キーエンスはFAセンサーなどの検出・計測制御機器の大手であり、高収益・好財務の超優良企業として有名だ。キーエンスの株価は常に割高と言われている中、過去10年で6倍以上になっている。キーエンスは典型的な成長株であり、注目している個人投資家も多いだろう。
ところが、キーエンスの株価は2018年以降、一進一退の攻防が続いている。買い時のようにも見えるが、今後キーエンスの株価はどうなるのだろうか。本記事では、キーエンスの株価動向を振り返るとともに、今後の株価を見通すためのポイントについて解説していく。
キーエンスの最近の株価動向
キーエンスの過去10年の株価チャートは、以下のとおりだ。
キーエンスの株価は長期的にみると、右肩上がりのきれいなチャートになっている。今後も株価は上昇すると予想する投資家も多いだろう。
しかし、2018年以降のキーエンスの株価は一進一退しており、2年近く明確な上昇は見られない。キーエンスの業績と株価の関係から、その理由を探っていこう。
過去のキーエンスの株価変動要因は何だったのか?
過去のキーエンスの業績と株価の関係を見てみよう。注目したいのは、株価が大きく動いたリーマンショック(2008年)前後とチャイナショック(2015年)前後だ。
リーマンショック前後の株価変動と業績
2008年9月のリーマンショック前後における、キーエンスの株価は以下のとおりだ。
キーエンスの株価は2007年に一時18,000円を超えていた。しかし、2007年8月に世界の金融市場を震撼させたパリバショック以降、キーエンスの株価は徐々に下落していった。
そして、リーマンショックにより世界的な金融危機に陥った2008年後半に、キーエンスの株価は急落し、一時は7,000円近くになった。2年も経たないうちに約60%も下落したことになる。
一方、リーマンショック前後のキーエンスの業績は以下のとおりだ。
2008年3月期を頂点として、2009年、2010年と急激に売上高・営業利益が減っている。2008年~2010年の2年間で営業利益がほぼ半分になったことからも、リーマンショックの影響の大きさがうかがい知れる。
優良企業として有名なキーエンスだが、同社の業績は景気の影響を受けやすいことがわかる。
チャイナショック前後の株価変動と業績
次に、2015年8月のチャイナショック前後における、キーエンスの株価を見てみよう。
チャイナショック(2015年8月)前のキーエンスの株価は約21,000円だったが、2016年6月には15,000円を割っている。
この時の下落率は約30%である。リーマンショックの時ほどではないが、普通の投資家にとっては辛い下落だっただろう。
チャイナショック前後のキーエンスの業績は、以下のとおりだ。
リーマンショックの時と違って、2015年、2016年ともに増収増益だった。しかし、それまでの成長が鈍化し、成長株としての期待感が薄れてしまったことが株価が下落した原因と考えられる。
以上のことから、キーエンスの株価には以下の特徴があることがわかる。
・キーエンスは景気敏感株である
・業績悪化(減収・減益)だけでなく、成長率の鈍化によっても株価が下落する(成長株でよくみられる特徴である)
キーエンスの株価動向を分析する際のポイント
キーエンスのようにオンリーワンで代替のない高付加価値製品を提供する企業は、一般的に不況に強いと言われている。
しかし、キーエンスの製品は工場や研究開発の現場で使われるものが多く、不況になると企業は一斉に設備投資予算を削減するため、キーエンス製品の需要は減ってしまう。したがって、キーエンスの業績は企業の設備投資予算に左右されやすいということになる。
キーエンスの株価動向を分析する際は、企業の設備投資の動向にも注目する必要があるだろう。
企業の設備投資の状況
企業の設備投資の動向を調べる際は、財務省の法人企業統計が役に立つ。たとえば、2016年以降の全産業設備投資(前月比)は以下のとおりだ。
2018年までは、好調な景気を反映して設備投資は比較的活発だった。しかし、米中貿易摩擦が激化して景気の先行き懸念が強まった2019年は、急激に落ち込んでいる。
キーエンスの最近の四半期業績は、以下のとおりだ。
キーエンスの営業利益は、大きく悪化しているわけではない。しかし、2018年以降は営業利益の前年同月比が徐々に下がっており、2018年4Q以降はマイナスに転じている。
2018年以降のキーエンスの株価が一進一退を繰り返しているのは、日本企業の設備投資の減少による業績低迷を先取りしていたためと考えられる。
今後のキーエンスの株価動向について
キーエンスの株価は、企業の設備投資の増減によって変動する。設備投資需要は、景気に左右される。現在は、米中貿易摩擦によって世界中で景気悪化が懸念されているため、その行方にも注目したい。
今後のキーエンスの株価動向については、以下の2つのパターンが考えられる。
1.もし、このまま米中貿易交渉が進展せず、景気悪化が進行するなら、キーエンスの株価はさらに下がると予想される。
2.米中が何らかの合意をできれば、状況は一変する。景気回復の期待が高まり、徐々に設備投資も増えるだろう。すると将来の設備投資増を織り込んで、キーエンスの株価も上昇する可能性が高い。
米中貿易交渉は、これまでも二転三転している。政治の行方を予想するのは難しいため、キーエンスの株価動向は予想しにくいと言わざるを得ない。
しかし、事前に複数のシナリオを想定しておくと、いざという時にチャンスをつかみやすいはずだ。
キーエンスの株を購入するには
キーエンスの株価は、66,490円(2019年9月12日終値)。1単元は100株なので、最低投資金額は約665万円だ。
キーエンス株の購入にあたって、手数料を抑えて購入できる証券会社は以下のとおりだ。
ライブスター証券 800円(税抜)
DMM.com証券(DMM株) 800円(税抜)
GMOクリック証券 834円(税抜)
SBI証券 921円(税抜)
楽天証券 921円(税抜)
岡三オンライン証券 2,700円(税抜)
中堅ネット証券のライブスター証券とDMM.com証券が最安であり、次にGMOクリック証券、SBI証券、楽天証券が続く。中堅ネット証券は、大手に比べて若干安いと言えるだろう。
キーエンス株に投資するなら、単元未満株を売買できる証券会社がおすすめ
キーエンス株を1単元買うには、約665万円を用意しなければならない。富裕層なら問題ないだろうが、一般投資家にとっては準備しにくい金額だ。
キーエンスのような「値がさ株(1株あたりの金額が高い銘柄)」を買う時は、単元未満株を売買できる証券会社を利用するといい。1株買うだけなら約6.7万円を用意すればいいので、富裕層でなくても問題なく投資できるだろう。ちなみに、単元未満株でも配当はもらえる。
単元未満株を購入したいならSBI証券やマネックス証券、SBIネオモバイル証券などを利用するといい。
各証券会社の単元未満株の売買手数料は、以下のとおりだ。
・SBI証券 約定代金の0.5%(税抜)
・マネックス証券 約定代金の0.5%(税抜)
・SBIネオモバイル証券 月間合計約定代金50万円まで200円(税抜)
単元未満株の手数料は、単元株よりやや割高になることが多い。しかし、1株から少額で分散投資できるのが魅力だ。キーエンスのような値がさ株を買う時などに、上手に活用したい。
キーエンスの今後の株価見通しのポイント
本記事では、キーエンスの株価動向を振り返るとともに、今後の株価を見通すためのポイントについて解説した。
キーエンスは高収益・高成長の優良株として有名である。しかし、同社の製品需要は企業の設備投資の動向に左右される。そのため、同社の業績と株価は景気に敏感に反応するという特徴がある。
今後のキーエンスの株価は、米中貿易摩擦の行方に左右されることになるだろう。同社への投資を検討する際は、米中貿易交渉の進展に注目してほしい。
文・ロイナビ(長期投資サイト「ロイナビ」 管理人)