前日については、米中両国が閣僚級の貿易協議を10月初めにワシントンで開催することで合意したとの報道、さらには米雇用統計の前哨戦であるADP雇用者数が14.9万人増予想から19.5万人増に大幅に増加したこと、そして、8月米ISM非製造業指数が56.4と予想の54.0より強い内容になったことから、リスクオンの動きが強まり、ドル円は一時107.226円まで上値を拡大しました。経済指標では、8月ISM製造業景況指数が49.1と景況感の節目である50.0を割り込んだことで、8月米ISM非製造業指数についてもある程度悪化するのではないかとの思惑が強まっていましたが、結果は市場予想を上回る内容となり、米国の景気への見通しが明るくなったことがプラス材料として捉えられました。

また、これまでのリスク回避の動きの主要因は、米中貿易摩擦の激化の一言に尽きるため、米中両国が閣僚級の貿易協議を再開することは、リスク回避の巻き戻しを誘発するには、これ以上ない材料だったと考えられます。ただ、中国商務省報道官が「中国は世界貿易機関(WTO)提訴を取り下げる計画はない」と発言していることもあり、全てがトントン拍子で進むかどうかは不透明な点もあるため、引き続き、米中貿易協議関連のヘッドラインには、マーケットは過敏に反応する可能性が高そうです。

ポンドについては、既に下院にて、合意なき離脱を阻止する労働党ベン議員の法案は賛成327、反対299で可決されましたが、上院でも可決されたことで、来週月曜にでもエリザベス女王の裁可が下りる予定です。ただ、ジョンソン英首相は「10月末のEU離脱期限を延期するよりは野垂れ死にすることを選ぶ」と発言しているように、9日に再度解散総選挙の動議を提出するのではないかと言われています。同首相にとっては最後の賭けではありますが、一部では、政権与党の保守党が内閣不信任案を提出する可能性すらあるのではないかとの憶測もあり、エリザベス女王の裁可が下り、正式な法案になるまでは、まだまだ油断できない状況だと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国議会にて、今後カギを握るのが労働党の動きになりそうです。既に、コービン労働党党首は、早期解散総選挙を支持する条件として、10月末のEU離脱期限の延期の保証を求めています。解散総選挙を行うには、2/3以上の賛成が必要であり、保守党は289議席、閣外協力のDUP党が10議席、、2/3以上の賛成には434議席が必要になることから、労働党の協力なくしてジョンソン英首相が求めている解散総選挙の実施は不可能です。ただ、労働党が望む解散総選挙の時期は10月31日以降であり、早期解散総選挙を望むジョンソン英首相の意見とはかなり相違があると思われます。

今週は、様々な動きがありましたが、最後の締めくくりとして、米雇用統計が発表されます。市場予想では、非農業部門雇用者数が16.0万人増、失業率が横ばいの3.7%、平均時給については、前月比は横ばいの0.3%予想ですが、前年比については、3.0%予想(前回:3.2%)になっています。米国経済については、景況感の不安こそありましたが、これまでも労働市場の強さは安定しており、今回もネガティブサプライズという展開にはならない公算です。これまでのレジスタンスラインとして意識されていた107円のラインでは上値抵抗もそれなりに予想されるため、一気に上値を追う展開は難しそうですが、107円での足場固めの意味でも、本日の雇用統計は重要になりそうです。

時期尚早であるが、トレンド転換と考えていいかもしれない

トレンドの転換と捉えたポンド円のロング、想定外(米中両国が閣僚級の貿易協議合意)のイベントもあり、一気に上昇しています。持ち値が130.20円ということもあり、損切りのラインは129.00円設定でしたが、利食いの逆指値に変更し、利食いの指値は134.00円で変わらず、利食いの逆指値を130.80円に設定したいと思います。

海外時間からの流れ

八方塞がりとなったジョンソン英首相に追い打ちをかけるように、同首相の弟であるジョー・ジョンソン大学担当大臣が「国益優先」を理由に辞任を発表しました。9月9日に解散総選挙動議の再提出をする予定ではあるものの、今回の辞任発表により、さらに、同首相は議員、そして国民からも、支持を得るには難しい状況になったと考えられます。

今日の予定

本日は、独・7月鉱工業生産、米雇用統計、加雇用統計などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。