前日の海外市場では、「中国は米国の対中制裁関税の延期と通信大手ファーウェイに対する制裁緩和を条件に、米国の農産物を購入する方針」との報道が伝わり、米中通商協議が前向きに進むとの期待が強まり、ドル円は上値を拡大しました。ドル円は一時107.582円を示現し、本日の東京時間では、昨日の高値を更新しています。また、一部報道で「日銀は18-19日の金融政策決定会合で金融緩和の是非について議論する」との観測報道が出てきたことも、円安の材料となり、ドル円の上値拡大に寄与したと考えられます。

トランプ大統領が、ツイッターで「ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の解任」を表明したことにより、一時リスク回避の動きが強まりましたが、それでも影響は限定的になるなど、米中通商協議への進展期待がリスクオンの動きをサポートしています。ボルトン米大統領補佐官は、保守強硬派で知られており、外交政策では、トランプ大統領とことごとく対立していたことで、またしてもトランプ大統領のスタンドプレーかと思われましたが、ボルトン米大統領補佐官が、自身のツイッターで、辞任は自らの意志だったと表明したことで、影響が軽微なもので済んだのかもしれません。

英国のEU離脱については、英国議会が閉会になったことで、エリザベス女王の施政方針演説が行なわれる10月14日に再開となります。既に、合意なき離脱を阻止する労働党ベン議員の法案は、エリザベス女王の裁可が下りています。同法案は、EUとの離脱合意案が10月19日までに議会で承認されず、合意なき離脱も承認されなかった場合、ジョンソン英首相に対し3ヵ月の離脱延期をEUに求めることを義務付けるものですが、ジョンソン英首相は法を破ってもEUに対し交渉期間の延長は要請しないと発言しており、依然として不透明な部分があります。ただ、現在は議会が閉会していることもあり、ポンドの乱高下は10月に持ち越しになったと考えてよさそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ユーロについては、ドイツの連邦予算の枠外で財政投資を行う計画があると報道されたことで、買い戻しの動きが強まっていましたが、前日は、ショルツ独財務相が「ドイツは経済危機に見舞われても、ドイツ経済に数十億ユーロを投入することで対応が可能」と発言し、景気後退に陥っても大規模な景気刺激策を打ち出す用意があることを示唆しました。これまでのユーロ軟調の動きは、ECBの金融緩和観測に加え、ドイツのリセッション懸念がありましたが、リセッション防止策に加え、リセッションになったとしても、対応策が講じられるということであれば、これまでのようにシンプルなユーロ売りという流れにはならないかもしれません。

また、明日12日に今週の最大のイベントであるECB理事会が行われますが、既に、コンセンサスで10bpのECB預金ファシリティレートの引き下げ、そして資産買い入れ再開(QE)は織り込まれており、これ以上の緩和策をECBが提示するのは難しいのではないかとの指摘もあります。金融緩和ありきでユーロが売られてきたことを考えると、市場の予想通りの緩和内容であれば、自然とユーロの買い戻しが入るのは自然なことなのかもしれません。

ジョンソン英首相の動きは不穏であるが、目先ポンド買い戻し基調に変化なし

英国議会が10月14日まで閉会し、ジョンソン英首相の動きは不穏ではあるものの、一旦ポンドの動きが落ち着き、買い戻し主導の展開になりそうです。「合意なき離脱」の可能性は残っているものの、「合意なき離脱」へのリスクは低下したものと思われます。持ち値が130.20円のポンド円ロング、逆指値は利食い確定の130.80円、指値は134.00円での設定です。

海外時間からの流れ

リスクオンの動きが強まる一方、トルコリラについてはリスクオンの動きから取り残されています。要因としては、明日の政策金利への見通しが、市場コンセンサスでは300bp程度の利下げを見込んでいますが、政府系メディアが500bpの利下げ見通しを報じました。エルドアン大統領が、一桁台までの早急な利下げを表明しているように、大統領の介入姿勢が強まる中で、中銀の独立性への懸念が再び高まっていると考えられます。

今日の予定

本日は、米・8月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。