック的な動きはなさそうですが、ドル円は106円台を回復しても、106円前半から半ばにかけては上値の重い地合いになりそうです。

米中貿易摩擦以外で、リスク回避の動きに繋がりそうな材料としては、香港でのデモが挙げられます。林鄭香港行政長官が、香港でのデモに対して「我慢の限界」と述べ、中国政府による「反テロリズム法」を盾にした武力鎮圧への警戒感が強まっています。トランプ政権も「米国・香港政策法」を盾にした香港問題を通商協議の俎上に上げており、香港でのデモがこれ以上悪化するようだと、さらなる米中貿易摩擦の激化に繋がる可能性がありそうです。

ユーロドル、1.1160ドルはやはり戻り売りポイントだった

前週末のトランプ大統領の発言が引き金となり、ユーロドルが1.11ドル半ば付近まで上昇しましたが、テクニカル的に戻り売りポイントである1.1160ドル付近では上値が抑えられており、再度上値の重さが意識されそうです。1.1160ドルでのユーロドルのショート戦略、利食いは1.1050ドル付近、損切りは1.1200ドル上抜けとします。

海外時間からの流れ

東京時間のリスクとして、中国人民元の対ドル基準値レートが意識されていましたが、予想よりも元高となる7.0835元に設定したことでドル円の下値が底堅くなっています。本日は、総合的に材料難ということもあり、基本的には様子見姿勢が強まりそうです。

今日の予定

本日は、主要な経済指標は予定されていません。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。