前日については、米国が祝日で休場だったことで、全体的に動意薄な動きになりました。ただ、中国商務省が、米国が1,100億ドル分の中国製品に1日から15%の追加関税をかけた措置に対し、世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表しました。中国がWTOに提訴したことにより、トランプ大統領が中国に対して態度を硬化させる可能性が出てきており、米中貿易摩擦の長期化が、ドル円の上値を重くするかもしれません。また、9月の米中通商協議再開期待で一旦リスクオンになりましたが、「米中両国の通商交渉担当者は今月予定している会合日程を設定できていない」と一部で報道されているように、先行き不透明感が強まっています。急速な円高リスクは大きく後退しましたが、上値は依然として意識されそうです。

ユーロについては、コンテ首相が「五つ星運動」と野党・中道左派「民主党」の協議が4日までにまとまり、主要政策や閣僚ポストで合意できるとの見方を示しましたが、依然として上値の重い状況が継続しています。要因としては、12日に予定されているECB理事会にて、中銀預金金利を10bp引き下げるとの市場予想が、利下げ幅が大きくなるとの見方も出てきたことが考えられます。短期金融市場では、中銀預金金利の利下げ幅を10bpではなく、20bpになる確率を60%程度まで織り込んできており、引き続きユーロの上値は重いと考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日より、英国議会が再開されるため、ポンド中心のマーケットに傾く可能性がありそうです。昨日は、本日の議会再開を前にかなりのヘッドラインが飛び交いましたが、先週から報じられていた通り、野党連合(+保守党穏健派)は限られた会期で政府の不信任投票よりも、法整備を優先することが見込まれています。そんな中で、本日突如注目を集めることになったのは、英国政府が総選挙を求めるというアイデアです。ジョンソン英首相は、保守党議員に対して、「合意なき離脱」を阻止する法案への賛成は、政府に対する不信任と同じ、保守党の造反者は除名処分、次回選挙での公認取り消しなどのプレッシャーをかけていますが、完全に他の議員の賛同を得られていません。

そこで、政府は自ら総選挙を要求するという選択肢を検討していると報じられています。政府が主導する形での総選挙実施には、議会の2/3の合意が必要になりますが、そのためには政府は10月31日の離脱期限前の選挙実施をコミットする必要がありそうです。選挙期日のコミットメントに関しても、法的拘束力を持たせなければ、野党は合意しない可能性が高いため、本日予定されている臨時閣僚会議が重要になりそうです。

野党は、予定通り法整備を行うのであれば、「10月19日までにEUとの合意がなかった場合、来年1月31日までの3ヶ月の離脱期限延期を求める法案」の提出を予定していると報じられています。今週の英議会の動き次第では、英国のEU離脱に対する方針がやや決まってくる可能性があるため、重要な一週間になりそうです。

ユーロドルはどこでショートにするのかが今は大事

ユーロドル、1.10ドルを一度は回復するかと思いましたが、結局回復せずにそのまま下落しています。テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも下落が示唆されている以上、戻り売りという考え自体間違えだったのかもしれません。本日の朝方に1.0965ドルでショートメイク、1.10ドル上抜けで損切り、利食いについては、1.09ドル下抜けを視野にいれ、1.0870ドル付近を想定します。

海外時間からの流れ

米中貿易摩擦の長期化が懸念されている中で、注目されていた中国人民銀行による中国人民元の対ドル基準値ですが、1ドル=7.0884元に設定されました。ただ、市場予想からは乖離しなかったこともあり、動意は限定的になっています。

今日の予定

本日は、豪中銀(RBA) 政策金利、トルコ・8月消費者物価指数、英・8月建設業PMI、米・8月マークイット製造業PMI、米・8月ISM製造業景況指数、米・7月建設支出などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。