前日のメインイベントであるFOMCでは、市場の予想通り25bpの利下げを行い、1.75%-2.00%にすると発表しました。ここまでは既に織り込まれており、今後のFOMCメンバーの見通しが重要視されていましたが、2019年に絞ると、17名のメンバー中7名が年内の利下げを支持しましたが、FOMCメンバー内でも意見が分かれており、方向性を示すものにはなりませんでした。ただ、2020年の見通しでは、追加利下げを見込んでいないことが明らかとなり、あくまで「予防的利下げ」の範疇を出ないとの見解が強まり、発表直後はドル買いが強まり、ドル円は一時108.475円まで上値を拡大しました。
また、パウエルFRB議長の定例会見では、「経済が弱まれば、さらなる連続利下げが必要になる可能性もある」との指摘もありましたが、「我々が十分だと考えた時点で利下げを停止する」との見解を示しており、今後の方向性については、FOMC声明同様に明言はしませんでしたが、マーケットはややタカ派寄りの内容だと解釈したものと思われます。今後、米中通商協議が「暫定合意」に向けて進むようであれば、さらに、追加利下げ観測が後退し、ドル買いが強まるのではないでしょうか。
資源国通貨関連では、サウジアラビアの石油施設は先週末に無人機の攻撃を受けましたが、サウジアラムコは重要生産施設のうちほぼ40%の生産能力を復旧させたと公表しており、原油価格が安定しています。トランプ大統領が「48時間以内にイランへ追加制裁を課す」と発言しているものの、ある程度は織り込み済みの内容であるため、問題の長期化は避けられたのではないでしょうか。
今後の見通し
FOMCを無難に通過したことにより、次は本日の日銀金融政策決定会合が注目されそうです。米中通商協議が進展していることが円安に傾いた一番の材料ですが、黒田日銀総裁がマイナス金利の深堀りを示唆したことも、円安基調を強めた要因の一つではあります。FOMCもそうですが、ECBも追加緩和に舵を切ったことで、日銀が緩和姿勢を強めやすい状況であることは確かです。ただ、10月1日からの消費増税に加え、日米通商協議が本格化してくることなども含め、様子見の現状維持になるのではないかとの見方も強まっています。ただ、現状維持が発表されたとしても、ドル円は108円を割り込んでも、一時的な動きになるのではないでしょうか。
黒田日銀総裁が示唆したマイナス金利の深堀りを実行しても、円安材料である一方、金融株にマイナスの影響を与え、為替市場はこれまでの金利差との相関を離れて円高方向で反応する可能性があります。また、イールド・カーブの形状に対してのアプローチでも、超長期金利を更に押し上げる方向に何らかの方策を打ち出してきても、円高材料ではあるものの、金融株を押し上げることによって、円高圧力が相殺される可能性も考えられます。メインシナリオとしては、一旦棚上げとし、10月の金融政策決定会合で具体策を示すというところに落ち着きそうです。
本日は、金利発表が相次ぎ、日銀の他にも、スイス国立銀行政策金利発表(-0.75%に据え置き予想)、英中銀(BOE)政策金利発表(0.75%に据え置き予想)、南ア中銀政策金利発表(6.50%に据え置き予想)が予定されています。BOEに関しては、今後のブレグジット展望が不透明なこともあり、具体策を示すことは非常に難しいため、9対0の全会一致で政策変更なしで落ち着くのではないでしょうか。
FOMCはメインシナリオとなった、ドル円はじり高を想定
注目のFOMCは25bp利下げのメインシナリオ通り、FOMCメンバーの見通しも市場コンセンサスから大きく乖離することがなかったため、ドル円はやや上向きにバイアスがかかっています。本日の日銀金融政策決定会合で、サプライズがあれば状況は一変しますが、基本的にはドル円のじり高を想定しています。107.90円のドル円ロング、利食いは108.80円台を視野に入れ、損切りは、107.40円下抜けに設定します。
海外時間からの流れ
FOMC後のパウエルFRB議長の定例会では、今回の利下げは引き続き「サイクル半ばの調整」として強調されたことで、あくまで今後の利下げは経済の鈍化がセットでないと成立しないような印象を与えました。ただ、 「先行きに関する不確実性は残っている」 として、「影響を監視し続け」、「適切に行動する」とのフォワードガイダンスは変更しなかったことにより、市場の混乱を極力避けたことで、値動き的には一番動きづらい結果に落ち着いた形になっています。
今日の予定
本日は、日銀金融政策決定会合、スイス国立銀行政策金利、英中銀(BOE)政策金利、南ア中銀政策金利の金利発表の他に、豪・雇用統計、英・8月小売売上高指数、米・9月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数、米・第2四半期経常収支、米・8月景気先行指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、黒田・日銀総裁の定例会見、カーニー・英中銀総裁の定例会見の他に、クーレ・ECB専務理事、レーン・フィンランド中銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。