昨日の海外市場では、EU離脱期限が迫るなか、英とEUとの交渉が難航し非難合戦となったほか、閣僚級協議を明日以降に控え、米中の対立が激化したことから、欧米株価は下落、金利は低下しました。ポンドドルは9月4日以来となる1.22ドル割れとなった一方で、ユーロドルは比較的底堅く推移、ドル円は107円を挟んでの取引に終始しました。

ポンドドルは欧州序盤から弱含みで推移。英保守党幹部からの「EUが妥協しない場合は、英国は合意なき離脱に向う」との発言に始まり、ジョンソン英首相とメルケル独首相との電話会談において、北アイルランド問題で溝が埋まらなかったことが明らかになるや、妥協を求め双方から非難が続出したことから、離脱合意は困難との見方が強まりポンドは全面安となりました。

一方、ユーロドルは独・8月鉱工業生産が前月比、前年比ともに予想を上振れたことから序盤こそ堅調に推移し1.10ドルに迫りましたが、ポンドの下落につれ反落するとNY時間には1.0940ドル台まで値を崩しました。

ドル円は東京午後に前日高値を再び窺ったものの、1.59%付近まで上昇していた米10年債利回りが低下に転じると反落。前日に発表された中国企業のブラックリスト入りに関し中国外務省が「報復については乞うご期待」とコメント、その後「中国代表団、米国滞在を短縮する計画」、「ホワイトハウス、政府年金基金による中国株購入の制限を検討」との報道が続いたことから107円を割り込み、106.81円の安値を付けました。もっともその後はショートカバーが優勢となり、NY午後には107.30円近辺まで値を戻しました。

3時半に始まった講演でパウエルFRB議長は、短期金利の乱高下を防ぐためFRBの保有資産拡大を表明、その後これは量的緩和の再開とは異なると述べるとマーケットは一時的に乱高下しましたが、すぐに発言前の水準に値を戻しました。

直後には「米政府、ウイグル人弾圧に関連した中国当局者へのビザ発行停止へ」と報じられ、米中対立激化の懸念から米株が急反落、米10年債利回りは再び1.51%付近まで低下しましたが、ドル売りは限定的でドル円は107.09円、ユーロドルは1.0957ドル、ポンドドルは1.2220ドル付近で引けを迎えました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国対EU、米国対中国の対立が表面化した一日となりましたが、為替市場はこれらのリスクに対する備えがある程度できていたせいか、大きな動きにはつながりませんでしたが、離脱期限延長への期待から買戻しが進んでいたポンドは比較的大きな下落となりました。最終的な着地点が明らかになるまで今後も報道により、リスクに備えてポジションを構築しては取り崩すという動きが続きそうです。

想定よりも押し目は浅かったがショート保持

昨日は107.40円でドル円のショートポジションを構築、レンジ下限への回帰を期待しましたが、下げは106.80円付近に止まり利食うまでには至りませんでした。本日も引き続きストップを108円上抜けとし、ショートポジションを保持、106円半ばでの利食いを目指します。

海外時間からの流れ

トルコのシリアへの軍事作戦計画に対し強い警告を発したトランプ大統領はこの日は一転、「多くの人々はトルコがアメリカにとって大きな取引パートナーであることを都合よく忘れている。また、トルコはNATOの重要なメンバーであることを忘れてはいけない。」などとツイート。トルコ円は一時18.45円付近まで急騰する局面がありましたが買いは続かず、前日とほぼ変わらぬ水準での引けとなりました。 早朝にはトルコ当局者から「トルコ軍がシリア国境を間もなく越える予定」との発表があり18.33円付近まで弱含みました。

今日の予定

本日は、メキシコ・9月消費者物価指数、米・8月JOLT労働調査のほか、パウエル・FRB議長の講演が予定されています。未明には前回FOMCの議事録が公表される予定です。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。