前週末は、中国の米製品購入拡大の動きや10月の閣僚級協議が予定通り開催される見通しなどが報道され、米中通商協議進展期待が強まったことから、ドル円は108円台を回復し、一時108.178円まで上値を拡大しました。ただ、その後のヘッドラインにて、「トランプ政権は米証券取引所に上場する中国株の廃止を検討」「米投資家の対中投資を制限するための方策を検討」などと複数のメディアが報道したことを受け、米中通商協議への懸念に加え、金融市場での先行き不透明感が意識され、ドル円は一時107.80円付近まで下落する場面がありました。その後は、じりじりと買い戻しの動きが優勢となりましたが、続報がより詳細な内容で出てきた時は、リスク回避の材料として十分認識されそうです。

地政学的リスクに目を移すと、「サウジアラビアがイエメンの親イラン武装組織フーシ派による部分的な停戦要請を受け入れ」との報道でリスクオンの動きが強まる場面がありましたが、週末の報道では、「イエメンの親イラン武装組織フーシ派がサウジアラビア国境での衝突でサウジアラビア兵を拘束」とのヘッドラインが流れており、中東の地政学的リスク後退への道のりはまだ遠い事が示されました。同問題においては、為替市場への影響は限定的なものになっていますが、問題が長期化するようであれば、否が応でもリスク回避の動きが強くなってきます。ジュベイル・サウジアラビア外相は、14日の石油施設へのミサイル攻撃はイランによる「戦争行為」であると批判し、調査が完了した段階で軍事行動を検討すると警告しており、引き続き、円高材料であることには違いなさそうです。

欧州通貨では、ラウテンシュレーガーECB専務理事の突然の辞任を受け、ECB内部で深刻な内部分裂が起きているのではないかという観測が広がっていましたが、レーン専務理事兼チーフ・エコノミストは「そうした深刻な分裂は生じていない」と市場の思惑を一掃しました。ユーロドルについては、一時1.09ドルを割り込む水準までユーロ売りが強まりましたが、1.09ドルのラインは死守されており、1.09ドル半ば付近での動きが中心になっています。テクニカル的には、1.09ドルを下抜けると、下落基調が強まりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国については、EU離脱問題ばかりがクローズアップされていますが、サンダースMPC委員が、英国のEU離脱を巡る不確実性が引き続き高いというシナリオのもとでは、BOEは結局利下げに追い込まれるとの見解を示しました。「合意なき離脱」を条件にBOEの利下げに言及するメンバーはいましたが、BOEの主要メンバーが「合意なき離脱」の不確実性の段階で利下げに言及するのは初めてのことで、ポンドドルは一時1.2330ドル付近から1.2270ドル付近まで急落する場面がありました。やや買い戻しの動きになってはいるものの、10/2には保守党大会にてジョンソン英首相が議会証言を行う予定であり、上値の重さが意識されそうです。

FRBの今後の金利については、世界経済の脆弱性と米国の貿易戦争により、既に2回の「予防的利下げ」を行いましたが、9月の会合では、ドット・プロット(FOMCメンバーの金利予想)は、FOMCメンバーの将来の金融政策に関する意見が割れていることが示されました。10月の会合でも「予防的利下げ」は行われそうですが、10月の再利下げ後には、年内は現状維持の方針を維持するのではないでしょうか。また、FRBは10月の会合後には、資金調達圧力や準備金不足に対応するためにバランスシートを再び拡大させ始める可能性が高そうです。

目先はトランプ大統領より、ジョンソン英首相の議会証言がネガティブ要因

米中通商協議への進展期待により、ドル円は108.20円付近まで上昇したことから、ドル円107.40円のロングは108.10円台にて利食い、手仕舞です。ここからは、ドルよりは、保守党大会でのジョンソン英首相の議会証言に注目が集まりそうなため、ポンドドルの売り場探しに徹したいと思います。前週金曜の急落前の水準が戻り目途として意識されそうなため、1.2330ドル付近まで引き付けての戻り売り戦略とします。利食いは、直近安値を更新することを想定し、1.2220ドル付近、損切りは、1.2380ドル上抜けに設定します。

海外時間からの流れ

トランプ大統領の弾劾問題ですが、国務省のボルカー・ウクライナ担当特別代表が27日辞任したと、複数の米メディアが報じました。ボルカー氏は、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけたとされる疑惑に関与したとして名前が挙がっていたため、続報次第では、再度ドル売りの材料として意識されてくるかもしれません。

今日の予定

本日は、独・8月小売売上高、トルコ・8月貿易収支、独・雇用統計、英・第2四半期GDP(確報値)、ユーロ圏・8月失業率、独・9月消費者物価指数(速報値)、米・9月シカゴ購買部協会景気指数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。