本日のFOMCでは、今年2度目の利下げが期待されている。ドル円は、現在過去1か月の高値水準で取引されている。典型的には、利下げされた通貨は下落するとされるが、先週では欧州中央銀行(ECB)による積極的な金融緩和政策が発表されてからユーロは反発し始めているように、典型に当てはまるほど相場は単純ではない。

FOMCを前にドル円が上昇しているのは「期待/予想」が主な理由だろう。現在0.25ポイントの利下げが想定されているが、パウエルFRB議長がこれ以上の利下げをする可能性は低いとされている。

7月のFOMC以来、米国は強弱入れ混じる経済指標の結果が窺える。小売売上高の伸びは前回の反動で鈍化、雇用増のペースは減速、ミシガン大消費者信頼感指数は堅調な内容であった。またインフレ圧力は健在で、平均時給の伸びは加速し、サービス業PMIなどは好調である。

先週の8月雇用統計では、予想の15万8000人を下回る13万人増であった。7月の15万9000人を下回っている。一方で、平均時給は7月の0.3%から0.4%となり、伸びは拡大している。この伸びは、過去6か月で最大のペースである。地区連銀経済報告(ベージュブック)によれば、貿易戦争の背景の中、賃金や雇用は滞っておらず、企業の楽観は続いている。今月に利下げが決まったとしても、FRBによる今後の見通しによってドルの下押し圧力は限定的になる可能性がある。

実際、FRBメンバーは金融緩和に対して消極的な姿勢を見せている。FOMCメンバーのボストン連銀のローゼングレン総裁は「FRBは経済指標が堅調である限り、即座に動く必要はない」と述べている。また、NY連銀のウィリアム総裁は、米国経済の基盤は引き続き強いという認識を持っており、米景気減速回避に向けて適切に行動するというコメントに留めている。ダラス地区連銀のカプラン総裁は、FOMCでどのような金融政策をとるかは、その前の経済指標を見極めることが大切であることを強調している。市場は9月18日に0.25ポイントの利下げを見込んでおり、FRBのハト派度合いを見誤ることを恐れているだろう。FRBは9月に利下げしたとしても、声明としてはハト派色は弱い可能性がある。

もし、パウエルFRB議長は利下げするも楽観的な見通しを立てるとすれば、もっとも影響を受けるのはドル円で109円を抜ける可能性もある。EUR/USDは反落し、1.10以下まで下落するだろう。もし、パウエル議長はあいまいでありながらハト派で、12月利下げの可能性を示す場合、ドル円は107円を試すことになるだろう。また、USD/CADは最もショートするのに良い通貨になるだろう。このようにFRBによる経済見通しの変更が、今後のドルの行方を決めるだろう。(提供:Investing.comより)

著者:キャシー リアン