不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

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(画像=不動産投資トラブル(9) 古くなったアパートを建て替えたいけど…)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

古くなったアパートを建て替えたいけど…

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

静岡県在住 藤田さん(65歳,男性)からのご相談

父親から相続したアパートを所有しています。ただ、もうだいぶ古くなってきて、修繕費用などがかかってしまうし悩んでいました。そこで、建て替えをすることにしました。

しかし、賃借人に建て替えの話をしたところ、1軒の借主だけどうしてもあと3年住まわせてほしいと言い出しました。もちろん、粘り強く説得をしたのですが、借主さんも勉強したらしく、「法的に追い出すことはできない」と言い出し、絶対にあと3年は住むと譲りません。

他方、他の賃借人さんは退去に納得してくれて、半年後には皆出て行ってくれます。そうすると、粘る借主さんのせいで3年間建て替えができませんが、新しい賃借人を入れると、同じように出て行ってくれないかもしれません。何かいい方法はありませんか?

よくあるトラブル(9)「 定期賃貸借契約とは?」

これで解決!

まず、普通の借家契約だと、オーナー都合で賃借人に出て行ってもらうことは困難です。それは、法的には賃借人の居住権や営業権が保護され、契約で期間が定められていてもオーナーは「正当事由」がなければ期間満了で賃借人を追い出すことはできません(つまり、更新を拒絶することができません。)。そして、この「正当事由」は、たとえばオーナーがその部屋を自己使用するなど、とても限定されていてほとんど認められないのが現実です。そのため、新しい賃借人を入れるといま粘っている借主さんのように、3年経ったからと言って出て行ってくれるとは限りませんし、法的には追い出しが困難です。

そこで、定期賃貸借契約の活用をお勧めします。定期賃貸借契約とは、平成12年から導入されている制度で、契約で定めた期間が終われば更新されることなく終了する契約のことです。つまり、普通の賃貸借契約だとオーナーからの更新拒絶が困難ですが、この定期賃貸借契約は更新が想定されておらず、期間満了で必ず契約が終了するので、ご相談者さんのように建て替えを検討されている場合や、転勤の際に自宅を賃貸する場合などに活用できます。

さて、この定期賃貸借契約を結ぶには、以下の①から④が必要です。まず、①契約の前に、賃貸人が賃借人に対し定期借家契約であることを記載した書面を交付して説明することが必要です。次に、②契約内容を契約書など書面にすることが必要です。そして、③その契約書に、たとえば「2年間に限って賃貸借する。」というように、一定の契約期間を定めることが必要です。さらに、③契約の更新がないことを特約で定めることも必要です。また、④「契約の更新がないこととする。」という特約も契約書に盛り込むことも必要です。

このように、定期賃貸借契約は活用すれば便利な制度ですが、上記①から④のとおり、定期賃貸借契約が有効となる条件は厳格です。そこで、素人が手を出すのは不安が残りますので定期賃貸借契約を結ぶ場合は、信頼できる不動産会社や弁護士などに相談することをお勧めします。