(本記事は、加谷珪一氏の著書『“投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』の中から一部を抜粋・編集しています)
※本書に記載した内容は、原則として2019年6月現在のものです。 ※本書に示した意見によって読者に生じた損失について、著者および発行者は責任を負いません。
不労所得は本当に存在するのか
具体的な不労所得の手法を解説する前に、そもそも「不労所得とは何か?」ということについて、考えたいと思います。
読者のみなさんは、1億円というお金があれば何をするでしょうか。
高級車を買って、タワーマンションを買って、などと考えてしまった人は、不労所得を得ることに対する心の準備が、まだできていません。不労所得という視点で1億円の使い道について考える時、やるべきことはただ1つ、1億円を安全運用することです。
1億円のお金があれば、安全な債券などの運用でも、年間300万円ほどの運用益を出せます。このお金は毎年稼げるものであり、しかも元本の1億円は決してなくなりません。
もちろん現実には、お金の管理に結構な手間がかかるので、もちろん現実には何もしなくてもよいというわけにはいきませんが、ここで得られる300万円は労働して得たお金ではありませんから、一般的な稼ぎとは種類がまったく異なるものといってよいでしょう。
不労所得というのは、労働しなくても毎年、一定の金額を稼ぎ出せる仕組みのことを指します。この例ではお金がお金を稼ぎ出しており、これがもっとも効率のよい不労所得です。お金そのものがお金を生み出すという仕組みこそが、まさに究極の不労所得です。
「夢の印税生活」の内実
一方、「夢の印税生活」という言葉があるように、本の印税や特許など、著作権や知的財産権による収入も不労所得と見なされることがあります。
筆者は幸いにも、20年以上にわたる株式投資によって、億単位の資産形成に成功しました。究極の不労所得生活にシフトできそうですが、今のところは経済評論家としての仕事を続けていますので、印税をもらう著者でもあります。そんな立場から正直にいうと、印税というのはあまり儲かりません。よほどのベストセラー作家でもない限り、何もせず印税だけで生活するというのは困難と考えてよいでしょう。
書籍の印税率は、一般的に販売価格の8~10%程度です。定価1500円の本が1冊売れれば、印税率10%として著者には150円の印税が入ります。もしその本が1万部売れた場合には、印税の合計は150万円になります。
以前と比べると、今の時代は書籍が売れなくなっており、10万部でも大ベストセラーなどと言われます。10万部になると印税は1500万円になりますが、それでも高収入のサラリーマンの年収程度ですし、あくまでもこの数字は印税の総額ですから、毎年ずっともらえるものではありません。
お金持ち本におけるバイブルと言われる、ロバート・キヨサキさんの『金持ち父さん 貧乏父さん』は、全世界で3000万部を販売し、今でも売れ続けています。キヨサキさんのレベルになれば、毎年何もしなくてもお金が入ってくるという状況ですから、夢の印税生活といってよいかもしれません。
こうしたごく一握りのベストセラー作家を除くと、一般的な作家の場合には、多大な労力をかけて本を書き、仮に売れたとしても1500万円程度の収入ですから、残念ながら不労所得とはいえないでしょう。
しかしながら、作家という職業は、時間を拘束され、その分だけ賃金をもらうという一般的な仕事と比較すると自由度が高く、仕事をしているという感覚が薄いのは事実です。文章を書くことが嫌いな人が作家になることはありませんし、そもそも誰にも雇われていないわけですから、直接的な仕事の苦痛が少ないのは当然だと思います。
特許も同様で、特許のみで悠々自適(ゆうゆうじてき)の生活ができる人はごく一部しかいませんが、特許の取得は、好きなことをした結果という人が多いですから、労働で稼ぐという感覚とは少し異なっています。
印税や特許による稼ぎは、お金がお金を稼ぐことに比べると、労働による所得に近いものの、ある程度までなら不労所得に分類することが可能です。ここで重要となってくるのは「やらされた感」がないという部分でしょう。
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