前日の欧州時間序盤で、中国商務省の報道官が9月に予定されている米中閣僚級貿易協議について前向きな姿勢を示し、トランプ大統領も中国との貿易協議を「本日からこれまでと異なるレベルで再開する」と表明したことにより、一気にリスク選好の動きが強まりました。特に、中国側から前向きな発信がされたことは久しぶりということもあり、市場は米中貿易摩擦の緩和への期待で円売り、ドル買いの動きが強まりました。また、米中貿易協議の進展期待もあり、NYダウは一時370ドル超上昇、ナイト・セッションの日経平均先物も260円上昇したことも、リスク選好の動きをサポートしたものと思われます。

ユーロについては、クノット・オランダ中銀総裁が「現時点では量的緩和(QE)再開の必要はない」と発言したことにより、ユーロを買い戻す動きが強まり、一時ユーロドルは1.1090ドル付近まで反発する動きになりましたが、11月1日に次期ECB総裁に就任するラガルド氏が、欧州議会に宛てた書簡の中で、「ECBは多くの広範な政策手段を保有しており、金融安定のリスクがあるとはいえ、必要ならば利下げする余地がある」という認識を示したこともあり、ユーロの上値が抑えられた格好になっています。

ポンドについては、急速な下落という動きにはなっていませんが、ジョンソン英首相が9月の第2週から10月14日まで議会を閉会にすると発表したことにより、「合意なき離脱」の可能性が高まっており、向こう数ヵ月における英国資産市場や英国経済に対して大きな圧力になりそうです。現在は、「合意なき離脱」を阻止しようとしている野党との対立が強まっており、そういった意味でも、議会が再開される9月3日に野党が提出する、「合意なき離脱」を阻止するための法案には注目が集まりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日の東京時間に、日銀が国債買い入れオペで「5年超10年以下」を前回から減額したことで、先物中心限月である9月物は売りが先行した形になっています。今回の対応には、9月日銀会合に向けての緩和期待を維持する目的が示されたのではないかと考えられます。9/1以降の米中関税引き上げ後に、人民元相場がどのような動きになるのかが不透明であり、円高リスクをできるだけ低下させる策としては、妥当であると考えられます。マーケットも、次回の日銀決定会合での利下げは殆ど織込んでおらず、日銀が次回の会合で金融政策を据え置いても円相場への影響は限定的であると考えられるため、緩和の可能性を残すことは、為替市場の安定化を促すと思われます。

イタリアでは、与党「五つ星運動」と野党「民主党」が連立政権を目指すことになったことで、解散総選挙の可能性が低下しています。イタリアの政局を巡るリスクが後退したこともあり、イタリア国債の利回りは大きく低下しているものの、ユーロの上値は依然として重いこともあり、ECBの金融緩和を市場が織り込みつつあるのかもしれません。可能性の高いシナリオとしては、ECBが9月の理事会で、中銀預金金利を10bp引き下げたうえ、社債と国債の買い入れの再開も決定することですが、この動きを早期に織り込むのであれば、ユーロは当面上値が抑制されると考えられます。

ユーロドル、まだまだ下値模索が続きそうだ

1.1160でのユーロドルショート、1.1050ドルの利食い水準で手仕舞です。一旦はこのラインが下値と考えていましたが、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にもまだまだ下値を模索する動きが強まると考えられるため、再びユーロドルの戻り売り戦略を継続したいと思います。1.1080-90ドル付近まで引き付けてのショート戦略、利食いは1.10ドル割れを想定し、1.0950ドル、1.1120ドルを上抜ける水準を損切りラインとします。

海外時間からの流れ

本日の、中国人民銀行による中国人民元の対ドル基準値は7.0879元となり、8営業日連続で予想よりも元高だったものの、12日連続で前日比で元安方向での設定となりました。以前と比べてマーケットに及ぼす影響は限定的になってきているものの、9/1での追加関税後の基準値レートが、非常に重要になってきそうです。

今日の予定

本日は、ユーロ圏・8月消費者物価指数、ユーロ圏・7月失業率、加・6月GDP、米・7月個人所得/個人支出、米・8月シカゴ購買部協会景気指数、米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。