2019年4月以降、ソニーの株価は堅調に推移している。しかし現在の株価上昇は、昨年10月からの株価下落に対する「戻し」と考えるのが妥当だ。
ソニー株は2013年以降、業績回復とともに長期に渡る上昇トレンドが続いた。しかし、新たな上昇トレンドに入るためには、昨年9月に突破できなかった7,000円を明確に上回る必要があるが、ソニー株にとって7,000円は重要な節目の株価として機能しており、突破は容易ではないだろう。
ソニー株の過去の値動きを業績推移とともに振り返り、ソニー株価にとって7,000円が重要な節目と考えられる理由を解説する。
ソニーの最近の株価動向
2019年4月以降、ソニー<6758>の株価は堅調に推移している。4月の4,711円からスタートし、9月に入ると6,000円を明確に突破した。
ソニー株は、2018年9月に7,000円に迫ったものの、7,000円に到達することなく下落した。足元の株価上昇により、ソニー株は昨年の高値6,973円に近づきつつある。
ソニー株は、2012年末から息の長い上昇が続いている。下値を切り上げながら上昇トレンドを描いており、今後株価が7,000円を超えてさらに上昇すれば、上昇トレンドの継続が確認されることになるだろう。
これまでの株価上昇はITバブル期の高値16,950円からの回復にあたる
ソニー株は、ITバブル期の2000年3月に16,950円という上場来最高値を付けた。1999年は4,000円台だったソニー株は、1年で4倍以上になったのだ。そして、ソニー株はITバブル期に国内を代表するハイテク銘柄となった。
しかし、その後ITバブルの崩壊とともに株価も下落し、2012年11月まで長期に渡って下落した。その途中の2003年4月には、ソニーショックと呼ばれる連日のストップ安を伴う大幅下落にも見舞われた。
ITバブル崩壊によってソニー株は急落したが、2012年末からの株価上昇によって徐々に回復している状態だ。
アメリカでは、ITバブル期の株価水準を回復し、さらにそれを上回るハイテク株も存在するが、それらと比べるとソニー株の株価の戻りは限定的と言える。ITバブル期には世界から評価されたソニー株だが、マイクロソフトやアップルなど、すでにITバブル期の株価水準を超えた海外ハイテク銘柄を見ると、ソニー株の株価は見劣りすると言わざるを得ない。
過去にソニー株が大きく変動した要因
ITバブル崩壊による急落後長らく低迷したが、2012年末頃から株価は上昇に転じている。ソニー株の上昇は、以下の要因が考えられる。
1 アベノミクス相場による日本株全体の上昇
2 ソニー自体の業績改善
①アベノミクス相場による日本株全体の上昇
2012年11月に解散総選挙が行われ、自民党が政権に復帰し第2次安倍内閣が発足した。民主党政権時、日本経済はは円高に苦しんだが、安倍内閣は経済重視の方針を見せ、その政策はアベノミクスと呼ばれるようになった。
株式市場はアベノミクスを好感し、2012年末頃から「アベノミクス相場」と呼ばれる株価上昇がスタートする。
ソニー株も、アベノミクス相場に乗って上昇。途中で息切れした銘柄も多かったが、ソニー株は2015年から2016年に戻しはあったものの、概ね上昇トレンドを維持して、2018年9月には7,000円目前まで上昇した。
上昇トレンドの中盤以降は、ソニー自体の業績回復も株価上昇を後押しした。しかし、ソニーの株価上昇のきっかけは、アベノミクス相場であることは間違いない。
②ソニー自体の業績回復
ソニーの業績は、以下のように推移してきた。
2014年3月期 売上高7兆7,673億円、営業利益265億円、当期純利益▲1,284億円
2015年3月期 売上高8兆2,159億円、営業利益685億円、当期純利益▲1,260億円
2016年3月期 売上高8兆1,057億円、営業利益2,942億円、当期純利益1,478億円
2017年3月期 売上高7兆6,033億円、営業利益2,887億円、当期純利益733億円
2018年3月期 売上高8兆5,440億円、営業利益7,349億円、当期純利益4,908億円
2019年3月期 売上高8兆6,657億円、営業利益8,942億円、当期純利益9,163億円
2020年3月期(予想) 売上高8兆6,000億円、営業利益8,100億円、当期純利益5,000億円
2014年3月期、2015年3月期と2期連続最終赤字を計上し、経営的には非常に苦しんだソニーだったが、その後は業績を回復している。
営業利益の推移を見ると、2期毎にステージが上がっていることがわかる。
2014年3月期・2015年3月期 営業利益1,000億円未満
2016年3月期・2017年3月期 営業利益3,000億円弱
2018年3月期・2019年3月期 営業利益7,000~9,000億円
株価は様々な要因で変動するが、業績は最も重要な要素の一つだ。ソニーは2016年3月期から当期利益が黒字転換し、2017年3月期はほぼ横ばいとなったものの、その後は利益拡大が続き、2019年3月期の当期利益は、1兆円に手が届きそうだった。
アベノミクス相場が一段落した後も、ソニー株が着実な上昇トレンドを維持できたのは、ソニー自体の業績向上によるところが大きい。
2020年3月期は、売上高は横ばいだが減益を予想している。これまで順調に業績を伸ばしてきたソニーだが、現在は踊り場を迎えている状況。業績を見る限り、今後のソニー株の上昇は一筋縄ではいかないだろう。
ソニーの株価動向を予想するポイント
足元では上昇を続けているソニー株だが、今後の株価動向を予想する上では、2018年9月の高値6,973円を超えて7,000円台に乗ることができるかどうかがポイントになる。
昨年9月は、7,000円を目前にして反落した。今回7,000円超えが確定すると、株価は新たな上昇トレンドに入ると言えるだろう。
7,000円付近はソニーにとって、過去3回反転していることに加えて、フィボナッチ級数の観点からも大きな節目と言える価格帯である。
①7,000円付近で過去3回反転したソニー株
ソニー株はITバブル崩壊以降、7,000円付近が過去3回レジスタンスラインとして機能している。2002年5月、2007年5月、2018年9月のいずれも、7,000円付近で天井を形成した。7,000円付近でフタをされているような状態だ。
過去3回も7,000円付近で反転したことで、ソニーの7,000円という株価は多くの投資家が意識するようになった。よって7,000円を明確に上抜けした場合、売り方の損切り注文が相次いで、勢いのある値動きが生じる可能性がある。
②高値と安値のフィボナッチ38.2%が7,000円に該当
株や為替のチャート分析(反転場所を探るなど)では、フィボナッチ級数が利用されることがある。ITバブル以降のソニー株の高値と安値の間の、フィボナッチ級数(利用頻度が多い38.2%、50.0%、61.8%)と重なる株価は以下のとおりだ。
・100% → 16,950円(高値)
・61.8% → 10,770円
・50% → 8,861円
・38.2% → 6,952円
・0% → 772円(安値)
7,000円は、概ねフィボナッチ級数38.2%に該当する。フィボナッチ級数38.2%では、相場が反転するケースが多く、実際にソニー株は7,000円付近で3回も反転している。
過去に反転したことがあるフィボナッチ級数を株価が超える時は、比較的大きな値動きが発生しやすい。
ソニー株にとって7,000円という株価水準は、過去に3回も反転したレジスタンスラインに該当するだけではなく、高値と安値間のフィボナッチ級数38.2%の値にも該当しているのだ。
よって、今後ソニー株が7,000円を突破してさらなる上昇トレンドを形成するかどうかは、ソニー株の過去の値動きから見ても注目に値するポイントと言える。
ソニー株を買うには
ソニー株の9月20日(金)終値は、6,411円。100株単位で取引される銘柄なので、最低投資金額は約60万円だ。
ソニー株の購入にあたってし、手数料を抑えて購入できる証券会社は以下のとおりだ。
・DMM.com証券 367円
・ライブスター証券 367円
・GMOクリック証券 479円(税込)
・SBI証券 525円
・楽天証券 525円
・岡三オンライン証券 648円
※いずれも税込価格
DMM.com証券またはライブスター証券を利用すれば、手数料367円でソニー株を購入できる。以下、GMOクリック証券470円、SBI証券・楽天証券525円、岡三オンライン証券648円と続く。
なお、SBIネオモバイル証券やLINE証券を利用すると、1株単位(7,000円前後)でも購入できる。
まとめ
ソニーの株価は、アベノミクス相場と業績回復が重なり、2013年以降息の長い上昇が続いている。ただし、足元の株価は上昇基調にあるものの、昨年9月の6,973円に対する戻しの域を出ていない。また回復が続いた業績も、現在は踊り場にある。
ソニーの過去の株価チャートを振り返ると7,000円がレジスタンスラインであり、またフィボナッチ級数の観点からも、7,000円が重要な節目価格として機能していることがわかる。
ソニー株は、重要な節目であり投資家も注目する7,000円を超えて、ITバブル崩壊後の新しい上昇トレンドを形成するのだろうか。今後のソニー株の動向に注目したい。