前日については、英国議会再開による様々な思惑により、欧州時間にポンドドルが一時1.19596ドルを示現し、2016年10月以来約2年11カ月ぶりの安値を更新しました。ただ、Standing Order No.24(緊急審議)による採決が行われ、9月4日に野党が議会で時間を自由に使用することができる採決では、賛成328、反対301となり、本日は、野党や超党派の議員は、EU離脱期限を現行の10月31日から来年の1月31日まで延長する法案を筆頭とした、「合意なき離脱」を阻止するための複数の法案が提出される予定です。
ジョンソン英首相率いる保守党は、保守党議員1名(フィリップ・リー議員)が自由民主党に鞍替えしたため、下院の過半数の議席を失っており、この過半数の議席を失ったことがトリガーとなり、ジョンソン英首相は、造反した議員を党から追放するともともと警告していましたが、21人が超党派動議に賛成票を投じています。ジョンソン英首相は、「総選挙は望んでいない」と発言しているものの、現時点では総選挙実施の動議を提出するのではないかと報じられています。
総選挙実施の可決には、下院計650議席の中で2/3以上である434の賛成が必要になります。野党労働党のコービン党首が、離脱延期法案を容認するなら総選挙実施は可能であるとジョンソン英首相に伝えていることもあり、恐らく同首相はこの提案を受け入れるものと思われます。ただ、支持が得られず同首相の政策が裏目に出る可能性もあり、引き続き、ポンドからは目が離せない地合いが継続しそうです。しかし、「合意なき離脱」の可能性が低下したこともあり、ポンドは安値圏から大きく買い戻されており、ポンドドルでは1.2100ドルを回復しています。
今後の見通し
前日は、米・8月ISM製造業景況指数が発表され、市場予想51.3に対して、結果は49.1と大幅悪化、さらに、景況感の節目である50.0を下回ったこともあり、ドル売りが強まりました。ドル円は106.30円付近から105.70円台まで下落し、次回FOMCでの利下げ幅が拡大するのではないかとの思惑が出ています。その後はじりじりと106円台を回復する動きになってていますが、今週の主役はあくまで欧州通貨であり、ドル円については、基本的にはレンジ内での動きに終始しそうです。
早速ポンドの乱高下がありましたが、ユーロドルについては、一時1.09265ドルと2017年5月以来約2年4カ月ぶりの安値を付けましたが、ポンドの買い戻しの動きに連動するようにユーロも買い戻され、1.0980ドル付近まで反発しています。ECB理事会メンバーのミュラー・エストニア中銀総裁が「債券買い入れ再開の強い論拠ない」と述べたことがユーロ反発のきっかけですが、一部通信社は関係者の話として「ECBは12日に開く定例理事会で、利下げや金利の階層化、フォワードガイダンス強化など包括的な刺激策を決定する方向に傾いている」と報じています。既に、市場はECBが20bpの利下げを決定することをほぼ80%の確率で織り込んでおり、ユーロ反発場面では戻り売り基調が強まりそうです。
ユーロドルはどこでショートにするのかが今は大事
ユーロドルは1.0920ドル台から1.0980ドル付近まで反発しましたが、1.1000ドルのレジスタンスは引き続き意識されており、ECBの金融緩和が既定路線になりつつあることから、引き続き上値は重いと考えます。1.0965ドルでのユーロドルのショート、1.10ドル上抜けで損切り、利食いについては、1.09ドル下抜けを視野にいれ、1.0870ドル付近を想定します。
海外時間からの流れ
トルコ・8月消費者物価指数が発表され、市場予想の+15.60%から+15.01%になったことから、インフレ率の制御ができていることが示唆されました。この経済指標の内容を受けて、さらなる利下げが想定されますが、前回同様、市場はインフレ率の制御がされていることを好感しており、トルコリラ円では18.50円付近まで上昇しています。
今日の予定
本日は、英・8月サービス業PMI、ユーロ圏・7月小売売上高、米・7月貿易収支、加中銀(BOC)政策金利発表、米・ベージュブックなどの経済指標が予定されています。要人発言としては、レーン・フィンランド中銀総裁、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ボウマン・FRB理事、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。