1日に発表された米・9月ISM製造業景況指数の悪化が未だに尾を引いており、ドル円は107円前半まで下落し、本日の東京時間では一時107円を割り込む水準までドル売りが強まっています。昨日発表された米・9月ADP民間雇用者数が市場予想14.0万人増が13.5万人増と若干悪化したこともドル円の下落要因ではありますが、それ以上に、景況感の悪化が世界景気の減速を助長するのではないかとの思惑がドル売りを加速させています。

今週末には、米雇用統計が控えていますが、米・9月ISM製造業「雇用」指数が悪化し、米・9月ADP民間雇用者数も悪化していることから、非農業部門雇用者数も悪化するのではないかとの思惑により、急速にドル売りを織り込んでいるのかもしれません。米・9月ISM製造業景況指数の悪化により、米雇用統計への影響が懸念されていましたが、既に他の雇用関連の指標が悪化した数字をはじき出しており、週末の雇用統計では、ある程度悪化した数字が出てくるものと推測されるため、どちらかというとポジティブサプライズの場合にマーケットは大きく動くのではないでしょうか。

注目されていた英国の保守党大会でのジョンソン英首相の演説では、「英国は何があろうとも10月31日にEUを離脱する」と強硬姿勢を崩すことなく、離脱最終案についても、「本日、EUに建設的で合理的な提案をした」「提案は両者にとって妥協点を見い出したもの」と表現しています。独政府報道官が「EU委員会が英首相の提案を審査する」「合意のためにできることはやるが、あらゆる状況も準備」、仏政府報道官が「現在の合意案は有効だが、仏は実質的な代替案を待っている」などと消極的ながらもポジティブに捉える向きがいる一方、「英が望むバックストップの期限設定は実現不可能」との見解を示す向きもおり、先行き不透明感は依然として根強いと考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ジョンソン英首相が提案した最終案は、現在の離脱協定案では合意が成立した場合、2020年末まで激変緩和のための「移行期間」を設けることができるというものになります。また、離脱後も新通商協定などの交渉がまとまらなければ、「移行期間」を2022年まで延長できるとされています。しかし、今回の新提案では2020年末の「移行期間」の終了時点で関税同盟から離脱すると明記しており、農産品や工業製品などについては、当面は北アイルランドだけEUルールに従い、「移行期間」の終了時点で北アイルランドの自治政府や地方議会がEUルールに従うかを決めるというものになっています。この提案をEU側が承認するかは不透明であり、頑なに強硬姿勢をとっていますが、ジョンソン英首相はEUとの協定案に関して10月19日までにEU、および、英議会と合意できなければEUに離脱延期の申請を行わなければならないことになっているため、最終的にはEU離脱は来年1月まで延期されるのではないでしょうか。

また、WTO(世界貿易機関)は、EUによるエアバスへの補助金の対抗措置として、米国がEUに年間最大75億ドル相当の報復関税を課すことを承認しましあ。米国は10月18日からEUから輸入している航空部品、チーズ、ワインなど75億ドル分に対する報復関税を課すとしています。一方、EUはすぐに報復関税をかけるとしています。EUも米ボーイングに対する米国の補助金が不当だとしてWTOに提訴しており、2019年3月に報復関税が認められており、EUも米工業品や農産品など200億ドル相当の製品に関税を課す準備を進めている模様。今回のWTOの承認は予想されたことですが、米国は5月17日に、米通商拡大法232条に基づく自動車輸入に対する関税引き上げに関する判断の180日間の先送りを決めているため、この期限が11月13日に迫っており、EUとの摩擦拡大は、自動車関税引き上げにも悪影響を与える可能性がありそうです。

離脱延期との報道まではポンド売り戦略継続

保守党大会での党首演説では、これまで通りの文言を繰り返し、離脱最終案についても事前報道以上のものがなかったことから、一時ポンドドルは1.2280ドル付近から1.2230ドル付近まで下落しましたが、目先材料出尽くしということもあり、その後はポンドの買い戻しが強まっています。戻り待ちのポンドドルは1.2320ドルでショートメイク、利食いは、再度1.2220ドル付近、損切りは、1.2380ドル上抜けに設定します。

海外時間からの流れ

海外時間では円買いの動きが強まりましたが、次第に円買いの動きからドル売りの動きへと移行しており、エマージング通貨については安値圏から反発しているものの、トルコリラについては、エルドアン・トルコ大統領が、シリアの安全地帯設置に関しトルコは独自路線を進むと発言し、トルコと米国の関係が再び不透明感を増しつつあることが、上値の重さに影響しています。

今日の予定

本日は、トルコ・9月消費者物価指数、英・9月サービス業PMI、米・新規失業保険申請件数、米・9月ISM非製造業景況指数、米・8月耐久財受注(確報値)などの経済指標が予定されています。要人発言としては、デギンドス・ECB副総裁、レーン・フィンランド中銀総裁、クォールズ・FRB副議長、テンレイロ・MPC委員、メスター・クリープランド連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。