前日の動きとしては、一部では黒田日銀総裁が示唆したマイナス金利の深堀りが期待されたものの、日銀金融政策決定会合では、景気に対する判断も前回と殆ど変わらず、フォワードガイダンスについての変更もありませんでした。ただ、声明文では、「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断している」と表現し、「次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく」と付け加え、次回会合での追加緩和に対する期待を持たせたことにより、過度な円高には向かいませんでした。

日銀の他に、幾つかの主要金利発表が予定されていましたが、全てスイス国立銀行政策金利発表(-0.75%に据え置き)、英中銀(BOE)政策金利発表(0.75%に据え置き)、南ア中銀政策金利発表(6.50%に据え置き)という結果になり、BOEに関しては、政治判断の方向性が決まるまではほぼ様子見との見解が予想されていましたが、これまでよりはハト派寄りのスタンスが示されました。議事要旨では、追加的な不確実性と弱い成長率、および国内インフレ率の低下を懸念していることが示唆され、ブレグジット進展関係なく中期的に金融緩和の必要性を示しました。

海外時間では、サウスチャイナモーニングポスト紙が米国高官の話として「トランプ大統領は中国との貿易協定が迅速に合意されない場合、貿易摩擦を激化する用意がある。低水準の対中制裁関税を50%や100%に引き上げる可能性もある」と報じたことにより、ドル円は107.80円台まで下押しする場面がありましたが、「暫定合意」を目指す、米中通商協議の結果待ちの動きが強く、ドル円は再び108円台を回復する動きになりました。先週から今週にかけてのビックイベントを多数通過してきたことから、材料出尽くし感が強まっているため、ドル円については、一旦108円を中心とした小動きとなる可能性が高そうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国のEU離脱進展については、ユンケル欧州委員長が「アイルランド国境問題の解決策『バックストップ』の主要目的を達成できるのであれば、どのような手段でも構わない。10月31日までに英とEUは合意できると思う」との発言を行ったことから、ポンドドルでは1.2480ドル付近から1.2560ドル付近まで上昇する場面がありました。ここにきて、双方の歩み寄る動きを見せてきており、ポンドを買い戻す材料としては、これ以上ない状況になっています。ただ、英国の最高裁は2-3日中に、ジョンソン首相の議会閉鎖が合法であるかどうかの判断を示す予定であり、ジョンソン政権は、最高裁が政府の方針に反対する判断を示した場合には、再度の議会閉鎖も辞さないと言われており、状況によっては、国内のゴタゴタによる不信感により、ポンドは一旦売られる場面があるかもしれません。

昨日から本日まで米中次官級通商協議が開催されており、基本的には様子見の動きがメインになりそうですが、トランプ大統領が明言したイランに対する経済制裁は、本日20日が期限となっています。ある程度は織り込み済みだと考えられますが、ザリフ・イラン外相が、米国ないしサウジアラビアがイランを攻撃すれば「全面戦争」に至るだろうと警告しているように、このような結果となれば、リスク回避の動きが主導しそうです。また、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の準備をしているとの報道があり、トランプ大統領がこの件について、どのような対応をするのかも週末の懸念事項になりそうです。トランプ大統領は米国に届かない短距離ミサイルは許容する方針ですが、SLBMについては、米国に届くミサイルであることから、トランプ大統領のツイート次第では、リスク回避の動きがあってもおかしくないでしょう。

日銀は現状維持だが、次回会合の緩和示唆で下値は限定的

黒田日銀総裁が示唆したマイナス金利の深堀りによって円安に傾いたポジションが解消されたものの、次回会合での緩和を示唆したことにより、ドル円の下値は限定的になっています。108.00円の水準を下抜けてしまいましたが、大きく下落する動きにはなっていないため、107.90円のドル円ロングはこのまま維持したいと思います。利食いは108.80円台を視野に入れ、損切りは、107.40円下抜けです。

海外時間からの流れ

本日の東京時間では、複数の金融機関からRBAの利下げ前倒し観測が相次いでおり、豪ドルの上値が重くなっています。ほぼ据え置き予想であった次回の政策金利予想でも、25bpの利下げを予想するエコノミストが増えており、予想平均値は0.88%になっています。今後、さらに利下げ観測が意識されてくるようであれば、豪ドルはもう一段安を試すかもしれません。

今日の予定

本日は、独・8月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。