注目されていたECB理事会では、10bpの中銀預金金利の引き下げとフォワードガイダンスの変更(政策金利を現行水準に維持する具体的な期間(少なくとも2020年前半まで)を削除)、金利階層化を導入、さらに、量的緩和(QE)では、11月1日から月額200億ユーロの国債買い入れ再開を無期限で決めたと発表しました。発表直後の動きはユーロ買いが先行したものの、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の期間を2年から3年に延長との報道がネガティブサプライズと捉えられ、ユーロドルについては、1.1030ドル付近から1.1070ドル付近まで反発後、1.0920ドル台まで急落しました。

ただ、ドラギECB総裁の定例会見で、「大半の支持を得たため、採決の必要はなかった」と事前報道があったものの、ドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、エストニア中銀総裁が反対する中、ドラギ総裁が強引に押し切る形で決定したことが明らかになりました。ユーロは急騰する動きとなり、ユーロドルでは1.1080ドルを示現するなど、まさに乱高下する動きとなりました。ドラギECB総裁は、10月での理事会で退任となるため、ECBの追加緩和観測が大幅に後退したことがユーロ買い戻しの最大の理由として挙げられます。

また、ECB理事会同様に注目されていたトルコ中銀の政策金利については、現行の19.75%から325bp利下げの16.50%になると発表されました。市場予想の17.00%よりも引き下げ幅が大きくなりましたが、事前に、政府系メディアが500bpの利下げ見通しを報じたこと、エルドアン大統領が、一桁台までの早急な利下げを表明していることが報じられており、一部で予想を大きく上回る金利引き下げになるのではないかとの懸念があったため、政策金利発表後はトルコリラ買いが強まり、トルコリラ円では19円台を回復しました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

米中通商協議については、トランプ大統領が「劉鶴中国副首相の要請により、中国が10月1日に建国70年を祝うことで、『善意(goodwill)の意思表示』として2500億ドル相当に対する25%から30%への5%の追加関税率引き上げを10月15日まで延期する」とツイートしたことからリスクオンムードが高まりましたが、トランプ政権は、中国に限定的な貿易合意案を提示することを協議している模様と一部で報じられており、知的財産や農産物購入に関する中国の約束を取り付ける代わりに、一部関税の発動を延期、あるいは撤回する「暫定合意」の可能性が出てきました。ムニューシン米財務長官は「暫定合意案」はないと発言しているものの、トランプ大統領は「中国との完全な合意を望む。暫定も検討する」と述べており、ここから一気にリスクオンの動きになるかもしれません。

ECBについては、幾つか市場予想を上回る金融緩和策も講じられましたが、あくまでドラギECB総裁が強引に決定したと捉えられており、結果的には、市場が期待するほどの緩和策を提示できなかったと考えてもいいのかもしれません。特に、ドイツ、フランスが反対する中での強硬緩和だったことを考えると、今後の見通しとしては、今以上の金融緩和は当面ないと考えるのが妥当であり、ユーロを買い戻す切っ掛けになったかもしれません。

また、強引に強硬緩和に踏み切ったドラギECB総裁ですが、ユーロ圏経済の景気後退リスクは低いと発言したことに加え、同総裁の会見中に、金融政策がすでに限界に近付きつつあるというドラギECB総裁の認識がみられたことや、財政支援の必要性にも言及したことなどが、金融緩和の心理的効果を減退させたとも考えられます。ユーロについては、悪材料出尽くしと考えられるため、目先は買い戻し基調が強まるのではないでしょうか。

目先はポンドの上値追いよりも、ユーロ反発基調に妙味アリと見る

ECB理事会の動きに連れるようにポンドも下落したため、昨日再設定した利食いの逆指値132.80円がヒットしたため、130.20円でのポンド円ロングは132.80円で利食い、手仕舞となりました。ポンドについては、まだまだ上値余地ありと見ますが、一旦ユーロの買い戻し基調の方が強くなりそうなため、ユーロドル、1.1060でのロング戦略、利食いは1.1100ドルを通過点として考え、1.1180ドル付近、損切りは1.1000下抜けに設定します。

海外時間からの流れ

今までの米中貿易戦争が、嘘のようにトントン拍子で進んでいます。「暫定合意」の可能性すら指摘されており、ドル円を筆頭としたクロス円はまだまだ上昇する動きになりそうです。ただ、「暫定合意」に必要なピースは、ムニューシン米財務長官が「米国は中国が米農産品を購入すると期待している」と発言しているように、米農産品になりそうです。ここで中国側が条件を呑むようであれば、一気にリスクオンの動きが強まるのではないでしょうか。

今日の予定

本日は、トルコ・7月経常収支、米・8月小売売上高、米・8月輸入物価指数、米・9月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。