前週末については、注目されていた米雇用統計で、非農業門雇用者数が市場予想15.8万人増に対して結果は13.0万人増となり、発表直後はドル売りが強まりましたが、平均時給が前月比予想が+0.3%が結果は+0.4%、前年比予想が+3.0%が結果は3.2%になったことで、ドル円は106.60円台からは下値も底堅く反発基調が強まりました。また、もう一つの注目材料であったパウエルFRB議長のスイス・チューリッヒでの討論会では、「景気見通しに著しいリスクがある」「FRBは景気拡大を維持するため適切に行動する」としながらも「米経済は良い状態にあり、インフレも目標の2%に戻っていくだろう」「リセッションは予想しない」などの見解を示したことにより、過度な利下げ期待が後退し、ドル円は106.90円台まで回復しました。

週末に、EU当局者の話として「英国のEU離脱期限のさらなる延長は認めない」との一部報道があったことで、本日のオープニングのポンドは下落してスタートしましたが、バラッカー・アイルランド首相は「離脱期限の延長を支持する用意がある」との見解を示していることもあり、下値は限定的になっています。また、合意なき離脱を阻止する労働党ベン議員の法案は上院も可決されていることから、本日、エリザベス女王の裁可が下りる予定になっています。また、ジョンソン英首相が本日提案予定の10月15日の総選挙については、遅い時期での総選挙を支持している労働党が支持しない方針であると報じられており、10月19日までにEUとの合意ができなければ、ジョンソン英首相はEU離脱の延期を余儀なくされます。現在のコンセンサスのシナリオですが、実際に延期となれば、ポンドはもう一段高を目指すと思われます。

米雇用統計については、市場予想よりも若干弱含む展開になりましたが、加雇用統計については、新規雇用者数が予想1.5万人増が結果8.11万人増、また、8月カナダIvey購買部協会景気指数が、60.6と予想の53.0より強い内容となったことを受け、加ドル買いが強まっています。加ドル円では一時81.217円まで上値を拡大し、本日も前週末の高値を更新する形で81.248円まで上値を拡大しています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

パウエルFRB議長は、ブラックアウト期間直前のスイス・チューリッヒでの討論会で、「景気拡大を維持するため引き続き『適切に行動する』」と述べましたが、これは6/19、そして、7/31のFOMC声明と同じ表現を使用しているため、これまでのスタンスから大きく乖離するような考えにはなっていないと考えられます。基本的には、予防的利下げの25bpが市場のコンセンサスであり、9/18のFOMCでは、サプライズはないと現状考えられます。

ただ、米国の非農業雇用者数では、13.0万人増の数字ではありましたが、実際には2020年国勢調査に向けた臨時政府職員2.5万人の雇用が押し上げており、この臨時雇用という特殊要因を除けば、実際には米国の労働市場は、マーケットが考えているより弱いのかもしれません。そういった意味では、FOMCまで様子見地合いが続きそうですが、反発基調を強めたため、下値の底堅さも確認できますが、上値の重さも同時に確認することになりそうです。

本日の海外時間でもう一段ポンド高になるかが重要に

本日は、英国議会休会前にジョンソン英首相が再度解散総選挙動議を提出予定ですが、ここでポンドがもう一段高になれば、議会閉会中もポンド買いになりやすい地合いになりそうなので、本日の海外時間は非常に重要なポイントになりそうです。持ち値が130.20円のポンド円ロング、逆指値は利食い確定の130.80円、指値は134.00円での設定です。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に、「米アップルと台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)がiPhone生産で中国の労働法を違反している」との一部ヘッドラインが流れたことにより、ドル円は一時106.70円台まで下落したものの、すぐさま買い戻されています。ただ、海外時間での続報などにより、マーケットが動意付く可能性があるため、注意が必要になりそうです。

今日の予定

本日は、独・7月貿易収支/独・7月経常収支、英・統計局7月度GDP月次推計発表/英・7月貿易収支/英・7月鉱工業生産などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。