「戦争だ。人工肉戦争が始まったのだ」電話口でアナリストがそう言った。ウォール街では今、植物などを原材料とする人工肉ビジネスを巡る主導権争いが話題となっている。火付け役となったのは新興企業のビヨンド・ミートで、同社の株価は5月のIPO(株式公開)から7月までの3ヵ月足らずで一時10倍近くに跳ね上がった。筆者が住むニューヨークではファストフードやレストランでの人工肉の品切れも散見されるなど、供給が追いつかない人気ぶりである。
食肉業者からは植物由来の人工肉は本来的に「肉」ではないとして、スーパーマーケット等の食肉コーナーから人工肉の排除を訴える動きも見られるが、一方で急成長の恩恵にあずかろうと新たに参入する食肉業者や小売業者も見られる。大手企業も本格参戦に乗り出しており、その最右翼が米食肉加工最大手のタイソン・フーズだ。
今回は「打倒ビヨンド・ミート」として注目される、タイソン・フーズの最新動向をリポートしたい。
年初からの株価上昇率はS&P500中4位に
タイソン・フーズが発表した2019年4~6月期決算は純利益が6億7600万ドル、1株利益は1.84ドルと前年同期(純利益5億4100万ドル、1株利益1.47ドル)をそれぞれ上回った。また、調整後1株利益も1.47ドルと、ファクトセットがまとめたコンセンサス予想の1.45ドルを上回っている。一方、売上高は108億9000万ドルで、前年同期の100億6000万ドルからは増加したものの、予想の110億4000万ドルには届かなかった。タイソン・フーズは2019年9月期の見通しについて、調整後1株利益を5.75~6.10ドルで据え置いている。ファクトセットの予想は5.90ドルで、強気とも弱気とも言えない水準だ。
とはいえ、株式市場はタイソン・フーズが今年1~3月期に続く2四半期連続で増益となったことを評価、年初からの株価上昇率は8月末時点での71.8%とS&P500採用銘柄の中で4位にランクインしている。