前日については、米財務省広報官がドル売り材料になっていた「米国市場に上場している中国企業の上場廃止を米政権が検討している」との報道を否定し、ナバロ米大統領補佐官も「報道の内容の半分以上がフェイクニュース(虚偽)」と発言したことから、ドル売り材料が一つ解消されたとの見解から、ドルが買い戻され、ドル円は一時108.176円まで上昇し、本日の東京時間では、昨日の高値を更新しています。
中国高官から、10月10日からの米中閣僚級協議と具体的な日時の指定がったあったことから、進展期待が強まったことも、ドル円の上昇をサポートしたものと思われます。米・9月シカゴ購買部協会景気指数が市場予想50.2に対して結果が47.1になったことから、107.90円付近までドル売りとなる場面もありましたが、それ以上に米中通商協議への進展期待が上回り、再び108円台へ回帰したものと思われます。
ユーロについては、独・9月消費者物価指数(速報値)にて、前月比こそ市場予想通りの±0.0%でしたが、前年比が+1.3%予想が+1.2%となり、ドイツのリセッション懸念を中心としたユーロ圏の経済悪化が数字としてはっきりと出てきたことで、ユーロドルについてはサポートとして機能していた1.09ドルのラインを割り込んでいます。ユーロを買い戻す材料が希薄であること、さらには節目のポイントを下抜けてしまったことで、ユーロの上値は引き続き重い展開が想定されます。
今後の見通し
英国の保守党大会が開催されており、最終日の首相演説に注目が集まっていましたが、「英政府はEU離脱を巡る新たな提案が完成。今週3日にもEUに提出される可能性がある」との一部報道が伝わると、ポンドは1.2280ドル付近から1.2310ドル付近までショートカバーが入りました。詳細こそ不明ですが、バックストップ代替案になるものが想定されており、アイルランド国境での農産品、食料品に検査なしの移動を可能にする全アイルランド経済圏を創設するのではないかとも考えられています。
ジョンソン英首相が、最終的離脱プランを24時間以内に提示するとの報道があり、内容次第ではポンドの買い戻しが強まりそうですが、内容がはっきりとしていないので打開策となる案であるかどうかが不透明であること、また、ロンドン市長時代の米女性実業家との補助金を巡る疑惑が報じられており、離脱プラン以外でもポンド売りとなる材料が潜在的に残っている点は、十分把握しておく必要がありそうです。
英国については、EU離脱問題ばかりがクローズアップされていますが、サンダースMPC委員が、英国のEU離脱を巡る不確実性が引き続き高いというシナリオのもとでは、BOE結局利下げに追い込まれるとの見解を示しました。「合意なき離脱」を条件にBOEの利下げに言及するメンバーはいましたが、BOEの主要メンバーが「合意なき離脱」の不確実性の段階で利下げに言及するのは初めてのことで、ポンドドルは一時1.2330ドル付近から1.2270ドル付近まで急落する場面がありました。やや買い戻しの動きになってはいるものの、10/2には保守党大会にてジョンソン英首相が議会証言を行う予定であり、上値の重さが意識されそうです。
FRBの今後の金利については、世界経済の脆弱性と米国の貿易戦争により、既に2回の「予防的利下げ」を行いましたが、9月の会合では、ドット・プロット(FOMCメンバーの金利予想)は、FOMCメンバーの将来の金融政策に関する意見が割れていることが示されました。10月の会合でも「予防的利下げ」は行われそうですが、10月の再利下げ後には、年内は現状維持の方針を維持するのではないでしょうか。また、FRBは10月の会合後には、資金調達圧力や準備金不足に対応するためにバランスシートを再び拡大させ始める可能性が高そうです。
ジョンソン英首相最終的な離脱プランが気になるが、基調はあくまでポンド売り
1.2330ドルで目標値でのショートメイクには成功していますが、ジョンソン英首相が提示する最終的な離脱プラン次第ではポンドの買い戻しの可能性が出てきています。ただ、テクニカル的には下落基調が強まることを示唆しており、ファンダメンタルズ的にも先行き不透明感は拭えない状況にあることから、ショート継続とします。利食いは、直近安値を更新することを想定し、1.2220ドル付近、損切りは、1.2380ドル上抜けに設定します。
海外時間からの流れ
保守党大会最終日ばかりがフォーカスされていた英国ですが、ここにきてジョンソン英首相が最終的な離脱プランを提示する準備が整っていると報道が出てきたことから、状況が一変しています。一部では24時間以内に具体的案を公表すると報じられているものの、10月2日の党首演説後の公表になるとの見方もあり、具体的な公表日時は確定していない状況です。
今日の予定
本日は、豪中銀(RBA)政策金利、英・9月製造業PMI、加・7月GDP、米・9月ISM製造業景況指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、エバンス・シカゴ連銀総裁、ロウ・豪中銀(RBA)総裁、クラリダ・FRB副議長、ボウマン・FRB理事の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。