前日の海外市場では、ドイツ政府が連邦政府の予算の枠外で新たな債務を引き受ける独立した公共団体の設立を検討しているとの報道が流れたことから、財政面の景気刺激に対する期待から、ユーロ買いが優勢となり、ユーロドルでは一時1.10679ドルまで上値を拡大しました。ただ、今週予定されているECB理事会の動向を見極めたいとの考えもあることから、積極的なユーロ買いの動きは限定的になりました。ただ、上記公共団体の設立によって、インフラ支出などの拡大が可能となり、財政規則が定めた上限を上回る公共投資ができるという点は、潜在的なユーロ買い材料になりそうです。
ドル円については、ムニューシン米財務長官が「米経済がリセッションに陥る恐れはない」「(米中通商協議について)中国は良好な取引を目指している」と発言したことで、米中通商協議への期待感が強まったこともあり、ドル円はさらに上値を拡大する動きを見せました。また、米10年債利回りが1.6472%前後まで上昇したことなども、ドル円の下値を底堅くさせているものと思われます。本日の東京時間でも、トランプ大統領が「中国は貿易協議を望んでいる。来週協議する」と発言したことで、ドル円は107.50円付近まで上昇しています。
現地時間深夜にまで及んだ、ジョンソン英首相提案の総選挙動議においては、再び否決されたものの、既にこの動きは織り込み済みだったこともあり、影響は限定的になりました。合意なき離脱を阻止する労働党ベン議員の法案は、エリザベス女王の裁可が下りていることもあり、政府はEUサミット翌日の10月19日までにEUとの合意を取り付けられなければ、ジョンソン英首相は、欧州委員会委員長に交渉期間延長を要請する義務が出てきます。英国議会はこれより10月14日まで閉会になるため、依然として合意なき離脱懸念は残るものの、ポンドについては、買い戻し優勢の動きになるのではないでしょうか。
今後の見通し
これまでのドル円下落最大の要因は、米中貿易摩擦の激化が挙げられますが、ここにきて米中両国から前向きな見解が示されるようになっており、市場にも楽観論が強まっています。そんな中、中国の8月の消費者物価指数(予想:前年比+2.7%)、生産者物価指数(予想:前年比-0.9%)が発表され、結果として、消費者物価指数は+2.8%、生産者物価指数は-0.8%となり、市場予想よりも強い内容になっています。中国の8月の貿易黒字が減少したことで、指標の内容次第では、中国の景況感悪化懸念が強まるかと思われましたが、一旦は米中通商協議へ暗い話題を落とすことはなさそうです。
マーケット全体がプラス材料に包まれている状況ではありますが、気になる点としては、林鄭香港行政長官の逃亡犯条例改正案の撤回にも関わらず収束に向かうことがない香港の抗議デモでしょうか。米政府に介入を要請する事態になっており、トランプ大統領も、状況によっては中国との取引は困難になると警告していることもあり、10月1日の中華人民共和国建国70周年に向けて、この点は注視すべき点かもしれません。
閉会前の英議会にサプライズなし、目先ポンド買い戻しが強まりそうだ
英国議会閉会前に、ジョンソン英首相が再度解散総選挙動議を提出しましたが、市場の予想通り否決となり、可能性としては残っているものの、合意なき離脱への可能性は低下したものと思われます。ここから、英国議会は10月14日まで閉会しますが、目先ポンド買い戻し基調が強まりそうなため、引き続きポンド円ロングについては様子見です。持ち値が130.20円のポンド円ロング、逆指値は利食い確定の130.80円、指値は134.00円での設定です。
海外時間からの流れ
ムニューシン米財務長官が「ロシア製ミサイル購入めぐり、対トルコ制裁を検討」との報道が海外時間にありましたが、影響は限定的で、リスクオンの動きと共に、トルコリラ円は上値は拡大しています。今月末に、トランプ大統領とエルドアン大統領が会談を持つことから、それまでは動きづらいのかもしれませんが、トランプ大統領の気持ち一つでトルコリラ安になる可能性があることは、注意すべきかもしれません。
今日の予定
本日は、英・8月失業率/英・8月失業保険申請件数、加・8月住宅着工件数/加・7月住宅建設許可、米・7月JOLT労働調査などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。