1日に発表された米・9月ISM製造業景況指数、2日発表された米・9月ADP民間雇用者数と悪化した内容が相次いでおり、昨日発表された米・9月ISM非製造業景況指数が好調であれば、一旦ドル売りに歯止めがかかるか思われましたが、結果は市場予想55.0に対して52.6、ドル円は下落幅を拡大するかたちで、一時106.487円を示現しました。ただ、本日に雇用統計を控えていることでポジション調整が急速に進んだこと、さらには、次回のFOMC会合で利下げが濃厚であるとの考えから、NYダウが330ドル安の水準からプラス圏内まで買い戻しが入ったことが好感され、ドル円も106円後半まで連れ高となりました。因みに、今月29-30日に予定されているFOMCでの0.25%の利下げ確率は、FED Watchによると90%を超える水準になっています。

ただ、今月の利下げはほぼ織り込まれていた内容で、FF金利先物市場の織り込み度は年内1回の利下げという内容でした。ただ、ISM関連の経済指標後は、利下げ織り込み度は1.6回まで後退しています。本日の雇用統計が悪い内容であれば、年内の利下げ織り込みが2回になる可能性があり、昨日同様に株価は堅調に推移する可能性がありますが、株価上昇のプラス材料以上にドル売りが強まる可能性があります。大幅に悪化するようだと、一時的にドル円は106円の水準を割り込むかもしれませんが、逆にポジティブサプライズがあれば、108円台の回復も十分見込めそうです。

トランプ大統領が再選を視野に権限を乱用し、ウクライナに圧力を掛けたとの疑惑から、米議会ではトランプ大統領弾劾に向けた正式調査が進められています。ただ、ホワイトハウスが公表した電話記録や内部告発書からは、トランプ大統領が7月に行ったウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でバイデン氏親子の調査を依頼したことが明らかになっています。トランプ大統領は記者団に対し、ウクライナはバイデン氏親子の調査に着手すべきとした上で、「中国もバイデン氏親子に対する調査を始めるべきだ。中国で起きたことはウクライナで起きたことと同様悪質だ」との見解を示しており、このまま大統領弾劾問題が長期化するようであれば、長期的にドルの上値を抑える形になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ジョンソン英首相が、最終プランとしてEU離脱案を提示しましたが、一部の保守党のEU懐疑派議員は「許容できる内容」との見方を示したため、一時ポンド買いが強まる場面がありました。バークレイ・EU離脱担当相も、ジョンソン英首相が明らかにした離脱協定案の最終案についてEU側と詰めの協議をする意向を示し、「今度はEUが応え、創造的で柔軟になれることを示す番である」と述べています。一部では、賛成意見がでている一方で、厳しい意見が出ているのも事実です。やはり、現実的な案としては、英国議会で賛成多数で可決されたEUへ離脱延期申請を不本意であったも、同首相が行うシナリオになるのではないでしょうか。

色々な問題が錯綜するなかで、本日は米雇用統計が控えています。既に景況感指数に加えて、ADP雇用者数が悪化した内容になっていたことから、ある程度悪い数字を織り込んでいると考えられますが、それでも、悪い内容になれば、ファーストアクションはドル売りで反応すると思われます。また、ADP雇用者数が13.5万人増、本日の非農業部門雇用者数予想が14.5万人増であり、同等の内容であれば、値動きも限定的になりそうですが、10.0万人を下回るようなネガティブサプライズがあるようであれば、米国の景気減速懸念は当然ながら、再び米国のリセッションが意識され、ドル円は106円割れを目指しそうです。ただ、悪い内容を既に織り込んでいることで、大きく動くとすれば、ポジティブサプライズであることも十分想定し、東京時間、欧州時間は、本日のメインイベント待ちの展開になりそうです。

ポジションスクエアであれば、本日は雇用統計時のジョビングに徹した方がよさそうだ

ジョンソン英首相案を、一部の保守党のEU懐疑派議員が「許容できる内容」との見解を示したため、ポンドドルは1.24ドルを一時回復する動きとなり、1.2320ドルのショートポジションは、1.2380ドルで損切り、手仕舞です。本日は、米雇用統計が控えていることもあり、基本的には発表直後の動きに付いていくことになりそうなため、ポジションがスクエアなこともあり、本日は中期戦略を立てず、短期売買に徹する方が効果的であると考えています。中期戦略については、本日の雇用統計の内容を鑑み、来週以降戦略を練ることにします。

海外時間からの流れ

本日の東京時間に、ナバロ米大統領補佐官(通商担当)が「中国との小規模な合意はないだろう」「中国と重要な合意を得るか合意なしかだろう」と発言したことがマーケット動向に動揺を与えています。米中通商協議に関しては、あくまで「暫定合意」を目指すものと考えられていたため、大規模合意であればさらに歓迎される内容ではありますが、消極的合意である「暫定合意」に至らないことも可能性としては考えられるため、この発言の真意は来週以降意識されてきそうです。

今日の予定

本日は、米・雇用統計、米・8月貿易収支、米・8月貿易収支、米・9月Ivey購買部協会指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ローゼングレン・ボストン連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定され、パウエル・FRB議長の公聴会挨拶が行われる予定です。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。