9月に入り、日本株はようやく、商いを伴いながら値を回復しつつあります。株式市場がもっとも注意深く見守っているのは、米中通商摩擦の問題ですが、9月に事務レベル協議、10月に閣僚級協議が開催されるはこびとなり、11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議における米中首脳会談を経て、何らかの合意が成立する可能性が大きくなっています。季節的に夏休みから戻る投資家も増え、市場も厚みを増しやすい季節になります。
そうした中、株式市場でおもに物色されるのはどのような銘柄になるのでしょうか。これまで大きく値を下げてきた銘柄の「リターン・リバーサル」が一巡した後は、中心的な投資テーマである「5G関連銘柄」にスポットが当たる可能性が大きそうです。ただ、同じ「5G関連銘柄」でも選別が進み、年初来高値を更新する銘柄と、冴えない展開が続く銘柄に二極化する可能性がありそうです。
「5G関連銘柄」に再び注目する理由
冒頭で触れたように、日本株はようやく、商いを伴いながら値を回復しつつあります。米中通商摩擦問題について、11月のAPEC首脳会議における米中首脳会談を経て、何らかの合意が成立する可能性が大きくなっています。夏休みから戻る投資家も増え、市場も厚みを増しやすい季節になります。そうした中、物色的には、これまで大きく値を下げてきた銘柄の「リターン・リバーサル」が一巡した後、中心的な投資テーマである「5G関連銘柄」にスポットが当たる可能性が大きそうです。
ご存知の通り、SBI証券では、有望な投資テーマを自ら決めることができ、当該テーマに関連した最大10銘柄への分散投資を行うことができる投資サービス「テーマキラー!」をご提供しています。数多くの投資テーマの中から、アクセス数の多い投資テーマ、人気が急上昇している投資テーマ等の情報は常に公開されており、それを確認するだけでも投資の参考になると自負しております。そうした中、「5G」はほぼ常にアクセス数がトップの人気テーマになっています。したがって、「リターン・リバーサル」が一巡した後、「5G関連銘柄」が動意付く可能性は十分あると考えられます。
ちなみに、9/20(金)よりラグビーワールドカップ(ラグビーW杯)の日本大会が、全国12会場で開催の予定で、11/2(土)まで熱戦が繰り広げられることになります。この大会では、通信キャリアから「5Gプレサービス」が提供される予定で、5G通信を使ったマルチアングル視聴や、ライブビューイングが提供されることになります。話題性という面でも、今後一定の盛り上がりを期待することができそうです。
表1は当社「テーマキラー!」で紹介している「5G関連銘柄」の一覧です。このうち、株式市場で「5G関連銘柄の中核的存在」と捉えられることが多いアンリツ(6754)が年初来高値示現後6ヵ月を経過しています。信用の高値期日から6ヵ月を経過し、信用取引の需給面で改善が想定され、今後同社の値動きが軽くなり、他の銘柄へ好影響が及ぶ可能性があります。また、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)などはここにきて年初来高値更新の力強い動きを示しています。
図1は「5G関連銘柄(表1の銘柄)」の単純平均株価をTOPIXで割った数値の推移を示しています。「5G関連銘柄」はTOPIXに対して相対的に優位な状態が継続していると見受けられます。なお、8月・月替わりでその動きが更に加速しているようですが、2019年4~6月期の決算発表が影響している可能性もありそうです。表1にあるように、同四半期に大幅営業増益を達成し、業績予想上方修正を期待できる銘柄が増えています。
表1 当社株式投資サービス「テーマキラー!」で紹介している「5G関連銘柄」
コード / 銘柄 / 株価(9/6) / 年初来高値(月/日) / 営業増益率19/4~6 / 営業増益率20/3通期
<6754> / アンリツ / 1,991 / 2,379(3/4) / +65.3% / -11.1%
<6701> / 日本電気 / 4,630 / 4,890(8/9) / 黒転 / +88.1%
<6800> / ヨコオ / 2,715 / 2,805(8/5) / +86.3% / +33.7%
<7518> / ネットワンシステムズ / 2,960 / 3,295(6/20) / +39.4% / +15.3%
<6702> / 富士通 / 8,595 / 8,743(7/29) / -95.7% / -0.2%
<4739> / 伊藤忠テクノソリューションズ / 3,015 / 3,045(9/6) / +54.5% / +8.6%
<8056> / 日本ユニシス / 3,385 / 3,870(6/20) / +109.8% / +11.5%
<1973> / NECネッツエスアイ / 2,813 / 2,908(6/19) / 赤字縮小 / +1.8%
<6938> / 双信電機 / 428 / 702(3/12) / 赤字転落 / 赤字
<9984> / ソフトバンクグループ / 4,668 / 5,886(7/29) / -3.7% / -
※Bloombergデータ、および会社公表データをもとにSBI証券が作成。20/3通期営業増益率は会社発表の予想数値。なお銘柄の順位も当社「テーマキラー!」での順番に従っています。
図1 「5G関連銘柄」(表1)の対TOPIX相対株価
高値を更新しそうな「5G関連銘柄」はコチラ!?
アンリツ(6754)は株式市場で「5G関連銘柄の中核的存在」と捉えられ、本年3月に高値を示現。しかし、5Gの本格化に備え、研究開発費や販促費を積むことが見込まれ、20年3月期は減益予想の業績を公表し、いったん人気が離散する形になりました。
7/30(火)に発表した2019年4~6月期決算では営業利益が26.9億円(前年同期比65.3%増)、受注も20%増と好調でした。上記の通り、信用期日通過に加え、業績への見方が好転してくれば、高値更新も不可能ではないとみられます。少なくとも、当面は上値の余地を残していそうです。
日本電気(6701)は富士通(6702)ともども、5G向け基地局の需要拡大が追い風になりそうです。世界の通信キャリアが世界的な基地局大手「ファーウェイ」との取引を制限されそうなことも、期待感の増幅につながりそうです。
もっとも、基地局海外大手にいったん大きく水を開けられた後で、供給能力の面では少し不安も残ります。日本電気と提携した楽天(4755)は基地局整備の遅れを理由に携帯サービスの本格的始動を来春に先送りすると報道されました。
日本電気については9/5(木)に、「営業益2.5倍(350億円前後)に4~9月に構造改革で固定費減」と報じられ、業績面での買い安心感もあり、8/9(金)に付けた年初来高値の奪回は可能とみられます。もっとも、中間期営業利益の市場コンセンサスは350億円前後であり、その意味では目新しい数字ではない可能性があり、この報道への過剰反応はしない方が良さそうです。
なお、ネットワーク構築に関連する企業としては、NECネッツエスアイ(1973)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)、ネットワンシステムズ(7518)等があり、当面の事業環境は追い風が期待できそうです。ただ、世界的な景気懸念の中、顧客企業の設備投資先送りの影響が出てくる可能性が残り、注意が必要です。
SBI証券企業調査部では、上記の中、ネットワンシステムズ(7518)を調査対象とし、最新の7/31(水)付レポートでは目標株価3,800円、投資判断「買い」を継続しています。仮に当該目標株価が実現されれば、6/20(木)に付けた年初来高値3,295円はクリアできることになります。なお、同業の伊藤忠テクノソリューションズ(4739)は9/6(金)に年初来高値更新です。
この他、ヨコオ(6800)は自動運転やADAS(先進運転支援システム)向けの高速通信を測定する「電波測定サイト」を完成させています。車載通信機器/回路検査用コネクタ/無線通信機器の全セグメントが好調で、業績予想を上方修正するなど、業績好調が見込まれることも追い風です。
反対に、双信電機(6938)は中小型の5G関連銘柄として春先に人気化する場面がありましたが、業績面では出遅れが懸念され、最近の株価も冴えないのが現実です。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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