前日の悲観一色から、昨日の海外市場では一転して楽観的報道が先行しました。

まずブレグジット関連では、英タイムズ紙が「EUは北アイルランドのバックストップに期限を設定する大きな譲歩案を用意している」と報じると、ポンドドルは一時1.2290ドル付近まで急騰しました。しかしすぐに売り戻されると、その後EU当局者が「大胆な新提案がEUから出ることはない」と否定したこともあり、結局上げ幅を全て失う荒い動きとなりました。

また米中問題では、本日から始まる米中閣僚級協議を前に、「中国はブラックリスト追加にもかかわらず、米国との部分的な貿易合意に対しオープン。」「中国は米国の農産物100億ドル相当の追加購入を提案へ」など中国側の前向きな姿勢が報じられ、これを好感し欧米株価は反発し、長期金利も上昇したことから円が全面安となり、ドル円は月曜高値を上抜け107.60円台まで上昇しました。

もっともNY午後には「米商務相による中国企業のブラックリスト追加により米国との友好が損なわれたことで、今週の交渉進展への期待は低下した。」との中国当局者のコメントに米株が反落し、NY引け後には中国系紙が「米中次官級貿易協議では進展がなかった」と報じると円の買戻しが強まり、ドル円は一時107円手前まで反落しました。

その後は五十日(ごとうび)ということもあり仲値に向け反転上昇すると、仲値後にはNYT紙の「トランプ米政権は一部米企業にファーウェイへの供給を許可する。」との報道に107.70円台まで上値を伸ばしました。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日からいよいよ米中閣僚級協議が始まります。どのような着地となるか予断を許さない状況ですが、米政権が繰り返し述べている全面合意から部分合意へと譲歩するならば円売りが強まることとなり、ドル円はダブルトップとなった108円半ばを窺う展開に、部分合意を受け入れなかった場合には長期化への懸念が強まり、緩やかに円高方向に向かうと予想します。

悲観的報道、楽観的報道にもフォロースルーなし

昨日は前日から一転して楽観的報道が先行し株価、長期金利が上昇したことから、ドル円は終日じり高に推移し、月曜高値を上抜け107.60円台まで上値を伸ばしました。早朝には107円手前まで反落したものの、仲値買いとファーウェイ報道で107.70円台へと再び上昇、Hiher Low, Higher Highの動きが継続しており、形勢は必ずしもよろしくありませんが、コアレンジ上限107.50から上での滞空時間は短く、上値を追うのには材料不足ということが見て取れます。よって、107.40円でのドル円ショートは保持、ストップ108円上抜け、106円半ばでの利食いの戦略に変更なしとします。

海外時間からの流れ

トルコ軍は発表通りシリア北東部のクルド人勢力排除のための軍事作戦を開始しました。これに対し欧米からは非難の声が上がっており、トランプ大統領は「米国はトルコのシリア侵攻を了承していない。」と述べています。政治的、経済的にトルコの負担が増すことは確実で、トルコ円の上値は限定的になりそうです。18円を割り込むような動きとなれば下げ足が加速する可能性もあり注意が必要です。

今日の予定

欧州時間には、独・8月経常収支と貿易収支、英・8月鉱工業生産と貿易収支の発表のほか、ECB(欧州中銀)議事要旨の公表が予定されています。NY時間には米・9月消費者物価指数、新規失業保険申請件数の発表があります。また、既述の通り米中閣僚級通商協議が始まり、欧州ではEU財務相理事会が開催されます。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。