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ひとはブランドを愛し、商標にお金を払っている
あなたは、スターバックスとセブンイレブンとマクドナルドのコーヒーを飲み比べたことがあるだろうか。目隠しをして、それぞれの味を飲み分けることができるだろうか。それぞれの価格は言うまでもないが、私たちはコーヒーという飲み物を選んでいるわけではなく、それぞれのブランドを選んでいることは間違いない。
少なくとも、スターバックスに求めているのは単なるコーヒーの味わい以上のものであることは言うまでもないのだ。
これこそ、商標権の本質だ。商標権とは、ロゴやマークなどのデザインを保護するための権利で、基本的な有効期限は10年間。ただし、更新料を支払えば、何度でも更新することができる。そのロゴやマークを見れば、「あのブランドだ」「あの店だ」「あの会社だ」と、一目でわかるようなデザインが商標登録の対象となるため、他人の使用を排除することも目的のひとつになる。
以前、ドトールコーヒー系列のエクセルシオールカフェが、スターバックスに似たロゴを使ったときも、すぐさまスターバックスは商標権侵害として大いに問題とし、直ちに必要な措置を取った。機会があれば、スターバックスとタリーズのコーヒーを飲み比べていただきたい。スターバックスを選ぶ大概の人は、スターバックスのコーヒーが好きなことはもちろんだが、それ以上にスターバックスという企業の精神や取り組みを敬愛しているからだ。
ところで、東京の恵比寿等に猿田彦珈琲という小さなコーヒー専門店がある。スターバックスよりも高いくらいの値段だが、いつも行列が絶えない店だ。
中小企業が大企業に勝つことは決して不可能ではない。そしてその鍵のひとつに知的財産権、とりわけ商標という存在があることを覚えておいていただきたいのだ。
色々ないから「色だけの商標」
商品やサービスを他人の商品やサービスと区別する目的で使用される標識のことを商標という。
トレードマークといえば商品の商標のことで、サービスマークといえば文字通りサービスの商標のことだ。
視覚、つまり目で見てわかる文字、図形、記号等平面的なことや、商品、看板など特徴的な立体形状のものを商標として登録することができるのは直感的に理解できるが、これらだけではなく、「色の商標」「位置の商標」が認められていることをご存じだろうか。
現在登録されているのは、トンボ鉛筆の消しゴムのケースに使われている「青・白・黒」の組み合わせと、セブンイレブンの看板や商品に使われている「白・オレンジ・緑・赤」の組み合わせだ。一般的には、色だけの商標登録は極めて困難であり、色の組み合わせであっても難しい。このふたつの事例は特殊な例である。
特許庁の見解では、どちらも30年以上に渡って使い続けられている上、市場でのシェアも高く、積極的な宣伝を続けている点等を重視したということだが、一般消費者の認知度の高さも商標登録の決め手になった。
なお、特許庁によると、この「色の商標」も現在数百以上の出願がなされているといい、企業の登録への関心も高いという。けっして他山の石ではないことだけは申し上げておきたい。
色を認めるなら音も認めろ、「おーいお茶」の音商標
他人の商品やサービスと区別するための目印が商標なら、音楽的要素のみで他人の商品やサービスと区別する「音商標」があってもいい。と、考えるひとがいても不思議ではない。
そして、そのとおり、メロディーやハーモニー、リズムまたはテンポ、音色など音楽的要素のみからなる商標の存在をご存じだろうか。それが「音商標」であるかどうかはご存じなくても、きっとこれらを聞いたことのないひとはいないだろう。
「おーいお茶」
「エ・バ・ラ、焼き肉のたれ」
「ファイトー、イッパーツ」
「おーいお茶」では、「本商標は、『おーいお茶』という人の音声が聞こえる構成となっており、全体で4秒の長さである」と規定されている。
「ファイトー、イッパーツ」については、「本商標は、『ファイトー』と聞こえた後に、『イッパーツ』と聞こえる構成となっており、全体で約5秒間の長さである」と規定されている。
「ブルーレットおくだけ」や、あの「正露丸」のラッパのメロディーも「音商標」として登録されている。
50年前から使われてきた「エ・バ・ラ、焼肉のたれ」の商標登録が実現されたときの社内の喜びの声が聞こえてきそうな、そんなエピソードも「音商標」ならではのものだろう。