前日については、米中通商協議の進展期待が強まる中、中国政府が、来月予定されている通商協議を前に、米国製品16品目を追加関税の対象から除外すると発表しました。NY時間では、米中の対立懸念後退観測により、NYダウが227ドル高を示現し、ドル円は107.855円まで上値を拡大しました。本日の早朝には、昨日の中国政府の対応に呼応するように、トランプ大統領が関税引き上げを10月1日から10月15日へ延期するとツイートしたことが好感され、ドル円は節目の108.00円を回復しました。関税引き上げの延期報道により、米中通商協議の内容次第では、追加関税の撤廃への期待も高まりそうなため、引き続き、ドル円は底堅い動きになるのではないでしょうか。

また、トランプ大統領関連では、「イランへの経済制裁緩和を検討」との報道も流れ、リスク回避の巻き戻しが強まりました。ただ、カナダドルについては、同報道でWTI原油先物相場が急落し、カナダドル円は一時81.541円まで下落しました。ただ、その後は、本日の注目材料であるECB理事会の動向待ちということもあり、マーケット全体が様子見姿勢を強める動きとなりました。

注目のユーロについては、ECB理事会において、中銀預金金利の0.10%引き下げ、マイナス金利がかかる対象を中銀預金の一部だけにとどめる負担軽減策の導入、フォワード・ガイダンスの強化などが予想されていますが、既に市場予想では2018年12月に終了したばかりの量的緩和政策(QE)の再開も既に織り込んでおり、中銀預金金利の0.20%引き下げも、約45%程度織り込んでいることから、余程の事がない限り市場が期待している程の緩和策をECBは提示できないのではないかとの見方も浮上しています。ただ、前日については、ポジション調整の意味合いもあり、ユーロドルは一時1.09855ドルまで下落しています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

来週予定されているFOMCでは、市場が織り込んでいる利下げ幅は25bpが97.2%、50bpが2.8%になっており、ほぼ25bpの利下げになるものと思われます。トランプ大統領が、FRBのゼロ金利、および、マイナス金利を要求しているとツイートしましたが、あまりにも突拍子のない内容だったこともあり、マーケットの反応はほぼ皆無でした。やはり、マーケットの注目は、米中通商協議へと傾いていると考えてよさそうです。また、ドル円の上昇基調には、18-19日の日銀金融政策決定会合で、黒田日銀総裁がマイナス金利の深堀りを示唆したことも、円安への動きに寄与しているものと思われます。

本日のECB理事会については、これまで出揃った材料を幾つこなせるかどうかという点がポイントになりそうです。既に、中銀預金金利の0.10%引き下げは織り込まれており、焦点としては、量的緩和政策(QE)が開始されるのかどうか。既に、QEについても織り込まれていることから、発表を行ったとしてもサプライズではないのですが、一部ではQEを再開することに疑問を呈する意見が出てきており、社債・国債の買い入れプログラムが再開されなかった場合、されたとしても、規模が小さかった場合などは、一気にユーロが買い戻される可能性があるため、この点には注意が必要でしょう。ユーロについては、下値リスクよりも上値リスクの方に比重が偏っていると考えています。

ECB理事会ばかりに注目が集まっていますが、本日はトルコ中銀政策金利発表も予定されています。Bloombergの市場コンセンサスでは、275bp利下げの17.00%になっていますが、政府系メディアが500bpの利下げ見通しを報じたこと、エルドアン大統領が、一桁台までの早急な利下げを表明していることが報じられており、どの程度の利下げを発表するのかが不透明になってきています。消費者物価指数が15.01%ということもあり、過度な利下げをしてしまうと、実質金利がゼロ、もしくはマイナスになってしまうので、トルコリラ急落の恐れがあります。ただ、市場コンセンサス程度の利下げであれば、トルコのインフレ率抑制部分だけがクローズアップされ、発表後はトルコリラ買い戻しの動きが強まると考えています。

ECB理事会のサプライズに備え、ポンド円利食いの逆指値はもう一段引き上げ

ポンド円が133円台に入ったことにより、利食い目標の134円が射程圏内に入ってきました。ただ、本日はECB理事会が予定されており、状況によっては思わぬ連れ安となることが可能性としては考えられるため、利食いの逆指値をさらに引き上げ、利益を確保した状態でECB理事会の動向を見極めたいと思います。130.20円のポンド円ロング、利食いは134.00円で変わらず、利食いの逆指値は130.80円から132.80円に引き上げます。

海外時間からの流れ

トランプ大統領が、関税引き上げを10月1日から10月15日へ延期したことは、今後の米中通商協議への布石であることが第一ですが、中国が10月1日に建国70年を祝うことを踏まえ、中国に配慮したものと考えられます。この配慮が、のちのち大きな成果をもたらす可能性があるため、今後貿易戦争の緩和が一層強まってくるかもしれません。

今日の予定

本日は、独・8月消費者物価指数(確報値)、ユーロ圏・7月鉱工業生産、トルコ中銀(TCMB)政策金利発表、欧州中銀(ECB)政策金利発表、米・8月消費者物価指数、 米・新規失業保険申請件数、そしてドラギECB総裁の定例会見が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。