シンガポールの19年8月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比9.9%減(前月:同11.3%減)とマイナス幅が縮小した。輸出の伸び率は昨年後半から低調に推移していた主力の電子製品が年末頃に減少幅を拡大、また石油化学製品も低迷するなど全体的な輸出不振に陥っている。なお、総輸出額は前年同月比11.5%減(前月:同5.9%減)、総輸入額は同7.5%減(前月:同6.4%減)となり、それぞれ低迷した。結果として、貿易収支が30.2億ドルの黒字となり、前月から5.4億ドル黒字が増加した(図表11)。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同26.7%減(前月:同24.1%減)と、9ヵ月連続のマイナスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同32.9%減)をはじめ、PC(同29.4%減)、PC部品(同16.4%減)、ダイオード・トランジスタ(同19.0%減)などが軒並み低迷した。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同19.3%減(前月:同17.5%減)と3ヵ月連続で減少した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品(同21.7%減)と医薬品(同24.5%減)がそれぞれ大きく減少した。
フィリピンの19年8月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比0.6%増と、前月の同3.5%増から低下した。輸出の伸び率は昨年主力の電子製品を中心とした緩やかな増加傾向で推移した後、12月から短期的に落ち込んだが、4月以降は再び電子製品を中心に小幅の増加傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比11.8%減(前月:同4.2%減)と大きく低下した。結果として、貿易収支は24.1億ドルの赤字となり、前月から9.8億ドル赤字が縮小した(図表13)。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同6.6%増(前月:同3.5%増)と上昇して5ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、家電製品(同37.7%減)が落ち込んだものの、電子データ処理機(同7.1%増)がプラスに転じたほか、主力の半導体デバイス(同4.1%増)が増加基調を維持した。その他9品目は総じて減少した品目が多かった。金(同93.5%増)とイグニッション・ワイヤーセット(同7.6%増)が増加した一方、製錬銅(同39.2%減)とその他製造品(同17.7%減)、化学(同16.1%減)、機械・輸送用機器(同10.8%減)、その他鉱産物(同8.3%減)、金属部品(同3.7%減)と生鮮バナナ(同1.3%減)が減少した。
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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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