不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

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(画像=fizkes / Shutterstock)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

民法が大幅に改正されるようだけど賃貸経営に影響は?

ヴェリタス・インベストメント
(画像=ヴェリタス・インベストメント)

大分県在住 澤田さん(39歳、男性)からのご相談

賃貸物件を所有しています。最近、民法が大幅に改正になるというニュースを見ましたが、賃貸経営に何か影響はありますか。いつから改正されるのか、貸主として特に注意しなければならないこと等、要点を教えて欲しいです。知らなかったために思わぬ失敗をする前に、対策できるところは早めにしておきたいと思っています。

よくあるトラブル⓬「民法改正と賃貸借」

これで解決!

⑴ はじめに
結論を言うと、影響はあります。
ご質問の民法改正は、2020年4月1日から本格運用されることになっていて、賃貸借契約に関する改正も含まれます。しかも、基本的に借主を保護する方向での改正ですので、貸主としては思わぬ損をしないために、影響がある改正部分を必ず確認をしておく必要があります。以下では、影響の大きな改正点についてご紹介します。

⑵ 連帯保証人に関するルール
① 極度額の明記
個人の連帯保証人をつける場合、今回の改正で「極度額(保証人が保証する最大額)」を明記することが必要になりました。たとえば、極度額が100万円などと金額を契約書に書かなければ、保証契約は無効になってしまいます。

② 保証の終了原因
今回の改正で、個人保証の場合、借主が死亡したときはその時点で保証人の極度額が確定し、それ以後に発生する債務については保証外になりました。これまでは、借主が死亡した後に契約を相続した同居の家族が滞納すれば、その滞納分も元々の保証人が保証しなければなりませんでした。しかし、今後は元々の保証人に負担を求めることができなくなるので、改めて保証契約を結ぶなど、貸主のアクションが必要になります。

③ 借主の説明義務
会社が借主で、その会社が個人に保証人を頼む場合、借主が保証人に対し自身の財産状況を説明しなければならなくなりました。仮に、借主が説明をしなかったり、ウソを言ったりすると、保証人は保証契約を取り消すことができます。その場合、貸主との間でも保証契約が取り消される可能性もあるので、貸主としてはそのようなリスクを回避するため、保証人が借主から財産状況の説明を受けたことを保証契約書で確認することなど対策が必要です。

④ 貸主の情報提供義務
貸主は、保証人から借主の家賃の支払状況を尋ねられたら情報提供をしなければならなくなりました。仮に情報提供をしなかった場合には、保証人が保証しなければならない範囲が狭くなることもあるので、的確に情報提供をする必要があります。

なお、上記①〜③の改正は、個人が保証する場合に問題になるもので、保証会社を利用する場合は、今回の改正での影響はありません。

⑶ 物件の一部滅失等の場合の賃料減額のルール
今回の改正で、貸している部屋の一部が借主の責任なく使えなくなってしまった場合、当然に家賃が減額されることになりました。これまでは、借主が家賃を下げてほしいと請求をしなければならなかったのと比べると、借主としては家賃の減額を主張しやすくなったので、貸主はトラブルを避けるために日々のメンテナンスをより積極的に行う必要があると思います。

⑷ まとめ
以上のとおり、今回の民法改正に対し、貸主としては十分な対策をしなければなりませんので、賃貸経営の難易度が上がったといえるかもしれませんが、信頼できるプロに相談して適切な対応をすれば、問題はないと思います。