(本記事は、加谷珪一氏の著書『“投資"に踏み出せない人のための「不労所得」入門』の中から一部を抜粋・編集しています)

※本書に記載した内容は、原則として2019年6月現在のものです。
※本書に示した意見によって読者に生じた損失について、著者および発行者は責任を負いません。

アイデア
(画像=PIXTA)

アイデアさえあれば仕入れコストはゼロ円に

フリマアプリでは、こんなモノが売れるの? というモノも売られています。すでにメディアなどでも取り上げられているので多くの人が認識しつつありますが、トイレットペーパーの芯はフリマの定番商品の1つとなっています。

使用済みのトイレットペーパーの芯は、学校の工作用の素材として重宝されますが、家では欲しい時にはすでに捨ててしまったりしていて、頃合いのよい量を確保できないことがほとんどです。

そのため、芯を何十本かセットにした商品に、数百円から数千円の価格が付きます。ある意味で仕入れはゼロ円ですから、商品としては非常によいアイデアです。こうしたアイデア商品をうまく出品できると、仕入れコストゼロでも結構な金額を稼げる可能性があるわけです。

あまりよい例ではないのですが、以前メルカリに読書感想文が出品されたことが話題になりました。

これは400字詰めの原稿用紙に手書きで書かれた読書感想文なのですが、もちろん有名な書き手が書いた文章ではありません。一般人が書いた読書感想文をなぜ出品するのかというと、購入した感想文をそのまま宿題として提出する人が存在しているからです。出品された感想文の中には、あえて下手な文章にすることで、大人が書いたことが分からないよう工夫されているものもあったようです。

最近は子供の宿題を有償で請け負う、いわゆる宿題代行業者が増えていますが、それのフリマ版と考えればよいでしょう。学校の宿題を代行業者にやらせ、空いた時間を受験勉強に充てるという考え方に筆者は賛同しませんし、そうした手助けをするようなビジネスもあまりやるべきではないでしょう。

ただ、このケースは、世の中には隠れたニーズがたくさん存在していることを如実(にょじつ)に示しています。どのような商品が出品されているのかをチェックすることが、いかに大事なのか、お分かりいただけると思います。

しかしながら、フリマというのは「市場」ですから、ある商品が売れると分かれば、多くの競合が参入し、その結果、価格はあっという間に適正水準まで下がってしまいます。先ほど紹介したトイレットペーパーの芯のほかにも、組み立て済みのプラモデルを売るなど、たくさんのアイデア商品がありましたが、多くの人が参入したことで、以前のような価格は維持できなくなっています。

高い値段で売るためには、他人が出品していない独自のアイデアを編み出し、先に市場に参入して先行者利益を得ることが重要です。これはフリマに限らず、ビジネスの基本です。こうした努力を積み重ねる必要がある段階にいたると、フリマへの出品も不労所得とはいえなくなってくるかもしれません。

もう少し軽く考えるのであれば、日常的な買い物にひと工夫するとよいでしょう。中古品の売買に慣れた人は、自分用の買い物にも仕入れの視点が入るようになります。フリマに出したらいくらで売れるのかを最初に考えて商品を購入するわけです。

特にブランド物にその傾向が顕著ですが、お店で買う値段が同じモノでも、中古品として売る場合の値段には大きな差がつくケースが少なくありません。同じ金額を出すのであれば、売れやすい商品を買っておき、使用後に転売した方が圧倒的に得であることは説明するまでもないでしょう。

最近はネットの発達で、商品を買う前にネットで価格相場を調べることはもはや常識となりました。しかし、フリマで成功するためにはそれだけでは不十分です。新品の値段の相場を知ると同時に、中古品がいくらで売れるのかについても事前に調べたうえで商品を買わなければ、フリマ長者にはなれません。

今後はシェアリング・エコノミーの発達で、あらゆるモノやサービスが社会で共有されるようになります。家を買うにも、いくらで転売できるのか、いくらで賃貸できるのかが重要となっています。日常的にこうした思考ができるようになれば、それは1つの不労所得の手法を得たと認識してもよいかもしれません。

“投資”に踏み出せない人のための「不労所得」入門
加谷珪一(かや・けいいち)
経済評論家。宮城県仙台市生まれ。 1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、「現代ビジネス」や「ニューズウィーク」など数多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオなどでコメンテーターを務める。億単位の資産を持つ個人投資家でもある。
お金持ちの実像を解き明かした著書『お金持ちの教科書』(CCC メディアハウス)はベストセラーとなり、「教科書」と名の付く書籍ブームの火付け役となったほか、法科大学院の入試問題に採用されるなど反響を呼んだ。
主な著書に『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SB クリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCC メディアハウス)、『戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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