9月4日、日本たばこ産業(以下、JT) <2914> の株価が一時2179円と7年ぶりの安値を記録した。JTといえば、もともとは国営の旧・日本専売公社から「たばこ事業」を引き継ぎ、1985年に日本たばこ産業として設立、1994年に政府保有株の売出しを経て上場した企業だ。現在も日本たばこ産業株式会社法により、日本国政府の33.35%の株式保有を義務付けている「たばこ」の独占企業でもある。
注目されるのは、その後の展開である。JT株は9月4日の2179円で底を入れたような展開となり、9月11日には一時2343円の高値を記録、この5営業日の上昇率は7.5%に達した。反発の背景にはJTの予想配当利回りが7%を超えたことも一因と見られている。後段で詳述するように高配当銘柄で構成するETF(上場投資信託)の上昇も見られ、ここにきてイールド・ハンティング(利回り追求)の動きが一段と広がる可能性も出てきた。
今回はJTが反発した背景にフォーカスしたい。
世界的低金利でイールド・ハンティング?
JTは世界第3位のたばこ会社で、時価総額は日本企業としては21番目の4兆6660億円となっている(2019年9月11日現在)。また、JTは高配当政策や自社株買いなど株主還元に積極的な企業でもある。JTは今期も500億円または2300万株を上限とした自社株買いを実施している。
2019年12月期の配当も前期の150円から154円に増配する見込みだ。高配当銘柄を好んで投資する人とっては「減配リスク」が最大の警戒要因となるが、JTは今期で実質16年連続の増配となる見通しであり、目下のところ減配リスクは小さいと見られている。
ちなみに、JTは世界的な格付け会社S&P(スタンダード&プアーズ)の長期債務格付けでAA-、同じくムーディーズでA1と評価されている。そんなJTの予想配当利回りが一時7%を超えたのである。世界的な低金利下でイールド・ハンティングの動きが広がる中、JTの配当利回りに着目した買いが集まったとしても不思議ではない。