前日については、米国の司法省が、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が7月に行った電話会談の記録を公表し、その結果、民主党のバイデン前副大統領の息子に絡む疑惑を調査するようゼレンスキー大統領に依頼していたことが判明しました。民主党が弾劾に向けた動きを強めているものの、会話内容を表明したこともあり、実際に弾劾される可能性は極めて低いとマーケットは判断したようです。

また、下院は民主党が多数を握っているものの、上院では共和党が多数となっていることで、弾劾される可能性が低いと考える材料になります。上院で弾劾を可決するためには、三分の二の賛成票が必要ですが、そのためには共和党から多数の造反者が出る必要があるため、現実的には難しいと考えられます。

ドル円を押し上げる材料としては、日米貿易協定が最終合意し、安倍首相とトランプ大統領が合意文書に署名をしたことが挙げられます。日本は牛肉、豚肉、小麦の市場を環太平洋連携協定(TPP)水準まで開放することで合意をしたと報じられています。懸念点としては、以前の交渉でTPPと同様に38.5%の関税を9%まで段階的に下げることが報じられていましたが、具体的なスケジュールがまだ判明していない点ですが、目先の懸念点はとりあえずクリアできたと考えられます。トランプ大統領は、中国との貿易協議の早期決着を示唆する発言をしたこともあり、米中通商協議が「暫定合意」でまとまれば、一気にリスクオンに傾くと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国の最高裁が、ジョンソン英首相の議会閉会の決定は違法であるとの判断をしたため、英議会は通常の議会に戻りました。ジョンソン英首相は、野党議員に対し、政権を奪還するか、あるいは、合意なきEU離脱を見守るか、の二者択一であると迫るなど、この状況下においても、進展期待が見えず、自身の不信任動議を提出するなど、EU離脱問題の行き詰まりを打開するために総選挙を実施するように挑発する場面もありました。

英労働党のコービン党首は、「合意なき離脱」の回避が最優先事項であり、このことが可能となってからジョンソン首相の不信任動議を提出すべきだとの認識を示しました。また、合意なき離脱が回避されれば、総選挙を実施してもよいとの見解を述べていますが、この一連の流れは、英国議会閉会前と何ら変わらない状況であり、先行き不透明感が強まっており、ポンドは上値の重い動きになりました。

議会が再開されたことは、非常に喜ばしいことではありますが、与党・野党ともに新しいアイデアを提供できなかったことで、進展期待後退が顕著になっています。ジョンソン英首相が、本日早朝に「バックストップ策の代替協議は重要な局面」「EUはバックストップの代替案を受け入れる」と発言しているものの、マーケットの反応は限定的であり、同首相の影響力の低下も見受けられます。やはり、バックストップ代替案が解決しない限り、ポンドが本格的に買い戻されることはないのかもしれません。

トランプ大統領は弾劾はないと考えられそうだ

トランプ大統領の弾劾については、目先リスクが後退したと考えられるため、ドル円の買い戻しが強まっています。また、日米通商協議の署名、米中通商協議への進展期待も、ドル円の上昇をサポートしそうです。当方の107.40円付近でのロング、108.50円付近を利食いポイントとして考え、106.90円下抜けで損切り設定は変更なしです。。

海外時間からの流れ

トルコリラについては、ウイサル・トルコ中銀総裁が「輸出の強いトレンドやインフレの改善は継続している」と述べるなど先行きに楽観的な見解を示したことで、リラの買い戻しが強まりました。ただ、一部では「米・トルコ首脳会談は中止の可能性」と報じられており、中止となった場合、理由がネガティブなものであれば、リラ売りとなる可能性があるため、この点は注意が必要になりそうです。

今日の予定

本日は、米・第2四半期GDP(確報値)、米・新規失業保険申請件数、メキシコ中銀政策金利発表などの経済指標が予定されています。要人発言としては、カプラン・ダラス連銀総裁、ドラギ・ECB総裁、カーニー・英中銀(BOE)総裁、カンリフ・英中銀副総裁、クラリダ・FRB副議長、デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。