日本で唯一の経営者専門スーツ仕立て屋“イルサルト”の末廣徳司です。前回、経営者にとってスーツとは何かをお話しさせていただきました。経営者にとってスーツは、ただのスーツではありません。経営者のスーツ、すなわち経営者の装いとは経営理念そのもの。経営理念を身にまとうのが経営者なのです。

“経営者にふさわしい見た目”とは?

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(写真=antondanilenko/Shutterstock.com)

「経営理念」と「経営者の見た目」が合致する会社は、ブランド力や影響力がおのずと強くなります。そして結果として記憶に残る「ブランド」ができあがるのです。では“経営者にふさわしい見た目”のために必要な概念とはなんでしょうか。経営者たるもの、ただ衣服を「着る」のではなく「装う」ことが必要です。今回は「着る」と「装う」の違いについてお話させていただきます。

私たち日本人は、はるか昔より「衣服に魂を込めて装う」文化を大切にしてきました。柔道、弓道、剣道、茶道、華道など古からの武道、芸道の世界では“装うことにより精神力が高まる”という事実があります。実は、私の母方の祖父は神職をしていました。祖父は神職として立場が昇級するにつれて、装う色がより華やかに。そして身にまとう小物類も昇級するにつれて増えていきました。

原始時代において何かを“着る”という行為は、暑さや寒さから“身を守る”という単純な目的だったといわれています。しかし現代では、自分が何者であるのかを相手に分かりやすく伝える“装う”という明確な目的に変化をしたのです。このことを私は神職である祖父の装いから学びました。しかしその変化をしていく時代の針が突如、原始時代に戻る場合があります。