前日については、主要な経済指標、イベントなどが予定されていなかったことから、ドル円は105円後半でのもみ合いが続いていましたが、海外時間で、一時140ドル超下落したNYダウが、プラス圏を回復したことで106円台を回復し、その後も250ドル超上昇した場面では、ドル円は前日の高値である106.150円を上抜け、106.226円まで上値を拡大しました。ただ、106円台では上値の重さが意識されており、その後は利食い優勢で106円付近まで下落後、NYクローズを迎えています。

目立った動きとしては、ジョンソン英首相が、「合意なき離脱」阻止の動きを封じるために、9月12日から5週間の間、議会を休会する方針を表明しました。この動きに対して、エリザベス女王も容認しているとの報道もあり、英国の「合意なき離脱」への可能性は一段と高まったと考えられます。英国議会は現在休会中で、9月3日から再開するものの、その後1週間程度で再び閉会してしまうことになります。野党は9月3日の議会再開後に、「合意なき離脱」を阻止するための法案を提出する方針ですが、このまま「合意なき離脱」に対して何の対応もできず、時間だけが経過する懸念もあり、ポンドについては、一気に先行き不透明感が強まったと考えられます。10月17-18日には、英国の離脱について協議するEU首脳会議が予定されており、ここまではヘッドライン中心に英国の悪材料待ちのポンド売りが活発化してくるかもしれません。

ユーロについては、イタリア新政権発足へ向けて協議していた与党「五つ星運動」と最大野党の「民主党」は辞表を提出していたコンテ首相を再び首相に擁立することで合意しました。マッタレッラ伊大統領はコンテ氏に政権樹立を指示したと報じられており、与党内の衝突で混乱していたイタリア政局は左派政党による連立政権発足に向け前進したことになります。ただ、これまでも二転三転していることもあり、ユーロ買い戻しの動きには至っていません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日早朝に、ムニューシン米財務長官が「米国は当面、ドルに関して介入する意思はない」との発言をしており、ドル売り介入が懸念されていたこともあり、本来であればドル買いが強まりそうな状況ですが、マーケットへの影響は限定的なものになっています。やはり、問題の根底である米中貿易摩擦が解決しない以上は、潜在的なリスクオフの動きは意識されそうです。トランプ大統領が、ツイッターで中国との関係は良好である旨の発信を繰り返しているものの、市場は全く反応しなくなってきており、期待感だけではドルの買い戻しは限界なのかもしれません。そういった意味もあり、第13回米中閣僚級通商協議が、直近では最も重要なイベントとして捉えられそうです。

トランプ大統領のツイッター同様に、英国の「合意なき離脱」関連の悪材料についても、ポンド売りは活発化するものの、以前のようなリスクオフの動きにはなっておらず、これまでのように他通貨が連れ安、連れ高となる動きは限定的になりそうです。ポンド独歩安となることも視野にいれながら、10月後半まではポンドの戻り売りがマーケットのメインシナリオになってくるのではないでしょうか。

ユーロドル、1.1160ドルはやはり戻り売りポイントだった

前週末のトランプ大統領の発言が引き金となり、ユーロドルが1.11ドル半ば付近まで上昇しましたが、テクニカル的に戻り売りポイントである1.1160ドル付近では上値が抑えられており、再度上値の重さが意識されそうです。1.1160ドルでのユーロドルのショート戦略、利食いは1.1050ドル付近、損切りは1.1200ドル上抜けとします。

海外時間からの流れ

米国債市場の長短金利の逆転現象(逆イールド)は前日も継続しており、前々日は、米2年債利回りが1.522%、米10年債利回りが1.471%だったのに対し、前日は2年債が1.500%、10年債が1.479%で引けています。長短金利の逆転現象は、近い将来の景気後退の前兆と言われていることもあり、引き続き、米10年債利回りの低下はドル売り要因になりそうです。

今日の予定

本日は、独・雇用統計、独・8月消費者物価指数、米・第2四半期GDP(改定値)、米・新規失業保険申請件数、加・第2四半期経常収支、米・7月中古住宅販売保留指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。