前日発表された独・9月IFO景況指数については、市場予想94.5に対して結果は94.6、既にドイツを筆頭とした欧州圏のPMIが軒並み悪化していたこともあり、大幅な悪化が懸念されていたものの、市場予想と変わらない数字であったことで、ユーロはやや反発傾向を強めました。ただ、「ドイツの景気下降は一服した」とみる一方で、「製造業の業況は下降の一途をたどっている」とも指摘されており、ドイツ経済の回復見通しは依然として不透明であることが浮き彫りとなりました。ドイツ経済の悪化がユーロの重しとなる状況は、当面意識せざるを得ないと考えられます。

英国では、ジョンソン英首相が、合意のないままでも10月31日にEUを離脱するために議会を閉会としていましたが、英国の最高裁は閉会は無効であるとの判断を示しました。議会のバーコウ議長は、25日午前11時半に議会を再開すると述べており、ジョンソン英首相は完全に四面楚歌に陥ったと考えられます。既に野党からは、同首相の辞任要求も出てきており、ここからBrexit問題については、前進しそうです。今回の最高裁の判決が有効であれば、同首相の思惑通りに事が進むと市場が判断し、ポンド売りになったと考えられますが、ようやく英国議会はスタート地点に戻ったという感じでしょうか。

一方、トランプ大統領は国連総会で演説し、中国を痛烈に非難しました。「中国は2001年の世界貿易機関(WTO)加盟時に示した確約を順守していないばかりか、米国やその他の国の雇用を大量に奪い、略奪的な通商慣行を実施ている」と指摘し、「改革の確約を反故にしただけでなく、大規模な市場障壁、手厚い政府補助、為替操作、強制的な中国への技術移転、知的財産権の侵害などに依存する経済モデルを構築した」と述べました。この発言内容を受けて、米中通商協議進展期待が後退したとの思惑が強まり、ドル円は円高方向にやや傾くことになりました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

上述した内容より、一番衝撃だったのがトランプ大統領の弾劾リスクでしょうか。内容としては、米大統領選の有力候補とされているバイデン前副大統領に打撃を与える目的で、トランプ大統領がウクライナに圧力をかけたという疑惑が生じています。ただ、トランプ大統領はこうした疑惑を再び否定しているものの、ワシントン・ポストは、ペロシ下院議長が、下院でのトランプ大統領の弾劾訴追に向けた審議の開始を正式に表明すると伝えています。

一時ドル円が107円割れの水準に達するほどドル売り材料となった同大統領の弾劾問題ですが、今後、弾劾調査がどのように進むかはまだ未知数ですが、少なくともリスクオンになる材料ではないことで、ドル円の上値を抑える要因になりそうです。再び政治リスクがマーケットの中心になってきそうですが、弾劾決定となれば、影響は計り知れないものになるため、続報には細心の注意が必要になりそうです。

日米通商協議では、本日中に首脳間で合意を目指しているとも言われています。日米間の合意ですが、自動車関税の撤廃を明示しない方針で、両国間の国内向けの説明が異なる可能性も指摘されていることで、両国間の合意内容を読み解く必要がありそうですが、基本的には既に報道されている内容から大きく乖離する可能性は低く、マーケットインパクトという点ではそれほど大きなものにはならない公算です。

まずは政治的リスクの見極め

再び政治リスクがマーケットの主役になってきていることから、今後の動きが読みづらい展開ですが、当方のポジションについては、逆指値ギリギリで反発しており、手仕舞いにはなっていません。昨日の動きがオーバーシュートであれば、ここから反発しそうですが、今後どのようなヘッドラインがでてくるのか不透明なため、まずは次のプライスアクションの見極めを行います。107.40円付近でのロング、108.50円付近を利食いポイントとして考え、106.90円下抜けで損切りです。

海外時間からの流れ

NZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会が政策金利を発表し、結果は市場予想通りの1.00%の据え置きとなりました。0.50%と大幅に利下げをした直後の会合であるため、市場ではネガティブサプライズ警戒がありましたが、発表直後はNZドルが買い戻されています。

今日の予定

本日は、米・8月新築住宅販売件数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、クーレ・ECB専務理事、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。