前週末に、サウジアラビアの石油施設が無人機によって攻撃を受けたことから、石油価格が急騰し、今週のオープニングはリスク回避の円買いが強まる地合いからスタートしましたが、トランプ大統領は必要に応じて米国戦略石油備蓄の放出を承認したことを明らかにしたことなどもあり、原油価格の上昇ペースが緩やかになったことで、円買いの動きも小休止し、ドル円は108円台を回復し、クロス円についても、ドル円に連れ高となっています。

経済指標については、米・9月NY連銀製造業景気指数が発表され市場予想4.0に対して、結果は2.0になったものの、マーケットへの影響は限定的となりました。前週金曜日に、米・8月小売売上高が市場予想+0.2%に対して、結果が+0.4%になったことで、6ヵ月連続の増加を記録しました。中国に対する貿易政策が不確実であり、また、企業投資が弱くなっているにもかかわらず、米国の家計が引き続き国内経済を底堅く支えていることを示しており、今週予定されているFOMCでの大幅利下げの可能性は大きく後退していることも、ドル買いをサポートしているものと思われます。恐らく、予防的利下げの25bpの利下げで落ち着くのではないでしょうか。

ジョンソン英首相は、ルクセンブルクで欧州委員会のユンケル委員長とランチ・ミーティングを行い、EU離脱に関して協議しました。ユンケル委員長は、英国がバックストップに関し、代替策を示していないと強調し、ジョンソン首相は、EUとの協議を加速させる必要があると前向きな姿勢を示しつつも、10月31日の離脱期限の延長を要請しない意向を改めて鮮明にしました。英国議会は、すでにEU離脱を延期する法案を可決成立させており、EUとの離脱合意案が10月19日までに議会で承認されず、合意なき離脱も認められなかった場合には、ジョンソン首相は3ヵ月の離脱延期をEUに求めなければならないものの、未だに合意なき離脱を強行しようとする姿勢が不信感を強め、ややポンド売りに傾いています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

18日のFOMCについては、すでに、25bpの利下げがほぼ織り込まれており、50bpの利下げに踏み切るほどの材料もないことから、ドル円に大きな影響は与えない公算です。また、年内あと1回分の利下げ(25bp)もすでに織り込んでいることから、余程のことがない限りは、現在の基調が継続するものと思われます。そういった意味でも、19日に予定されている日銀金融政策決定会合の方に、注目が集まりそうです。

ECBが金融緩和を行い、FRBも予防的利下げを行う予定であり、日銀についても、追加緩和が行われる可能性があります。黒田・日銀総裁は、物価上昇の勢いが損なわれる恐れがあれば、躊躇なく追加緩和する方針を表明しています。ただ、10月の消費税率引き上げの影響に対する警戒感が高まっており、金融機関の経営を圧迫するマイナス金利の深掘りには現時点で慎重な意見もあるため、事前報道にてどのような内容が公表されるのかがポイントになりそうです。因みに、黒田・日銀総裁が示唆しているマイナス金利の深掘りについては、円安要因として考えられています。

20日に予定されている米中次官級通商協議では、トランプ大統領が「暫定合意」を目指していることで、合意に向けた期待感が高まっています。ただ、ムニューシン米財務長官が、為替相場と為替操作も協議すると述べており、状況によっては市場が期待するほどの進展はないかもしれませんが、「暫定合意」に向けて、前向きな内容が発信されれば、一気にリスクオンの動きが強まりそうです。

原油価格急騰は想定外、今は予想以上にドルが強い

1.1060ドルのユーロドルのロング、原油価格急騰に伴い、ドル買いが強まったことでユーロドルは一気に1.1000ドルの損切りラインを下回ってしまいました。米中通商協議の進展期待は、リスクオンの円安の動きが主導していましたが、今はドルが強く、ドル高主導のマーケットになっています。ドル買い主導のマーケットであることを踏まえ、107.90円でのドル円のロング戦略に変更、利食いは108.80円台を視野に入れ、損切りは、107.40円下抜けに設定します。

海外時間からの流れ

本日早朝に、トランプ大統領が「関税障壁について日本と暫定的な合意に達した」「日本と数週間以内に合意手続きに入る」との内容を公表したため、ややリスクオンの動きが強まっています。ある程度織り込み済みの報道ではありましたが、ドルの買い戻し方向については、追い風が吹きやすい地合いになっています。米中通商協議次第ではありますが、状況によっては年末に向けて、円安方向に傾くかもしれません。

今日の予定

本日は、独・9月ZEW景況感調査、米・8月鉱工業生産/8月設備稼働率が予定されています。要人発言としては、ビルロワドガロー・仏中銀総裁、レーン・ECBチーフエコノミスト、クーレ・ECB専務理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。